~この手をとって口づけて~
 
<最終回>
 
 

 

 

「え~、セフィ、本当に帰っちゃうの~?まだお祭りの日から一日しか経っていないんだよ~」

 ラグナがセフィロスを抱きしめて、泣き叫ぶ。

「退け、ラグナ。セフィロスの目的は果たされた。帰るのは当然のことだろう」

「テメーが来たせいだろう!セフィ、まだまだエスタで見せたいものがたくさんあるんだよ~。もっと遊んでいこうよ~」

「ん……それもいいか……」

 などと言い出すセフィロスを遮って、

「よけいなことを言うな、ラグナ! セフィロスは俺がきちんと連れ帰る。飛空挺のチケットもとってあるし、邪魔をするな」

 レオンが声を高めた。

「……ちっ、保護者づらかよ。このヤロー」

「エスタは好きだ……また来たい」

 セフィロスは素直にそう言った。

「今度来るときはふたりで来るからな。覚えておけ、ラグナ」

 どこまでもシビアに、レオンが言った。

 

「飛行艇乗り場まで送るよ、セフィ。お土産もあるんだ」

 かき口説くように言うラグナに、レオンは素っ気なく、

「けっこうだ」

 と言い放った。

「帰りは俺も一緒なんだ。わざわざアンタに送ってもらう必要はない。土産だけはもらってやるから、早く渡せ」

「テメーってヤツはどこまで可愛くないんだよ、このヤロウ!」

 ラグナはいきり立つが、セフィロスの

「お土産……欲しい」

 の一言で、機嫌を直して大袋を手渡す。

「お菓子とセフィの服が入っているからね~。洋服はラグナさんが選んだんだよ~」

「もらっておく」

「どーしてテメーに偉そうに言われなきゃならないんだよ、このアホ息子!」

「とにかく、搭乗時間があるからな。ここでおさらばだ」

 レオンはそういうと、セフィロスの手を引いて歩き出した。

「またねー、セフィ!また絶対遊びにおいで~!」

 と手を振るラグナであった。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス、まだ少し時間がある。空港のカフェで一息つこう」

 レオンは繋いだ手を放さずにそう言った。

「……手、恥ずかしい」

 とセフィロスがつぶやく。

「手、ああ繋いでいる手か。空港は人が多い。離ればなれになると困るだろう」

「……子どものようだ」

 ポッと頬を染めてセフィロスが言う。

「大丈夫だ、誰にもそんなふうには見られない」

「…………」

 

 カフェで落ち着くと、ふたりで飲み物を飲む。

「……なんだか、こうしているとデートみたいだな」

 レオンが独り言をつぶやく。

「あ、いや、俺はそんなつもりで言ったのではなく……!」

「どんなつもりだ。……私は何も言っていないぞ」

 セフィロスが笑った。

「……行きもふたりで来てもよかったのかも知れないな……」

 ぼそりとつぶやいたセフィロスに、レオンが力強く頷いた。

「その通りだ。あらかじめ言ってくれれば、必ず同行しただろう」

「…………」

「次からは何かあったら、俺に声を掛けてくれ、いいな?」

「……レオンは忙しい」

 セフィロスが静かに言う。

「確かに暇ではないが、アンタとのことは特別だ。出来うる限りの予定を組ませてもらう」

「……『クラウド』もいるのに……か」

 レオンが眉を寄せた。

「……すまない。おまえを困らせようと考えてのことではない」

「いや……アンタには悪いと思っている。ラグナの物言いではないが、二股を……掛けてると言われても仕方のない状態だ」

「フタマタ……」

 首を傾げてセフィロスがつぶやく。どうやらその言葉を知らないらしい。

「今はどうしようもないんだ」

「わかっている」

 顔色一つ変えず、セフィロスが頷いた。

「そろそろ搭乗時刻だ」

 レオンがセフィロスを促す。

 ふたりの手が触れ合い、ふたたび繋がれた。

「エスタには……また来たいな」

 セフィロスが言うと、レオンは

「次の七夕祭りには俺も行こう」

 と請け合ったのであった。

 

 

 

終わり