Fairy tales
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<9>
 
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

「おい、ヴィンセント」

「あ、な、なんだろうか?」

「この女も童話の中の登場人物だったな」

 明け透けに訊ねるセフィロス。この人さァ〜、おとなげないっつーか、もうちょっと気遣いとかね。シンデレラちゃん、そこに居るんだからさぁ。

「セ、セフィロス…… いや、ああ……シンデレラという物語はある」

「ここが童話の世界というのは了承済みだろ。では今現在、この女の置かれている状況を教えろ」

「い、いや、その……『シンデレラ姫』のストーリーはわかるが……いきなり現状といわれても……」

 慎重なヴィンセントの返答にしびれを切らしたのか、セフィロスはザッと立ち上がると、一番遠い場所にいた彼女の側へ、ドガドガと歩み寄った。

 自然、俺とヤズーがシンデレラちゃんをかばう形で近くに侍る。

「……おい、女。現在おまえの置かれている境遇を教えろ」

「…………」

 女の子のシンデレラちゃんには、巨大で乱暴で不躾なセフィロスが怖いのだろう。上手く答えられずに、なんども瞬きを繰り返している。

「おい、苛つかせるな。はっきりものを言え、女!」

「もう、ちょっ……あなたねェ!」

「時間がねェだろ。いつまでもこんなところに居られるか! はやく答えろ、女」

「セフィロス、いいかげんにしてくれない? 女の子相手に、何なの! 時間がないとかそういうことは俺たちの都合でしょう?訊ねたいのは彼女の境遇なんだね。だったら俺が話すから、ほら、退いててよ!」

 俺が口出しする前に、レディファーストのヤズーが、邪険にセフィロスを追っ払った。

 セフィロスが舌打ちして、場所を譲ったのち、彼の姿が彼女の視界から見えないような位置どりで、ヤズーはシンデレラちゃんに相対した。

「ごめんねェ。我が家のケダモノが。悪い人じゃないんだけど、無神経なんだよねェ」

 と、ひととおり、セフィロスの非礼をわびた後、静かに口火を切った。相手の……しかも女の子のプライベートを聞き出すのだ。

 男で、しかも異世界からやってきた俺たちは、慎重に慎重を重ねるくらいの気持ちでなくてはならないのだろう。ヤズーの態度を見ていればそれがよくわかった。

 

「あのさ。もし、よかったら君のこと、教えてもらえない? せっかく出会えたんだし、何か力になれることがあるかも」

「………………」

「この部屋はそれなりに広いけど、女の子がひとりで眠る場所としてはおすすめできないな。ちょっと寒すぎるし、寂しいよねェ?」

 そういいながら、ヤズーは羽織っていた上着を薄いネグリジェの彼女の肩に掛けてやった。

 ついでに、彼女の頬についてしまった煙突の灰を、指先でそっとぬぐい取ってやった。

 

 コイツ……すげェ。

 なんつースケこまし…… あのままホストのバイトやってたら、家一軒どころか、島とか買えんじゃね? コスタ・デル・ソルとか、そのまんま買えちゃうんじゃね?

 ああ、ほら、シンデレラちゃん、目ェうるうるさせちゃって。

 やっぱし可愛いなァ、俺に似ているだけあって。

 

 わずかな間隙の後……シンデレラちゃんは、小さな声でぽつぽつと語ってくれた。

 可愛がってくれた母親が亡くなってしまったこと。その後、父親が迎えた継母とその連れ子である姉達に日々虐められ、今では女中のように働いて暮らしていること。

 今度、お城で舞踏会が開かれ、子供の頃からずっと憧れていたこと……

 

 

 

 

 

 

「ゆるせーん!」

 俺は辺りもはばからず、大声で叫んでしまった。

「ク、クラウド……シーッ」

 ヴィンセントが慌てて止めるが、吹き出す怒りは収まらなかった。

「なんだよ、それっ! 継母つったって、お母さんになった人だろ? それなのに、アンタをこんな暗い部屋に押し込めて……どういうつもりなんだよ、そのババァ! 腹違いの姉さんたちも同罪だ!」

「待ってよ、それをいうなら、最大の問題は彼女の父親という人だよね。そもそもそんな女を後妻に迎えたんだから!」

「でもさ、彼女をこんな目に遭わせてるのは、継母と義理姉なんだろ!」

「それは表面に露呈している部分だよ。もっとも罪深いのは父親だと思うね。ああ、妻が亡くなったからって、一生独身を通せっていってるんじゃないんだよ?でも、前妻の子である彼女を守るのは父親の役目でしょう!」

 カダージュたちが、一生懸命彼女を宥めている間、俺とヤズーは彼女の不幸の元凶に言及した。

 なんだかヒートアップしちゃって止まらないカンジだ。

 

「……よし、わかった」

 とセフィロス。

「元凶がはっきりしているのなら、やりやすくていい」

 なにがですか? ヴィンセントも不安そうに彼を見つめる。

「とりあえず、その女の継母と義姉、そして親父をぶっ殺せばいいんだな」

「セ、セセセセ、セフィロス! ダ、ダメだ!そんなことをしては!」

 腕にしがみつくようにしながら、セフィの凶行を食い止めようとするヴィンセント。セフィってば、今すぐにでも行って、一刀両断してきそうなイキオイだ。なんか、この人も単純な男なんだ。

「あのさ、ムカツクのは俺も同じだけど、童話の中の話なのに、そんな血なまぐさい事件起こしてどうすんだよ、セフィ!」

「ああん? なぜだ? ようは最終的にめでたしめでたしになりゃいーんだろ。だったら、まずその障害を取り除くところからだ」

 アホか、この人。これは軍のミッションとかそーゆーんじゃないんだけど。

「ち、ちがう、それではダメなんだ。なるべく童話に忠実な形で……それが一番、彼女の幸福に沿ったものであるはずだから……」

「チッ、めんどくせーな! それじゃあ、どうすりゃいいんだ、ヴィンセント!」

 こういったデリケートな問題には無能同然のセフィロス。やれやれ、ケダモノですな、コレ。

 俺の愛しい人は、いつものくせで下唇に細い指を宛がって、しばらく黙り込んだ。

 もちろん、彼女にとってもっともよい方法を考えるために……