〜 ALL STARS 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<40>
 
 セフィロス
 

 

 

 

 

 

 

 いきなり視界が開け、まず目に飛び込んできたのは、化け物のような大男であった。

 ウチの人間で言えば、ロッズやオレなどはかなり大柄だと思う。だが、蒼い髪をしたその男は、まさしく『小山ほどの大きさ』があって、さすがのオレも瞠目した。

 だが、次の瞬間、オレはもう冷静に戻っていた。そして……おそらくはジェネシスも。

 巨躯のロッズが、まるで樹の枝のように身を折り曲げて倒れており、ヤツの短い銀の髪は朱に染まっていたのだ。

 カダージュが双刃を手に、素早い攻撃を繰り出し、何とか間合いを保っている状況であった。

 だが、肉体そのものが武器である、大男の懐に飛び込むわけにはいかない。オレたちのような長刀使いにとって、間合いをつめられるのは非常に不利になる。

 ましてや大男……蒼のアスールは、倒れたロッズの側近くに油断なく陣取り、カダージュの攻撃の手を押さえていたのだ。

「セ、セフィロス……! ジェネシスも……!」

 オレたちに気づいたカダージュが、一瞬ひどく安堵した表情になった。きっと無意識のうちだろうが。つまりそれだけ窮地に陥っていたというわけだ。

 確かに動けぬ者ひとりを盾に取られ、パワーもウエイトもまるきり異なる、しかも呼吸一つ乱さないサイボーグを相手にするのは、いくらカダージュとはいえ厳しいだろう。

 まぁ、思念体の手に負えないのならば、このオレが出張ってもおかしくはないだろう。

 

「セフィロス、早く済ませよう!」

 いらいらとジェネシスが言った。もうこの野郎は……額に『女神命』とでも書かれていそうな勢いだ。

 大男、総身に知恵は回りかね……ということわざのように、アスールはようやく他にも、ふたりの敵が出現したと認識したらしかった。

 負傷しているカダージュを無視し、勢いづいてオレたちに向かって拳を振り上げる。巨大な岩さえも容易に砕く鋼の拳だ。

 

 

 

 

 

 

 グオォォォーッ!

 

 と、野獣のごとき牙をむき出しにした咆吼は、もはや『人間』と呼べるものではなかった。

 ジェネシスが黒剣を抜き、右に跳躍する。それに合わせて、正宗を構えたオレは左に向かって跳んだ。

 野郎と連係プレーをする必要はないのだが、互いの戦闘スタイルも知っているし、ジェネシスではないが、ヴィンセントの状況もこの場はさっさと済ませたかった。

 二手に分かれて跳んだオレたちに、アスールの野郎は一瞬判断に迷った。だが、獣の反応で、わずかなりとも跳躍の遅れたオレに向かって飛びかかってくる。

 銃を仕込んだ鋼の腕が、オレの顔面に狙いをつけた瞬間……

 ……ジェネシスの黒剣が、オレの頭上をなぎ払った。

 つまり、オレよりも図体のデカイ、アスールの頭部を真横に切り裂いたのだ。脳の部分だけは、移植しているからだ。

 ブツッと嫌な音を立てて、鉛色の液体が飛び出る。脳漿だろう。

 オレはそいつをかぶらないよう身を躱し、後方へ着地した。

 頭の半分を飛ばされた大男は、奇妙なダンスを踊っていたが、やがてドオッと地に伏した。

 

「……なんだ。思ったよりあっさり逝ったな」

「最初に弱点を教えられていたからね。大丈夫か、カダージュ?」

 まるで自分の弟のように、我が家のチビガキに手を差し伸べるジェネシス。連中がなつくはずだ。

「う、うん。僕よりロッズが……」

 頸動脈に指を当て、脈を測る。耳孔からの出血も無し…… 頭部の血は、外傷だ。顔面はわずかに切っただけでも、出血が多いのが特徴なのだ。

「……おそらく脳しんとうだろうな。動かさない方がいい」

 ジェネシスがつぶやいた。

「カダージュ、君の怪我は?」

「ううん……僕はかすり傷だよ」

「腕と足だな。くじいてはいないな?」

 親身になって末のガキの様子を確認する。ジェネシスは割と面倒見がいいところもあるのだ。特に目下の者に対して。

「うん…… 平気。打ち身くらいだと思う」

「よし、じゃあ、腕はこれで押さえて……」

 ジェネシスがカダージュの腕に応急処置を施している間に、オレはその場で救急車を回すよう、段取りをつけたのであった。