〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<39>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「おんやァ〜、コイツはどこかで見た顔ざんす〜!」

 魔女の後からくっついてきた、薄気味悪い道化が、いかにもピエロらしくセフィロスの周囲をはね回る。

「……ネェネェ、魔女さん。確かこんなヤツ、ウチらの仲間にいませんでしたっけ〜?」

「フン、相変わらずだな、道化」

 吐き捨てるように、セフィロスがつぶやいた。

「道化とはなんスか!? 失敬な! ぼくちんにはケフカというカッコイイ名前があるんだよ! この裏切り者ッ!」

 吠える道化の前に、俺は立ちはだかった。こんな痴れ者をセフィロスに対峙させたくはなかったし、ましてや『裏切り者』だのと言われるのを、黙って聞いているわけにはいかない。

「下がれ、セフィロスに近寄るなッ!」

「ありゃりゃ、こりゃまた! もうコスモスの手下を懐かせてやがる。アンタも顔に似合わずよくやるねェ、英雄さん!」

 道化のケフカは、けったいなダンス混じりで、俺たちの周囲を飛び回る。それを、剣の一降りで追い払う。

「セフィロスに無礼な口を聞くな! この戦いの意味すら深く考えず、無為にイミテーションを作り出し、混乱を招くだけの貴様に何がわかる!」

 これまで俺たちのやり取りを黙視していただけの魔女が、ツ……と一歩歩み出た。

「……フ、若き獅子よ。おまえはコスモスの手先。故に、この私と戦う宿命」

 低く穏やかな声が、不気味に朝焼けに溶け込んだ。

「違う。俺が魔女に剣を向けるのは、おまえが『魔女』ゆえだ。コスモスもカオスも関係ない。……『時』を弄び、多くの人々の命を奪った貴様を、この手で葬ることがSEEDである俺の使命……!」

 俺は油断なくガンブレードを構えた。

「ホホホホホ!」

 俺の口上に覆い被せるように、魔女が嗤った。

「いいでしょう。猛き獅子よ。……もっと、長く楽しもうと思っていましたが、この場で決着を付けるのもよいでしょう。裏切り者の討伐は、その後にゆっくり……」

「……! セフィロスは、俺と貴様の戦いには……」

「淫猥な魔女よ……」

 静かな声で割って入ったのは、先ほどからほとんど口を開いていないセフィロスであった。

「おまえの執心している若獅子は、一筋縄ではいかぬ男だぞ。……もと、『カオスの戦士』として、忠告しておこう」

「……ええ、そう。そうでなくてはね! スコール・レオンハート! さぁ、幕を開きましょう!」

 高らかに宣うと、魔女は道化をしたがえて、ふわりと空を舞った。

 

 

 

 

 

 

「スコール・レオンハート」

 背後のセフィロスに名を呼ばれ、俺は振り向かずに応えた。

「セフィロス……! 必ず勝つ! アンタに手出しはさせない!」

「……敵のアシストはあの道化だ。おまえには私が付く」

 意外なことを早口に告げられ、思わず問い返そうとしたとき、俺とセフィロスの間に、氷の弾丸がドドドドドと撃ち込まれた。

 同時に横跳びし、それを躱す。

「だが、セフィロス……!」

「話している暇はない、来るぞッ!」

 魔法主体の魔女と道化、そして剣士の俺とセフィロス。どちらの土俵に持って行けるかで、勝敗は大きく揺れる。

 

「オホホホホ! これが避けられるかしらッ!」

 大きく広げた羽の間から、炎の弾丸を飛ばす魔女。

「ケーッケッケッケッ! 遅い遅いですよォ〜!」

 道化が呪文を唱えると、地面から氷柱がドンドンと突き出す。何とかして相手との間合いを詰めねば、いつまでも巧みに魔法を操る連中のペースだ。

「……騒々しい……! 不快な道化め……!」

 セフィロスは鋭くそう言い捨てると、地を蹴って空に舞った。突き出た氷柱を通り道に、瞬時にケフカに迫った。

「消えろ!」

 身の丈ほどもありそうな長刀が空を舞う。太刀筋を視覚することさえできない素早さだ。

「うわぁっととと! ああん、ぼくちんの帽子が〜!」

 セフィロスの太刀は、ケフカの衣服を引き裂いて、ヤツを空から叩き落とした。

 さすがはセフィロス。クラウドの言ったとおり、伝説の英雄だ。

 彼がアシストを申し出てくれたのは、望外だが、幸運であったと考えるべきだろう。

 俺は後顧の憂い無く、魔女と戦える。

 

「こい、魔女。……この場で決着をつけてやる!」

「オホホホホホ! 望むところだ、スコール・レオンハート……!」

 強く地を蹴り、魔女に向かって剣を振り上げた。