〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<37>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 ズクズクと左手の真ん中に熱が集まる。

 それは俺の呼吸とともに、鈍い傷みを伴い脈打つ。

 

 今……何時頃だろう。

 昨夜は大分早めの時間に、スコールにベッドに入れられた。セフィロスが先に休んでしまったのも大きな理由だろう。

 あっさりと寝付けたのはよかったが、今になって……そう、そろそろ外が白み始める、この時間になって、妙に負傷した手が疼くのだ。

 

 半覚醒の状態にあった俺は、『彼ら』の物音で目を覚ました。

 

「……う、ん……?」

 寝ぼけた声が漏れる。セフィロスのベッドで、なにかごそごそと音がするのだ。

 しらじらと白み始めた外の明るみに、ふたつの影が照らされている。一方は俺と変わらない……普通の大きさ。もう一方はやや小さく見えた。

「ん……? だれ……?」

 

(やべッ! クラウド、起きちまった!)

(しーっ! しーっ! 静かに! 気づかれたらヤバイっすよ!)

(と、とりあえず、セフィロスさんの布団直しとけ!)

 

「……? ティーダ、ジタン……?」

 彼らの声で、そうと見当をつけ、訊ねる。

「お、おう、クラウド! 目、覚めちまったのか?」

「まだ、全然早い時間ッスよ。十分寝直せるッス!」

 

「……どうして、ふたりがセフィのベッドに居るんだ……?」

 ぼんやりとそう訊ねた。問いかけた俺としては、たいして深い意味はなかったのだが、彼らふたりは明らかに狼狽した。

「あ、い、いや、違うんスよ! 別にオレたちは変な意味じゃなくて…… ね、ジタン!」

「そ、そう。そうだよな、ティーダ! いや、こうしていたらセフィロスさんみたいに、キレーで強くなれるかなーって」

「……なんで、おまえら、セフィ・ファンクラブみたくなってんだよ……」

 寝起きの機嫌の悪さと、呆れた気分でうんざりと俺は言った。

 

 ……そう、セフィロス……それに、スコールもいない。いったい何が起きたというのだろう。

 いや、考えるまでもない。

 戦闘派のふたりが、揃って姿を消しているのだ。

 

 ……敵襲……!

 これまでも、夜襲がまるでなかったわけではない。

 明け方を狙ってくるとは……これもイミテーションのしわざなのだろうか。彼らは人の姿を模した人形だが、意志をもって計画的に行動しているとは思えない。

 となると、何者かが陽動したのか、たまたまこの広い屋敷に紛れ込んだのか……

 いずれにせよ、イミテーションは障害だ。

 即刻、消し去らねばならない。数が集まれば厄介なことになる。

 

 

 

 

 

 

「敵襲だろ。俺も行く」

 パジャマのままでは格好が付かないが、俺は即座にそう言って剣をとりだした。

 急いで着替えようとするのを、ティーダが止める。

「クラウドはダメっすよ! 怪我してんでしょ」

「別にたいしたことないって。利き手の方じゃないし」

 ニットのノースリーブに腕を通し、パンツを穿く。男の着替えは早いのだ。

「いいから、クラウドはここにいろよ。表にはセシルとラグナが行ってる」

 何故か強い口調で、ジタンに止められる。

「だが……じゃ、ティファたちは?」

「待機してるッス。敵がどこから来るかはわからないッスから」

「じゃ、俺も……」

「おまえが、その手で無理したら、ティファが気にするだろ!」

 妙にしつこく俺を制止するジタンとティーダだ。

 確かに痛みがないわけではないが、利き手ではないし、それほどひどい怪我でもない。それにこれまでだって、ちょっとした傷くらい、戦士の皆は作ってきている。

「……なんだよ。なんで、そんなに止めるの? なんだか嫌な感じがするんだけど」

「オレたちはクラウドのコト、心配して言ってるんスよ?」

「そうだよ。運良く味方も増えたんだ。怪我している時に無理しなくてもいいだろ」

「……セフィとスコールは?」

 さきほどから姿の見えないふたりのことを訊ねると、ティーダとジタンは、顔を見合わせた。あきらかに困惑しているように見える。

「ねぇ、セフィとスコールは!? なんだよ、おまえらちょっと変だぞ?」

 いらいらを隠さず、強く問うと、彼らはしぶしぶ口を開いた。

「そのふたりにおまえのこと頼まれたんだよ。絶対に来させるなって」

「……特にスコールがな」

「何だよ……いつもイミテーションだろ? だったら数も多いし、総出でやっつけたほうが早いじゃん。おまえらも一緒に行こうぜ!」

 別にセフィロスとスコールの戦闘に加わらなくとも、イミテーションにつられて迷い出たモンスターなど、いくらでも敵はいるはずだ。

 だいたい俺たち、コスモス側とは異なり、『イミテーション』という、命のない人形を、いくらでも生み出せるカオスの軍勢相手となると、こちらはいつでも人手不足である。

 

「ああ、オレたちは、行きたいんスけど……クラウド、ここでひとりで待っててくれるッスか?」

「さっきも言ったように、セフィロスさんたちに頼まれてんだ。だから、おまえが勝手な行動をとるなら、見張ってないといけない」

「だからどうして! この程度の怪我、俺に限らず、皆したことあったじゃん。でも、そんなに慎重にならないで……」

 食ってかかる俺に、ふたたび彼ら二人は目線でやり取りをした。理由も説明せず、これ以上、止めにかかるなら腕ずくでもと考えている。

 わざわざふたりして、見張ってまで俺を来させないようにするというのは、手の怪我だけが理由ではないはずだ。