〜 詩人の夢想 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<13>
18禁注意
 ジェネシス
 

 

 

「……花の……においが……する」

 セフィロスがつぶやいた。

「そう……いい香りだろう? 君の体温で香りが強くなる……」

「わたし……の……?」

「そう。君は綺麗だよ……本当に……」

 そう誉めながら、彼の背に腕を回し、腰を浮かせた。

「……ッ ジェネシス……!」

「君が恥ずかしがることなんて何もないだろう……? 欲しくてたまらないのは、俺のほうなんだから…… 頼むよ、セフィロス」

 下手に出たのが功を奏したのか、しぶしぶながらも彼は俺の腕に身を預けてくれた。

 両の腕を前に突き出させ、膝立ちにさせる。

「……こ、こんな……格好……」

「痛いのは嫌なんだろう? 俺もまだ君に消されたくはないし」

「…………ッ」

「動かないで……もう少し内を馴らせてから……」

 左手を下に忍ばせ、やんわりと怒張に触れる。一方の右の手指は先ほどの作業のつづきを続行した。

 狭い孔の入り口からさらに奥へ、指を含ませる。

 

「あ……あぅ……」

 俺の指の動きに合わせて、綺麗に筋肉のついた背がくねる。真っ白い肌が淡く色づき、さきほどの香油の薫りが強くなった。

「く……はぁ……あぁ……」

「いいね……大分、やわらかくなってきた」

「……奥がしびれるようだ……変な……感じが……する」

「馴れてきたんだよ。わかるかな……今、指が二本入ってる」

「な……?」

 後ろを確認しようと、頭をもたげるが、さすがにこの格好では不可能だ。

「痛くないだろう? それどころか……気持ちよくなってきてる。……違う?」

 と、訊ねたが、さすがにすんなり頷くほどには、彼は素直ではなかった。

 前を強く擦り上げ、後ろの抜差しの指を速める。

 

「あッ……あッ……あぁッ」

 これまでの徒めいたうめきとは異なる、追い詰められた悲鳴が彼の口から漏れる。

 そう、この人の口から……

 黙して佇んでいる姿は、まるで人ならぬもののような畏怖を抱かせるこの男……

 人形のように冷たく整った顔に、染み一つ見当たらない、白磁の肉体……

 それが、あられもなく快楽にうねり、紅い口唇から哀願するような喘ぎをもらしている。

 

 俺は自身の肉体になにひとつ施さずとも、この痴態を眺めているだけで放ってしまいそうになった。

「あ……あぁッ ジェ、ジェネ……」

「指だけで……いきそう?」

「は、早く……しろ。中に……早く……」

 シーツを握りしめ、ビクビクと腰を震わせる。

「入って……いいの……?」

「だから……早く……!」

 ああ、この誘いを断れる男がいるだろうか。

 腰を高く上げ、紅く腫れた恥部をさらけだし、「早く」と促される。

 どうやら、俺が紳士でいられるのもここまでのようだ。

 思ったよりも細い腰に手を添え、その部分に熱の固まりを押しつける。一瞬、彼の身体が怯えたように強張ったが、俺はそのまま、狭い入り口を分け入った。

 

 

 

 

 

 

「あぁッ!」

 高い嬌声が上がった。

 繋がった部分から、とろとろと愛液と香油の混じったものが溢れ出す。

「あ……あぁ…… いい……」

 淫蕩に揺れるつぶやきに、腹の奥が熱くなる。これではそう長く保たせることはできなさそうだ。

「……動くよ」

 そう断っておいてから、ぐいと腰を引き、ふたたび深く彼の奥をついた。

 この体勢は……そう、獣じみた四つに這わせた体位は、肉の交わりにおいて、最も深く強く繋がれる体勢なのだと思う。

 後ろからは、繋がった部分がはっきりと見てとれるし、視覚的にも刺激の強い体位だ。

 彼の肉襞の間から、怒張した自身のものが、ぐちゅぐちゅと淫靡な音を立てて出入りする様が眺められるのだ。

 

「……すごいな……こんなふうに誰かと繋がるのは久々だ……」

「あっ……あっ……あぁッ……」

「君には見えないだろうけど…… とてもきつく締め付けてくる。奥のほうがひくひくして……」

「や、やめ……」

「やめられないだろう……? こんなに強く咥え込んでいるのに」

 嗜虐心をくすぐられ、我ながらひどいセリフを口にした。

 

「あ……あぁ……ジェ、ジェネシス……もう……出る……」

 『セフィロス』は、ひどく即物的な物言いをした。

 だが、それは俺も同じだった。こんなにきつく喰い絞められては、腰を動かすのも難儀なほどだ。

「いいよ……出して…… 俺もそろそろ……限界だ……」

 びくびくと彼の後ろの孔が震えた。最後の高ぶりとばかりにぎゅっと締め付けてくる。

「あぁッ! い……く!」

 そういうと、前身を支えていた腕ががくりと頽れた。

 彼の前から勢いよく精が放たれる。形の良い尻が前後に揺れ、それと同時に俺もずっとこらえていたものを吐き出した。

 

 そのままの姿勢で、ふたりで寝台に突っ伏した。

 このようなめまいのする交わりは、いったいどれほどに久方ぶりだろう。

 荒い吐息を繰り返す、『セフィロス』の身体から、麝香と彼の体臭の混じり合った蠱惑的な香りが立ち上る。

 俺たちふたりは、たっぷり一刻ほどは、そのまま身を横たえていた。