Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<52>
 
 セフィロス
 

 

 

「言っておくが、サイクスは強いぜ。それだけじゃねぇ、ルクソードやマールーシャも居る」

「そうか、退屈せずに済みそうだ」

「リクひとりじゃ、ゼムナスを完全に倒すことはできないぜ」

 アクセルはわずかに苦しげな表情を見せると、ちらりとリクに目線をやった。

「ああ、そっちはいずれ光の戦士とこっちのリクに任せよう。オレはとりあえず、ホロウバスティオン自警団の団長の要請で出動してきただけだ。キングダムハーツといったか……心を集める機械をぶっ壊す」

「ぶっ壊す……?」

「ああ、どんなもんでもコイツで切り裂いてやる。そのゼムナスとかいう野郎が邪魔をするなら、斬って捨てるまでだ」

 マサムネをアクセルの鼻先に突きつけ、オレはそう言ってやった。

「そうか……」

「そうだ。わかったら退け。どかなければ今度こそ斬る」

「アンタ……単純明快だな。気分のいい人だ」

 意外にもアクセルは笑い顔を見せた。刀を突きつけているこのオレに対してだ。

「退け、赤毛」

 オレはもう一度そう告げた。

「いい気分だよ。俺は俺の仕事をさせてもらうさ」

 そういうとヤツの両腕からボゥッと炎が噴き出し、ふたつの環が炎を伴って回転し始めた。

 

「レオン、リク。先に行け」

「セ、セフィロス……」

 オレを見上げるのは、リクだ。

「ジェネシスが追いつく前に、オレがすぐに合流する。上にはまだ難敵がいるようだ。油断するな。……行け!」

 最後の言葉はレオンに向かって強く言うと、ヤツは弾かれたように走り出した。リクも自然とそれを追うように駆けた。

 そう、それでいい。

 こいつの相手はオレひとりで十分だ。

 

 

 

 

 

 

「やっぱりね。アンタはそうすると思ったよ」

「てめぇの相手なんざ、オレ一人で十分だ。さっさと退けばいいのに……このバカ野郎が」

「一応俺も機関員だからさ。仕事だって言われたら、断れないんだよね」

「それで斬り殺されるのか。おめでてー野郎だ」

 フンと鼻で笑ってやる。きっとリクも気付いているだろう。このアクセルという男は、自身の中に組織に対しての疑問をもっている。疑念を抱きながら戦っているのだ。

 この男の真の目的が何なのかは知らない。だが、完全に頭首だというゼムナスと、志を一にしているように見えないのだ。

「ただでさえオレより弱いのに、迷いのあるままで勝てると思うのか」

「言ってくれるねぇ……まぁ、お仕事だから」

「宮仕えはつらいなァ、赤毛」

 オレがそういうと同時に、二つの環が同時に襲ってきた。

 その場から、後ろに跳躍しそれらを回避する。宣戦布告といったところか。

 こいつが内側に何を抱いていて、オレと戦うつもりなのかは知ったことではない。一度、刃を交えたのであれば、双方の事情は関係ないのだ。

「行くぞ! せいぜい楽しませてくれよ!」

 久々の一対一の真剣勝負に、身の内が震える。

 頭領とやりあうまでにダメージを負うわけにはいかないとはわかっているし、最初に出逢ったときと違って、こいつの闘気も本物だ。

 ああ、だが、オレはやはり根っからのケンカ好きらしい。昔、アンジールにいわれたとおりだ。

(まぁ、最近はコスタ・デル・ソルでのんびりしすぎていたからな)

 身の内でそうつぶやくと、オレは一気にアクセルとの間合いを詰めた。