〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<17>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「……いっつも、なんにも言ってくれないで…… セフィはひとりで抱えこんで思いこんで、自分自身と周りを傷つけるんだ」

 ボトボトと大粒の涙が、手前で汲んだ彼自身の手を濡らした。

 セシルが困惑した風の目線を俺に寄越してくる。俺とクラウドがとりわけ親しげなので、なんとか宥めろというのだろう。

 だが、俺はそういった役割が、なによりも不得手であった。

「お、おい……泣くな。その……お、落ち着け。あ、あの……」

「……いや、おまえのほうが落ち着いとけよ、スコール……」

 ジタンの呆れかえった声で、さらに焦りが募る。こんな慰め役はセシルあたりの役目だろう。

「あ、い、いや、ええと、クラウド。そ、そうか、ずっと心配していたティーダが無事に帰ってきて気が緩んだんだな。あっちで少し休んだほうが……」

「そうだね。温めたミルクがあるから。気持ちが落ち着くよ」

 セシルが上手い具合にクラウドを誘導し、ソファのほうへ連れて行ってくれた。 

 間仕切りの向こうで、背中を丸め、ホットミルクをすすっているクラウドは、やはりどうみても年下にか見えなかった。

 俺はティーダに改めて質問を始めた。

 クラウドがいると聞きにくいこともあるし、唯一、味方の中で、長時間敵側と接触していたのだ。引き出せる情報はすべて聞いておきたい。

「ティーダ。おまえが向こうで会ったのは、セフィロスと…… その……父親だけか?」

「父親とか言うなよ。クソオヤジで十分だって!」

 よほどの因縁があるのが、ひどく不愉快そうに彼は吐き出した。

「他の者たちの姿は? 会話はしていなくてもいい。姿を見もしなかったのか?」

「うん、見なかったッス」

 あっさりと答えられて、脱力してしまう。

「……え、ええと……それでは、おまえは捕まって、どのような状態でいたのだ? 拷問された様子はないが……」

「ああ、もう、全然ッスよ、そーゆーのは。セフィロスさんに放置プレイされたッス」

「…………」

「水晶柱に縛り付けられたまま忘れられてて。ブリッツで鍛えた喉で大喚きしたら、ようやく気づいてくれたみたいでさ。あっさり鎖叩き斬ってくれて、もう帰れって」

「……そ、それだけか?」

「そうッスよ。オレ、『帰らねー!話したい』って言ったんスけど、ものすごく嫌そうな顔して…… 自分で連れてきたのに、シツレーっすよね!」

 フンと鼻息荒く、憤慨するティーダ。

「ああ、まぁ……」

「それにオレを逃がすの、クソオヤジも他の誰も、止めに来やしなかったッス。だから、ああ、セフィロスさんって完全に単独行動なんだな〜、ワガママだな〜って」

 ストレートな表現がおかしくて、こんな場合なのに小さく吹き出してしまった。

「プッ…… まぁ、確かに、あの人はグループで動くってタイプの人じゃなさそうだな」

「オレ、クラウドの気持ち、なんとかセフィロスさんに伝えようとしたんスよ? ええと……その……ちょっと、夜、クラウドがスコールと話してるの聞いちゃって……だから」

「なに……?」

「ああ! ゴメン!別に立ち聞きするつもりなんか全然なくて! 便所に起きたら、なんか深刻そうな声が聞こえたんで……」

「う……」

 正直、文句をつけてやりたいところだったが、真夜中に話をしていたのは事実だ。ティーダにしたって、聞き耳を立てていたわけでなく、深刻そうなやり取り気を引かれたのだろう。

「いや、だから、そんで、せっかくセフィロスさんと話す機会ができたわけだから、せめてクラウドの本音くらい伝えてやんなきゃって」

「……それで? セフィロスは?」

「一応、話は聞いてたみたいだけど…… やっぱ、セフィロスさんが現実世界での直近の記憶を失っているっていうのが痛いッスね。いくら説得しても納得できないだろーから」

「…………」

「それにセフィロスさん、クラウドに一度殺されてるって…… あ、いや、ホントにそのとき死んじゃったのかどうかはわかんないスけど。記憶が当時のまま止まっているとなったら、ちょっと難しいだろうなァ」

 はぁと大きくため息をつき、ティーダはつぶやいた。

 ……よかった、この場にクラウドがいなくて。余り聞かせたい話ではなかったから。

「そうか。だが、セフィロスに話をしてくれたのはよかった。上出来だ、ティーダ」

「へへへ。そうッスか。でも、その後にクソオヤジが乱入してきやがって。セフィロスさんとの話を中断させられたんスよ。ムカツクっしょ!?」

「あ、ああ、ジェクト氏だな」

「クソオヤジで十分ッスよ! 妙にセフィロスさんにも馴れ馴れしい態度とってたし。マジむかつくっての! クソ! がさつで乱暴でよ!」

「……おまえ自身はジェクトさんとは何か話をしなかったのか?」

 やや気兼ねはあったが、俺は敢えて直球で訊ねてみた。

「ケッ! オレが一生懸命セフィロスさんを説得しようとしてたら、『男同士なんだから、拳で勝負させろ』だとよ!  アホかっての!」

「ふ……」

 『拳で勝負』か。

 思わず頬が緩んでしまった。なるほど、面白い人物だ。なにも命を取り合うばかりが勝負ではないということか。

 ……そうだな、ティーダとジェクトの場合なら、もっともふさわしい闘いの仕方かもしれない。ティーダとて、なにも父親の命を奪おうとは思っていなかろうから。

 彼は、父親に認めさせたいといっていた。

 ならば、ある意味、この時代錯誤の方法が、格好なのかもしれない。