Fairy tales
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

そんなこんなで俺たちは、こっそりとシンデレラちゃんの屋敷を抜け出した。

 幸い、夜であったことと、彼女が秘密の抜け道を知っていたことで、人に見つかる危険は回避できたのだ。

 

「うっわ…… 大きなお屋敷」

 とヤズーがつぶやいた。

 本当だ。夜闇の中にうっそりと立っている。見渡せば、この辺りは貴族の屋敷がある地域らしく、街のざわめきは、ずっと向こうの方に見えるのだった。

 

 

 

 

 

 

「さ、さて……これからどうすべきか……」

 ヴィンセントが低くつぶやく。

 男六人、まさかシンデレラちゃんに厄介になるわけにはいかない。

「まず、ねぐらの確保だな。時代錯誤な世界のようだが、ラブホくらいあるんじゃねーのか?」

 と、無神経きわまりない返答は、いわずもがなセフィロスだ。

「もう、ほんっと、デリカシーないねェ、あなたは! さ、みんな、街のほうへ急ごう! ホテルもそうだけど、通貨が使えるのかとかそういったことも調べてみないと」

「あ、そ、そっか! そうだよな。でも、俺、財布ほとんどお金入ってないし……」

「大丈夫!セフィロスが持ってるよ」

 と、あっさり請け負うヤズー。

「はぁ? この野郎、俺にたかるつもりか?」

 剣呑な雰囲気で威嚇するセフィロス。ヤクザかっての!

「そ、そんなヤズー……一応、私も用意があるから……」

「非常時でしょ! こんなときこそ、居候軍団が頑張んないとね!」

「偉いヤズー、よく言った!」

 と、俺がほめると、ヴィンセントがじっと見つめてきた。睨んだわけではないのだ、あくまでも「見つめて」である。

「ヤズー、カダージュ、ロッズ……そして、セフィロスも。君たちは私たちの家族だろう? 居候などと言わないでくれ」

「あ、わかってる!わかっているから! もちろん、ちゃんとその辺は心得ているよ!」

 ヤズーが手振りまで加えてあわてて宥めにかかった。昨日のことが頭に残っているのだろう。

「おまえなァ、家族家族って…… どんな家族なんだ? たまたま、あの家に来ただけで……」

「セフィロス!!」

「セフィロス!」

「セフィロスッ!」

「アホセフィ!」

 誰がどの発言だかはわからない。別にかまわないだろう。同じ言葉なんだから。

 あ、最後のは俺だけど。

 

「セフィロス……君はやはり、今の環境が不快で……」

 ボソボソとつぶやくのは、もちろんヴィンセントだ。

「あー、違う、違う! なんでもない、なんでもない!」

「…………」

「一度も嫌だとは言っていないだろうッ!」

「…………」

「黙り込むなッ! ちっと暑いがそう悪くない環境だと思っているし、部屋も気に入っているし、おまえの作るメシも好みだ!」

「……あ、ありがとう」

 クスンと鼻を鳴らせたヴィンセントに、

「あー、この話は終いだ! グズグズしている時間はねーだろ! 行くぞ、ガキ共!」

 と、怒鳴ると、彼は先陣を切って歩き出した。

 その歩みは、ほとんど『早足』で、俺なんかは付いていくのが大変だったけど。

 あー、なるほど。セフィみたいな乱暴な野獣からすると、繊細なヴィンセントはむしろ扱いにくい部類に入るんだろうなァ〜……

 

 俺たちは、街に着くとようやく宿屋を見つけ出した。

 時間が遅かったのと、慣れないことで、多少の時間がかかったが、とりあえず一息つけそうだ。

 それに明日以降のために、しっかりと休息を取っておかなければ。

 手持ちのギルがフツーに使えたのが拍子抜けだったのだが、今は少しでも面倒ごとが少ない方がいい。

 小さめだがこ綺麗な宿屋の階段を昇った奥の並びが俺たちの部屋。

 部屋割りは三兄弟と、俺&ヴィンセント+α(セフィロス)だ。

 本当はヴィンセントとふたりきりがよかったけど、二部屋しか取れなかったのだから、贅沢も言ってられない。

 さ、まずはさっさとひとっ風呂浴びて眠ろう!

 すべての面倒ごとは明日以降だ! 疲れていそうなヴィンセントに先を譲って、ちょっとお茶でもしようと、テーブルの茶器を手に取る。

 宿泊のしおり的な説明書きが邪魔だから端によける。

 すると、ひらりと一枚のチラシ……? いやポスターのようなものがこぼれ落ちた。

 

 それにはシンデレラちゃんが行きたがっていたお城の写真と、正装した男のアップが写っていた。

 

「……なにこれ……レオンじゃね?」

 

 見知った男のすまし顔に、俺は呆然とつぶやいていた。