〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<23>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

 ……22時……

 

 ようやく一段落した時刻だ。

 セフィロスは、結局おのれの生理的欲求に従ってのみ行動した。

 ……つまり、促されたから食事をしたわけではなく、空腹だったから出されたものを食し、疲労を感じたから長風呂だったのだろう。

 今はのんびりと一番広い寝室で横になっている。眠っているわけではないのだが、『休息している』というのが、最も近い状態だろう。

 いわゆる『捕虜』というところからは、かけ離れた待遇であるからこそ、このような次第であるのだが。

 

「セフィロス。……話をしたいのだが」

 俺はセフィロスに声を掛けた。とにかく、彼の失った記憶を引っ張り出すこと……それが最良の解決方法だから。

「なんだ…… 眠くなった」

「すまないがもうしばらく付き合ってくれ。……さきほども言ったように、どうしてもアンタの記憶を元に戻したい。クラウドとの決着だのなんだのという事も、すべてその後の話だ」

「……ふぅ…… おまえは存外お人好しなのだな。あの魔女の物言いでは、もう少し分別のある男かと思っていたが」

 横になったまま、ごろりとこちらに寝返りを打つ。

 しどけない姿で、上目がちに眺められると、こちらも目のやり場に困惑する。おまけにクラウドが、ぴったりと俺の側にくっついている状態だから、おかしなリアクションはとれないのだ。

 ちなみに、俺はセフィロスの寝台脇の椅子に腰掛け、クラウドは二つ並べられたベッドのもうひとつに座らせている。

 椅子の位置が両ベッドに挟まれた位置になるので、彼は俺の背中にひっつくようなポジションで話を聞いているのだ。

 

 

 

 

 

 

「……これから、ひとつずつ、俺の問いに答えていってくれ。順序立てて思い起こせば、自然と現在に繋がると思う」

「……さぁ、どうだろうかな」

 気乗りしない様子のセフィロスを黙殺し、俺は真剣そのものに話を続けた。

 後から、クラウドに『スコール、最初、尋問官みたいだったよ』と言われたほどに。

「まず、生まれはどこだ」

「プッ……そんな時期の話からか? おまえはなかなか人を笑わせる才のある男だな」

「からかうな。質問に答えてくれ」

 俺は固い声で先を促した。

「……生まれ、ね。さぁ……私自身にもよくわからないな」

「なに……?」

「人体実験によって生まれたモンスター……といったところか。場所は神羅カンパニーの研究室か何かではないのか?」

「…………」

 フフッと妖しい微笑を浮かべるセフィロス。初っぱなから俺は、虚を突かれ黙り込んだ。

 背中でクラウドが、なにやらゴソゴソと落ち着かなかったのは、俺の問いが不適当だったからなのだ。

「……す、すまなかった。無神経なことを訊ねて」

「別に……気にしていない。フフ、実直なところは、なるほど私の見立て通りだな、スコール・レオンハート」

「う、生まれなど、何も関係はない」

 低く早口で俺はつぶやいた。

 そして次のセリフは、セフィロスの双眸を見つめてはっきりと告げた。

「……人はいかに生きるだ。自己選択できぬ時期の事柄は本人に何の責任もない」

 セフィロスの切れ長の双眸が、ひたりと俺を捕らえる。

 微妙な空気が流れ、空間に静寂が落ちた。