墓 参
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<18>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「こ、これ……?」

 ヴィンセントは手の中におさまった金色のカードを、恐る恐る持ち上げた。

「これ…… セフィロス? わ、私に……?」

「ああ。おまえはずいぶんとここが気に入った様子だったからな。記念品だ」

 オレはどうでもいいようにそう告げた。たいした意図はなかった。

 ただ、普段は無口で大人しいヴィンセントが、子供のように喜んでいたこと。そしてオレが聞きたかった答えが聞けたということ……

 だから、『記念品』だ。

 

「こ、これ……セフィロス!」

「ああ?」

「こ、これは、ゴールドソーサーのフリーパスカードではないか!」

 悪趣味とも言えるようなギラギラの金色カード。オレなら財布の中に入れておくのも嫌な色合いだ。

「だから記念だっつってんだろ」

「こんな……いったいいくらすると思っているのだ……こ、こんな高価なもの……」

「ハァ? 貧乏くさいババァみたいなこと言ってんな。言っておくが返品不可だぞ」

「そ、そんな、もちろん、返品だなどと…… で、でも本当に私などがもらってしまってよいのだろうか?」

「面倒くさいヤツだな。おまえが喜びそうなモノだから、わざわざ買ってやったんだろ。……ああ、ロープウェイが来たな、行くぞ」

 つまらないやり取りの間に、おかしなモンスターの姿をした乗り物がやってきた。

 昼過ぎのこの時間に帰途につく客はまれだ。行きと同様ロープウェイの中はがらがらだ。 ごく自然にオレの前の席に座ったヴィンセントは、まださっきのカードを眺めていた。

「……あ、あの、さっきは動揺してしまって、すまなかった。ちゃんとお礼をいうべきなのに。……ありがとう、セフィロス。ずっと大事にする」

 クソ丁寧な口上を述べるヴィンセント。

「あのな、宝石だの美術品じゃねーんだぞ。使わなきゃ意味がないだろうが」

「あ、ああ。そ、そうだな。こ、このカードなら3名までフリーだ。もし、君さえよかったら、是非また……」

「ウチのガキどもを連れてきゃいいだろ」

 窓の外に目線を投げながら、オレはそう言った。幸い我が家には「ガキ」と呼べるキャラが多い。

「あ、ああ、もちろん子供たちも……」

 ヴィンセントは曖昧に頷いた。こいつは実年齢のずっと離れたウチのガキどもを『子供たち』と呼ぶ。……まるで母親のように。

「ジェネシスやヤズーも……もし、興味がありそうなら、だが」

「ジェネシスとツーショットはやめておけ。何をされるかわからんぞ」

「また、君はそういうことを…… だが、その……」

 わずかに言い淀むと、今回ばかりはと意を決したような表情でヴィンセントは口を開いた。

「君と……また一緒に来たい。ゴンドラに乗って、景色を楽しみながら……君の声を聞いていたい」

 ヤツにしては頑張ったセリフなのだろう。普段は怖がっているオレに向かって言うのだから。

 だが、それじゃ、まるきり恋人の睦言だ。

 やれやれ、おまえはクラウドの最愛の人間だろう?まったく、天然キャラクターは扱いが難しい。

「さ、昨夜は夢のように楽しかった……だ、だから……また……」

「……そうだな。また、な」

 そう応えていたオレはきっと微笑していたのだろう。ヴィンセントはようやく安心したように、車窓に目線を戻した。