Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<22>
 
 レオン
 

 

 

 

「それで、貴様らは何をしている。ご大層に自衛軍などという物を構えているんだろ?」

 セフィロスの言葉に、さきほどの通りに返答する。

「自衛軍の役目は、街の中にあらわれるハートレスやノーバディを駆除することだ。出来うる限り、市民に被害を及ばさぬよう……」

 そう言いかけたところで、玄関が規則的に三度ノックされた。これは、リクの合図だ。

 廊下のあたりで、クラウドとリクの声がする。

 

『なんだか難しい話してるみたい。きっと聞くと面倒だよ』

 などと、幼いことを言っているのがクラウドだろう。

 リクの苦笑する気配が聞こえてすぐに、居間の扉が開いた。

 昨日のシャツ姿ではなく、今日は黒のタートルネックに、ミリタリーパンツを履いている。腰には愛用のナイフが添えられ、場合によってはいつでも戦闘態勢に入れるとった風情だ。

 ……しかし、本当に背が伸びた。ほんの2,3年前に会ったときは、まだまだ子どもじみていたのに。今ではクラウドを追い越し、俺の目線くらいまで迫ってきている。

 

「やあ、おはよう、リク。今朝のファッションも素敵だね」

 如才なくあいさつをするのはジェネシスだ。

「いや…… それより話の邪魔をしてしまっただろうか」

「問題ないよ。むしろ『難しい話』に加わる気がまるでないチョコボっ子のほうが、気になった」

 ジェネシスが笑うと、つられたようにリクも頬からも、緊張の色が解けた。

「ああ、リク。座れ。今ちょうど、連中のことについて話をしていたところだ。飲み物はそこのポットから好きにやってくれ」

「フフ、それじゃ、さすがに味気ないよね。……待っててごらん。今、最高に美味しい紅茶を淹れてあげる」

 いっそ楽しげにそういうと、ジェネシスが手ずから、茶器の準備をする。リクもこの手のタイプには慣れていないのだろう。ただ、彼のするがままに、美味しい紅茶を受け取ったのであった。

 

 

 

 

 

 

「今、この国の自衛軍では、街を守るのが精一杯だと聞いた。おまえはどう思う?」

 カップに口をつけようとしたところで、セフィロスに唐突に問われ、リクは慌てて茶器を元に戻した。

 ジェネシスが、メッというように、セフィロスを睨む。

「確かに……レオンのいう自衛軍ではそれが限界だろう。もともと、街の人々が協力して、見回りを始めたのがきっかけでできたものだ。あなたたちやレオンのように、正式な軍人としての訓練を受けているわけではないからな」

 理路整然とリクが言った。俺が説明するより、リクのほうが対外交渉は得手のようだ。

「フン……なるほどな。自衛軍というより、自警団だな」

 嫌みでもなくセフィロスがつぶやいた。

 

「……まぁ、だったら、少数精鋭でいくしかないな」

 何一つ迷うことなく、セフィロスが宣った。

「ゼムナスとかいうラスボスを始め、その13機関とやらはそこそこ手応えのある輩だそうじゃねーか。だったら、連中をここにいるオレたちで殺る。さすがに街の連中じゃ相手にもならんだろうからな」

「え……」

 少し驚いた様子で、リクが彼を見た。

「セフィロス……今の話……あなたたちも手伝ってくれるのか?」

「……どうせ、ヒマだからな。たまには本気で戦わないと腕が鈍る」

「ジェ、ジェネシス……?」

「ああ、うん。レオンから、敵の話は聞いたよ。もっともわからないことが多すぎるけど。でも、なんら罪のない街の人たちが被害に遭うのは放っておけない。ここは騎士道精神を発揮させてもらうことにするよ」

「だが、いいのか? 『空間のよじれ』に飲み込まれたと……」

「待ってても、すぐに帰れるわけじゃないからね。ここに居る間、手伝えることがあれば幸いだ」

 あざやかに、ジェネシスが後の言葉を引き取ると、数多の女性が目をくらませてしまいそうな微笑みでリクに応えた。