〜 告白 〜
 第二章
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<最終回>
 ジェネシス
 

  

 

「おい、ジェネシス。これからクラウドのところへ行くが、おまえも一緒に連れて行ってやる。一応協力者だからな」

「いや……別に俺は……」

「遠慮するな!ほら、さっさと行くぞ!」

 有無を言わせぬ力強さで、俺を引っ張ってメディカル棟に赴くセフィロスだ。

 まるで遠足に行く児童だ……などといっては言い過ぎだろうが、今にもスキップしそうなありさまに苦笑が隠せない。

 個室の前にやってくると、ごほんとひとつ咳払いをする。

「クラウド、私だ」

 作った『かっこいい声』で声を掛ける。やれやれ……だ。

「はい」

 という、クラウド少年の声の後に、個室のドアを開けた。

「クラウド、気分はどうだ?」

「は、はい。大丈夫です。もうあんまり痛くありません」

「やれやれ、災難だったな、少年。でも、終わりよければすべてよしってところかな、チョコボっ子。晴れて両思いだそうだな」

 茶化すつもりはなく、素直にそう祝った。

「は、はい……あの、いろいろありがとうございました、ジェネシスさん」

「どういたしまして。俺としても最愛の友の恋愛成就は嬉しいよ」

「あ、あの……おれなんかでいいんでしょうか」

 やはりそのあたりの引っかかりは持っているらしい。セフィロスのことを好きな気持ちに違いはないだろうが、到底自分とは釣り合わないと考えているのだろう。

「良いも悪いも、セフィロス本人が、おまえがいいと言っているんだ。修習生として頑張って、堂々としていればいいんじゃないかな」

 ふわりと立ち上がった、チョコボの尾のような彼の髪を撫でながらそういうと、クラウド少年は頬を染めた。

「クラウド何を言っている。オレ……私たちほどお似合いのカップルはそうそういないぞ」

「セフィロスさんってば……でも、おれ、少しでもがんばらなきゃって思います。セフィロスさんと釣り合いがとれるように、一生懸命勉強します」

 決意をあらたにといった風情で、ぐっと握り拳を見せた。

 

 

 

 

 

 

「おまえは普段から努力をしているだろう。それでもう十分だ。な、それよりふたりの今後について……」

「ダメですよ。おれがちゃんとしないと、セフィロスさんにも迷惑がかかります。おれ、がんばります」

 やれやれ、一歩進んだと言っても、なかなかセフィロスの思い通りにはならなさそうだ。

 だが、端から見ている分には楽しい。

「まぁまぁ、ようやく想いが通じ合ったんだから、後はゆっくりマイペースで進んでいけばいいじゃないか」

「そうだな!クラウド、私たちのペースで進んでいこう」

「は、はい、セフィロスさん」

 背後にピンクのバラの花でも飛びそうなふたりの間に、どうにも俺は居心地が悪くなって早々に退散することにした。

 

 今はセフィロスが、チョコボっ子に夢中で、例の実験生命体のことを深く訊ねてこないのはありがたかった。

 ようやくセフィロスに春が訪れたのだ。

 あのような汚穢なモンスターを見せたくない。しばらく生物研究所の動向にも目を光らせておく必要がありそうだ。

 銀色大狼と子チョコボが戯れる図を眺めると、ため息の一つも出てくるが、これもまぁ友人としてのお節介だ。

「じゃあな、チョコボっ子、お大事に。セフィロスも早めに執務室に戻れよ」

 ひとこと言い置くと、さっさと部屋を出たのであった。

 

 これで、人騒がせな英雄と、チョコボっ子のなれそめのお話は終わりだ。

 とはいうものの、まだまだ前途多難であることは疑いようがない。

 そして、セフィロスの能力をコピーしたらしい実験生命体のことも気に掛かる。

 どうにも今回の俺は、気の毒な心配性という立場のようであった。

終わり