〜 Amusement park recreation 〜
〜神羅カンパニー・シリーズ〜
<2>
 
 セフィロス
 

 

 

 

13:20

 

「あー、まぁ、でもお坊ちゃん、アンタのこと好きみたいだからなァ。クラウドにヤキモチ焼いて、手ェ出されないよう、気を付けろよ」

 などと、さらに言わなくてよいことまで口にする、この不愉快さ!

「くだらんことを口にするな! クラウドが不安そうな顔をしているだろう!」

「ああ、悪い悪い。そんな気にすることないって、クラウド。おまえはまわりの連中に好かれているし、副社長だって、まさか本気で嫌がらせしてくるようなガキじゃねーだろ」

「……あ、でも、前に睨まれたコト、あるかも…… 挨拶しても無視されたり……」

 ぼそぼそと力無く、クラウドがつぶやいた。

「なんだと! けしからん! おまえのような素直な良い子にその仕打ち……! よし、私がガツンと言ってやる!」

「セ、セフィってば! ダメだよ、そんなこと!」

「まぁまぁ、落ち着けよ、セフィロス。クラウドには俺らがついてるし、大丈夫だって。それにルーファウスには、くそ真面目な世話係が居るだろう? ヤツに年がら年中張り付いていられりゃ、そうそうおイタもできやしないさ」

 くそ真面目な世話係……タークスのツォンのことだ。

 まぁ、確かにヤツは融通が利かなく、やや神経質な性格でもある。「ルーファウス大事」の腰元は、まさしくザックスの指摘通りで、現在ヤツがトップとなっているタークスの1グループは、ややルーファウスの私的諜報機関といった風情なのだ。

 ……まぁ、オレにとってはどうでもかまわないことだが。

 

 

 

13:30

 

「ごちそーさまでした。じゃ、セフィ。お仕事頑張ってね」

 ちゃんと小さな両手を合わせてから挨拶をするクラウド。デートがおじゃんになったにも関わらず、私にも気遣いを見せ、席を立った。

「おまえもな。書庫は暗いから、変なヤツに声を掛けられてもついて行ってはいかんぞ。馴れ馴れしい輩には、特に注意を……」

「いいかげんにしろっつーの、セフィロス」

 思わずクラウドの後を追いかけそうになった私を、無情にも引き戻し、ザックスのボケナスは、ぐいぐいと腕を引っ張った。

「フフフ、ふたりともまた後でね」

 私とザックスの諍いを、じゃれあっているとでも認識したのか、クラウドは楽しげに微笑むと、手を振って走っていってしまった。

「ああッ、クラウド! いいか、私の言ったことを忘れずにちゃんと周囲に注意するのだぞ! ……おい、何しやがる、いいかげんにしろ、ザックス。鬱陶しい! 放せ、この野郎!」

 クラウドが居なくなると、ついつい言葉遣いが悪くなってしまうのだが、あの子に聞かれなければそれでよい。

「アンジールにセフィロスを連れてきてくれって頼まれたんだよ。たぶん、明日からの会議の話だろ」

「チッ……面倒な!」

「仕方ねーだろうがよ」

「わかった。後でちゃんと顔を出すから放せ!」

「甘いな、セフィロス。どうせ、どっかで時間つぶしてから、書庫にとんずらしようとか考えてんだろ」

「む……」

「……ったくアンジールの苦労も少しは考えてやれよな」

 話し合いは仕舞いとばかりにヤツは、ズンズンと歩き出した。連行状態の腕は外させたが、さすがにこの状況で逃げ出すわけにもいかなかった。

 ああ、そういや、来月、出張が入っていたな……

 もういっそ、トップ・ソルジャーなんかやめてしまって、クラウドとふたりで生活したいものだ。

 

 

 

14:00

 

 本社に、オレのデスクはふたつある。

 ソルジャー上級職用の執務室があって、そこにひとつ。この部屋にデスクを持っているのは、オレと、ジェネシス、そしてアンジール他ごく数名と、人事管理職のラザードだ。

 他に、別に執務室を一室もらっている。どちらで仕事をしてもかまわないわけだが、取りかかったばかりの案件が多いときは、必然的にミーティングの回数が増えるので、合同の執務室に居ることが多い。

 アンジールがオレを待っているといったのは、当然合同執務室のほうだろう。奇特なあの男は、個別執務室を断り、いつでもこの合同部屋のほうに在籍しているのだ。合同執務室では当然、悪さなどできん。

「ああ、セフィロス。忙しいところ、すまんな」

 部屋に入るなり、アンジールが早速というように、声を掛けてきた。

「まったくだ」

「おい、セフィロス!」

 アンジールに心酔しているらしい黒ハリネズミが、オレを肘でつつく。だが彼はまったく不快に思った様子もなく、ザックスに礼を言って退室させると、すぐに仕事の話に取りかかった。