〜 銀 世 界 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<21>
  
 セフィロス
 

 

 

 

『……大丈夫かい?』

 そう訊ねてきた彼の声は、本当にオレを心配してくれていた。本社の上の連中が話しかけてくる、うわべだけの言葉とは異なっていた。

『…………』

『足、痛むんだろう? ……モンスターとの戦闘はかなり厳しかったから。君がいなければどうにもならなかったからね』

『ケッ! たりめーだ! おまえらと一緒にすんじゃねェ!』

『……きっとその疲れもあったんだろう。無理をしないほうがいい』

 ジェネシスは言った。

 ガキの頃から、こういう話の仕方が出来るヤツだったのだ。オレのプライドを慮り、かつ素直な言葉を引き出すためのセリフを見つけられる男だった。

『セフィロス……?』

『くそ……痛ェ…… さっき、挫いたみたいだ』

『無理して歩かないほうがいい。背中に乗って、セフィロス』

『…………』

『……大丈夫、キャンプまで戻れば、すぐに手当てしてもらえる』

『…………』

『先に戻った2ndの人たちや、救急部隊もいるはずだから。さぁ、早く背に乗ってくれ』

『……ふざけんな、そんなことできるかよ。ウゼーんだよ、おまえ』

『俺のことなら大丈夫だよ。戦闘ではほとんど君に頼りっぱなしだったから。これであいこだろう?』

『…………』

『急ごう、セフィロス。日暮れ前に山を下りてしまったほうがいい』

 そこまで言われて、ようやくオレは折れた。ジェネシスの背中に乗ったのだ。

 山道で、足場が悪いにもかかわらず、ジェネシスは淡々とマイペースで歩いていた。

 オレという荷物ひとつ担いでいるにも関わらず、息を弾ませるでもなく、あくまでもごく普通のペースでだ。

 時折、足は痛まないかとか、揺れるからちゃんと掴まっていてくれとか、どうでもいいことを話しかけてきたが、相変わらずオレは、ぶっきらぼうな受け答えで通していた。

 別にこの一件がきっかけでジェネシスと親しくなったわけではない。

 何年か一緒に仕事をして、徐々に普通の会話もするようになっただけだ。

 それでも、最初の頃の突っ慳貪なオレの態度から比べれば、クラウドたちが入ってきた頃は、ごく普通の仕事仲間といえるレベルにはなっていた。

 そしてジェネシス本人は、出逢った当時から今現在まで、まったく変わりなく、親しげにオレに接していた。

 

 

 

 

 

 

「セフィロス? ……セフィロス!?」

「え……あ、ああ」

 ……アホか、何をこの状況で物思いにふけっているのだ。

「セフィロス……?」

「ヴィンセントか……なんでもねェ。おい、中に入ってろといっただろ」

「だ、だが……何度声を掛けても全然…… それに本当に顔色が悪い。青白いのに頬の部分だけ熱を持っていて……」

 ヴィンセントは手袋を取ると、そっとオレの額に手を触れた。ふりほどいてやってもよかったのだが、そんな動作さえ億劫になっていた。

 ドクンドクンという心臓の音が耳の近くで聞こえる。なんだかひどくぼうっとした気分になって…… さっきまで寒くて仕方がなかったのに、今はあまり感じない。

「セフィロス……! セフィロス……!? ど、どうしよう…… ね、熱が……」

 おろおろとヴィンセントがうろたえる。

 ……バカ、おまえが泣いても状態がよくなるわけじゃないだろ。

「たいしたことはない…… そのうち下がる……」

 ありえないことをオレはつぶやいた。熱のせいでまともにモノが考えられなくなっていた。

 ヤバイな…… 

 昨日は何ともなかったのに…… さっき、同じ場所を痛めたのがそんなにまずかったのか…… ずっとくすぶっていた痛みが、熱を帯びて吹き出したような感じだ。

 痛い……痛い……

 頭もぼぅっとしてくる…… 横になりたい……

 だが、まさか……こんな場所で身体を倒すわけにはいかない。それこそ、雪まみれだ。

 ヴィンセントの居た洞穴まで歩いていくことすら、ひどい労力で…… オレは身体を抱え込んだまま、岩に座っていた。

 目の前が徐々に暗くなってゆく……

 

 ヴィンセントがなにやら、声を上げているのを目の端にとらえていたが、オレは何も言わなかった。言う力が残っていない。

 ……リユニオンしていない、普通の肉体はなんて脆い……

 たかだか、片足の負傷でこのざまだ。

 発熱なんざ、この前のインフルエンザ騒動の時以来だ……

 いや……つい、最近の話じゃねーか……情けない……