〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<15>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

 ドガーン!!    バァン!!

 

 という爆発音で目覚めたのは、たぶん夜中の二時頃だったと思う。

 結局、おれたち一行は、高台に移動し、その狭間に野営したのであった。

 先行した一個師団の消息は、未だ知れていなかったが、指揮官のセフィロスは、負傷者に鑑み、今夜は無理に兵を進めることをやめたのだ。

 だが、今の爆発音は……? まるで耳のすぐ側で、大きな岩を叩きつけたような爆音だ。

 

 同じ幕営で眠っていた同僚も起きだしてきた。

 

 おれたちは無言のまま顔を見合わせ、そっと幕を持ち上げてみる……

 

「うあぁぁ!!」

 悲鳴を上げたのは、同僚のほうだった。だが、それも無理はない。おれだって、息を吐くのをしばし忘れてしまったくらいだったのだから。

 テントの前は、火の海になっていた。

 夜食を作った時に使った、簡易コンロや食材が燃えている。それらがいくつかの幕営に飛び火し、大きな火の手があがったのだ。

「火、消さなきゃ……ッ」

 ポリタンクに汲み置きの水がある。それからバケツにも……!

 おれは必死に火を消そうとした。汲み置きの水が無くなれば、毛布を持ち出して叩いた。

 

 

 

 

 

 

 必死に消火活動をして、どれくらい時間が経ったことだろう。

 いや、実際には三十分も過ぎていないのかもしれない。おれの周囲には、同じような見習い兵や、一般兵が、駆けずり回って水を掛けていた。

 火勢はやや収まり掛けたように見えたが、まだ燃えているのだ。

 

 視界のスミに、武器を収めた木箱が移った。

 まわりは燃えていなかったが、火の粉が飛んできている。

 まずい……! アレに引火したら、もっと大惨事になってしまう。

 この辺りのテントは、おれたち、見習い兵や一般兵だけだったが、ソルジャーの人たちも駆けつけ始めている。

 皆で落ち着いて鎮火すれば、これ以上ひどいことにはならないはずだ。

 おれは両手にバケツを持ってテントから飛び出した。

 まだ、引火していなかったし、それで大丈夫だと思ったのだ。

  

 燻りだしている木箱に水を掛け、炎の及んでないほうへ押しのける。

「きゃッ……」

 おれは何かに蹴躓いて前のめりに倒れそうになった。

 寸でのところで、堪えられたので、持っていた箱は落とさずにすんだ。

「痛てっ……な、なんだよ、これ……」

 木炭のかたまりが、足元に横たわっている。

 ごつごつとした、黒い、ソレ。

 だが、次の瞬間、おれはそいつを見留め、大きくえづいた。

 

「ぐぅ……ゲッ……ぐぅぅ……」

 巨大な消し炭のようなソノモノは、数刻前、おれと一緒のテントで寝泊まりしていた同僚だったのだ。

 おれがつまずいたせいだろう。炭化して脆くなった腹の部分が、粉々に砕け散っていた。

「グゥ……ウエッ……げっ……」

 内臓から込み上げてくる吐き気を、必死にこらえる。

 おれは、喉元に手を宛て、何度も呼吸を繰り返した。もう一度、仲間の死骸を見るのは嫌だったが、近くに落ちていたビニールのシートを、その哀れな骸にかぶせてやった。

 

 

「クラウドッ! クラウド、どこだッ!」

 おれの名を呼ぶ声が聞こえたのは、やはり気分が悪くなって、戻してしまった後のことだった。すぐに動くことが出来なくて、火の気のない、岩のすみに寄りかかっていたのだ。

「クラウドッ! どこだ、クラウド!!」

「ザ……ザックス……?」

 ようやく口からこぼれた声は、老人のようにしゃがれていた。

「クラウドッ! クラウド、居るなら返事しろッ!」

「ザックス……! ザックス……ここッ!」

 おれはよろけながらも、岩で身体を支え、なんとか立ち上がった。目の前がクラクラする。

「クラウドッ! よかった、無事だな!?」

 火の粉をよけ、駆け寄ってくるザックス。

「う、うん……」

 一応頷きはしたが、彼の顔を見た途端、安心のせいか、ドッと涙が流れ出してきた。

「ザッ……ザックス……! ザックス……ッ!!」

「クラウド!」

 彼はすぐに、おれが普通の状態でないと気付いたのだろう。すぐに背中に腕を回し、身体を支えてくれた。