〜 CAIN 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 セフィロス
 

 

 



  

「ほら、早く行け」

 顔を出しにくいのか、ぐずぐずと後について歩こうとするヴィンセントを前に突き出し、荷物袋はオレが引き受けた。

「き、君が、さ、先に……」

「いいから、ほれ」

 そう言ってやったとき、ドッタバッタという嵐のような足音が玄関に向かって突進してくる。

 ちょうど扉を開けたところだったから、ヴィンセントはクラウドとはち合わせになる形になった。

「ヴィンセント! ヴィンセントッ! 怪我ない!? さっきようやくヤズーから話聞き出して…… 今、迎えに行こうと思ってたところだったんだよッ!!」

「あ、ああ……す、すまなかった…… セフィロスのおかげで……事なきを得た」

 辿々しくヴィンセントが答えるのに、オレは鼻を鳴らした。

「フン」

「…………」

「すまない……おまえにも心配を掛けたようだ、クラウド……」

「ヴィンセントに怪我がないんならよかったよ〜。やっぱ護身用の銃くらいは持ったほうがいいかもね」

「あ、ああ……」

「あ、セフィ。一応礼は言っとく、どーも、サンキュ。」

 あからさまにムッとした面持ちで、小面憎い言い方をするクラウド。自分の役割を奪われてふて腐れているのだ。まったくすぐ顔に出るガキだ。

「ふ〜ん? なァに、ムッとしてやがる? ヤキモチか? あ?」

 桃色の頬をぐにっと引っ張ってやると、チョコボがキーッ!と怒り出した。

「何すんのォ! 顔が大福になるだろ、コノヤロー!!」

「もともとだろ、そりゃ。おまえ、最近太ったんじゃねーのか?」

「うるさい! 太ってない! セフィのバカ! ヴィンセントが大変なときに、俺にかまってんなよ! さ、ヴィンセント、あっち行こう! みんな、待ってるよ!」

 そういうと、クラウドのクソガキはヴィンセントを抱き込むようにして、居間に引っ張っていってしまった。

 きっと、ガキどもも、恐る恐るリビングからこっちの様子を伺っていたのだろう。

 

「やれやれだな。あー、クソ、重い……」

 ブツブツ文句を言っていると、荷物をひょいと受け取ってくれたヤツがいた。

「セフィロス、ご苦労様〜」

 事情のわかった物言いはヤズー以外の誰でもない。

「チッ、クソガキに知られると面倒だと言ったろ」

「仕方ないじゃない、兄さん、ヴィンセントのこととなるとすごい敏感なんだもん」

「フン、あいつももうちょっと他人の心の中に敏感になれるといいんだがな」

「うん。兄さんのは動物的直感ってヤツだからねェ」

 クラウドがいないのをいいことに、冗談でもない面持ちで、ヤズーの野郎が宣った。

「違いない。あー、腹減った。先にシャワー浴びてくる」

「バトルで汗かいた?」

「ケッ、準備運動にもならん。帰り道のほうが時間が掛かったな」

「そっか。じゃ、お風呂入っておいでよ。その間に晩ご飯の用意が出来ると思うから」

「早くしろ」

 そう言い置くと、オレはさっさとひとっ風呂浴びに行った。

 

 

 

 

 

 

 本当はシャワーで済ますつもりであったが、結局「ひとっ風呂」浴びてしまった。

 オレはわりと風呂好きなのだ。入らなきゃ入らんで死なないとも思うが、どうせ入るならゆっくりと浸かっていたいタイプだ。

 シャワーでダウンタウンの埃を洗い流し、熱めの湯に浸かっていると、自然と吐息が漏れる。

 そんなこんなで長湯をした結果、オレが食卓についた時には、すでに全員勢揃いの状態であった。

 テーブルの上には、いつもにもまして華やかな食事が並んでいた。

「ほぉ。こいつはいいな。ちょうど腹が減ったところだ」

「セフィ、遅いッ! せっかくヴィンセントが腕を奮ってくれたのに! 冷めちゃうじゃん!」

「よ、よしなさい、クラウド」

「だから先に食べようって言ったんだよ!」

 ぶーぶー文句を垂れるクラウド。

「セ、セフィロスは私のために……」

「っていうか、兄さん、五分も待ってないじゃない」

 と、末のチビ。

「はいはい。そこまで、じゃ、いただきまぁ〜すッ!」

 ヤズーの、どこぞの一家のような号令で、一斉に食い始める。

 男六人でメシを食う様はなかなか壮観だ。山盛りに立て並べられた料理がドンドン減ってゆくのだ。もっとも若干一名、のろのろと亀のごときスピードのヤツは居るが。

 

 こんなときのヴィンセントは本当に嬉しそうだ。食卓に皆が揃って食事をしているとき、その後、居間でくつろいでいるとき…… 

 ヤズーと一緒にキッチンの食事の後かたづけをしつつ、ガキどもがデザートをせがんでそのままダイニングで食っていて、オレが定番の位置で寝ころんで、クラウドがテレビを観ているような……そんなごく日常のひとコマをこいつはどれほど大切に思っているのだろう。

 

「あ、あの……セフィロス……どうしたのだろうか? く、口に合わなかったか?」

 つい、じっと見つめてしまっていたのだろう。ヴィンセントはおずおずとそう訊ねてきた。

「いや、美味い。……味付けがいつもと違うな」

「あ…… きょ、今日はめずらしいハーブが手に入ったから。稀少品で少量だけなのだが。それでチキンを焼いてみたんだ」

「へぇ。香辛料でこうも変わるとはね」

「いつものとどちらのほうがいい?」

 真剣な口調でそう訊ねてくる。

「そうだな。好みとしてはこっちのほうが辛みがきいてていい。だが、いつものヤツも、アレはアレで気に入っているしな」

「そ、そうか……! よかった。これからもこまめに店を覗いてみることにする」

「それはかまわんが、面倒事には巻き込まれるなよ、お人好しが」

「あ、す、すまない……」

 すぐにしょげてしまう姿が面白い。ついつい言わなくていい一言を口にしてしまうのだ。

 それを目線で叱りつけて来て、ヤズーが口を開いた。