IN Wonderland
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<最終回>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

  

 

「ってなわけで、最後の最後で、『クラウド』と鉢合わせになってね。俺たちはこっちの世界に戻って来ちゃったから、その後のことはどうなったかわからないけど、あのままじゃ終わらなかったと思うよ」

「そ、それでそれで?レオンは上手くごまかしたんでしょ?」

 鼻息も荒くヤズーが先を訊ねる。

「いや、だから俺たち、その瞬間、コスタ・デル・ソルに帰ってきたから、全然わからないんだよ。多分、レオンは全力でごまかしたとは思うけど、もともと言葉の上手いヤツじゃないしね」

「もう、兄さんたちってば、何してんの。一番肝心なところじゃない!」

 もどかしそうにヤズーが言った。カダージュもロッズも興味深そうに聞いている。

 

「ありゃぁ、あの後は修羅場になったんじゃないかな~。まぁ、レオンが『クラウド』を悲しませるような真似はしないだろうから。何とかくぐり抜けるとは思うけどね」

「あ~、続きが知りたい~。レオン、大ピンチ!」

 ヤズーが自身の身体を腕で抱き締めて、うずうずを押さえるように身震いした。

「ヤズー、そんなに面白がっては……」

「ごめーん、でも恋愛関係の泥沼って、興味をそそられるんだよね。ねぇ、レオンと『セフィロス』はしっかり恋人してんの?まだまだお互いに遠慮があるのかな、兄さん?」

 クラウドは茶菓子のフィナンシェに手を伸ばしながら、口を開いた。

「『セフィロス』のほうは自然体だね。うちに居たときとそうは変らないカンジ。でも、レオンのほうはもうメロメロ。アリスちゃんを無事に保護して逃がすのがミッションなのに、捕まってる風の『セフィロス』見て、オロオロしちゃってね。見てらんないの」

 

 

 

 

 

 

 その後もクラウドは、いかにレオンがだらしなくやに下がっているかを、あることないこと交えて、おもしろ可笑しく話すのであった。

 

「あー、おかしかった。レオン、いいねぇ、青春してるんだね」

 どこか使い古された表現で、ヤズーは深く頷いた。

「ヤズー、カダージュたちも……笑いすぎだ。事態はかなり深刻なのだぞ」

 私の言葉に、ヤズーはにじんだ涙を拭いながら、わかっているという風に何度も頷いて見せた。

「そりゃ、深刻なのは深刻だろうね。あっちの世界の『クラウド』兄さんは、現時点でレオンの正妻も同様の人物だからね」

「正妻って……男だぞ」

 気味が悪そうにセフィロスが口を挟む。

「まぁまぁ、例えだよ。そこに『セフィロス』という愛人の登場……へたれダンナのレオンがこの場をどう乗り切るか!」

 ゴシップ記事のキャスターのように、ヤズーがいうのであった。

 

 さて、この話は、これで終わりにしようと思う。

 レオンたち、三人のことは、先を見ることができなかったのだから、これ以上、話のしようがない。

 私にとっての初めての異世界への冒険は、そんなこんなで無事に終わった。そのことを喜ぼうと思う。

 

 童話の中のような、ホロウバスティオンの街、アリスのいるワンダーランド、まさしく『不思議の国の大冒険』であった。それを十分に堪能したのである。

 とはいうものの、やはり気になるのは、レオンたちの今後のことだ。

 レオンの動揺、『クラウド』の呆けたような驚きの表情……それにいつもの調子の『セフィロス』だ。

 あのあと、彼らの間で、いったいどんな会話がなされたのだろうか。

 誰も傷付かずに、話を終えられたのであろうか……

 

 陽が沈んでも、彼らのことが思い出され、身体は疲れているのに、なかなか眠りにつけない夜となった。

 

終わり