End of Summer
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
Interval 〜04〜
18禁注意
 クラウド・ストライフ
 

 

 

  

 

 

 布地の上からでも、熱の感じられるその部分を『セフィロス』の大きな掌で押し包み、ビクンと身体を反らせた隙に、下を被う邪魔なものはすべて剥いでしまう。

「……クラ……ウド……!」

「……大丈夫。ちゃんと気持ちよくしてあげる」

 筋張った腰骨を甘噛みし、肉の薄い脚の付け根をぐいと押し開く。反射的に下肢を閉じようとするヴィンセント。それを許さず、わずかな隙間に身体を滑り込ませる。

 

「大人しくしてて、ヴィンセント……」

 俺はもう一度、そう言い聞かせた。

「やッ……ク、クラウド……やめッ……」

「……こんなところまで痕……ついてるね」

 内股の膝の辺り……やわらかな肉の部分にまで、痕が残っていた。もっともそれは薄い切り傷で、けして深いというわけではなかったが……

「可哀想に、ヴィンセント……痛かったでしょ?」

 チュ……と音をたてて、持ち上げた脚の内側を吸う。強く吸い上げたせいで、桃色の傷痕は鬱血の色で掻き消された。

「……んッ ……ッ」

 徐々に、脚の付け根の深いところに、舌を滑らせ、小さなものであっても、あのときの傷痕とおぼしきところに気付くと、ひとつずつ消して行くつもりで、唇を這わせた。

 

「あ…… はッ…… も、もう……やめ……」

 骨張った華奢な足が、焦れたようにシーツを蹴った。その媚態を見ているだけで下腹の熱がズクズクと疼く。まったくセフィロスの身体は興奮しやすい。慎み深いヴィンセントとは大違いだ。

 

「う……もう……セフィ……エロイなァ……」

 口の中でボソボソと文句を言ってやる。

 身体のせいにしても、結局ツライのは中身の俺であって……

 ……ヴィンセントの上気した頬に、キスをひとつ落とし、ふたたび彼の上に身を伏せた。もちろん、体重を掛けないよう、十分注意して。

 

「やッ……いや……だ…… ク、クラウド……」

「手、どけて、ヴィンセント。……このままだとツライだろ? 一回出しちゃったほうが楽だから」

「……いや……ッ」

 強情なヴィンセント。

 あまりにも羞恥心の強い恋人を持つと苦労も多い。もちろん、だからこその楽しみ方もあるわけだが。

 

「いいから、ほら」

 必死に身をよじって、空いた手で下肢を隠そうとするヴィンセントを押さえ付けた。セフィロスの腕力なら、それこそ片手で簡単に動きを封じることができてしまう。

「いつも言ってるじゃん……これはボディコミュニケーションだろ? ヴィンセントも楽しんで……」

 宥めるようにそうささやきかけ、放置された高ぶりを口腔で刺激してやる。一度吐き出させて、受け入れる肉体の緊張を融解させるために。

 

 

 

  

「……あッ……んああッ……!!」

 『セフィロス』の頭を押さえ、大きく仰け反るヴィンセント。

 コレをするのもされるのも嫌ではないが、ヴィンセントは必死に抗うのだ。もちろん、『セフィロス』に敵うわけはないし、もとの俺の身体であっても、彼の抵抗を封じるのはそれほど難しいことではなかった。

「あ……あッ……あッ……や、やめ……ッ」

 仰け反って逃げを打つヴィンセント。その細い身体を戒めるように、乱れた黒髪がからみつく。いつもの清廉として上品なヴィンセントもとても素敵だと思うが、こんなときの彼は、本当に眩暈がするほど色っぽい。

 抜けるような蒼白い肌がしっとりと熱を帯び、血の気のない頬に朱が差す。きつく寄せられた細い眉……潤んだ紅い瞳……

 凶暴な衝動を抑えつけるのに、十分に注意しなければならない。ついつい身体の欲求のまま乞い求め、体力のないヴィンセントを痛めつける結果なってしまうことがある。

 

「あ……やッ……クラ…… やめッ……」

 つま先がグググと丸まり、『セフィロス』の髪に差し込まれた指に力が入る。だが、無理やり引っ張ったり、殴ろうとしたり、そういう行動は取らないところがとてもヴィンセントらしいと思う。

「あッ……あッ……ああッ……」

 切羽詰まった悲鳴、弓のように撓る背が彼の限界を告げていた。

「んあッ……あああッ……!!」

 ビクビクと、打ち上げられた魚のような激しい胴震いをすると、緊張していた肉体が弛緩した。

 はぁはぁというせわしない吐息が痛々しい。

 

 ぐいと口唇をぬぐうと、力無く横たわるヴィンセントの顔を覗き込む。

 ゼィゼィと音を立て、激しく上下する胸元。いつもは色味の無い頬が紅く染まり、涙で濡れている。

「……大丈夫、ヴィンセント?」

 そう声を掛けると、双眸の焦点がゆっくりと定まってきた。

「……ヴィンセント?」

「……あ……ッ」

 掠れた声を上げると、ヴィンセントはさらに真っ赤に頬を染め、ぐしゃぐしゃに丸まったシーツをたぐり寄せた。

「なに? ……どうしたの?」

「……あ……い、いや……あ、あの……」

 夢中で忘れていたが、今の俺は『セフィロス』なのだ。

 ヴィンセントの瞳には、裸のセフィロスが映っている。行為に夢中になってしまうと、頭では理解していても、感覚がついていかないのだろう。

「……ヴィンセント、ほら、目閉じてなよ」

 恥ずかしいのか怯えているのか、ビクビクと逃げ腰になる彼の腕を引っ張る。倒れ込んできた華奢な肩を支え、震える瞼に接吻した。

「セ……ク、クラウド……」

「目、開けてるとダメなんでしょ?」

「……あ、ああ」

「何も見えない方が、よけいによく感じられるかもよ?」

 イタズラっぽくそういうと、ヴィンセントは眉をしかめ、困惑した面持ちで顔を背けた。