〜 銀 世 界 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<25>
  
 ヤズー
 

 

 

 

 

「寝たァ?」

 俺はジェネシスに声を掛けた。

 風呂場から水揚げしたときにも夢うつつで、ほとんど俺とジェネシスのふたりで彼を寝室まで運び込んだのだ。

 もちろん、身体を冷やさないように、ベッドに押し込んでから足の手当をした。今度は応急処置ではなく、しっかりと、だ。

 やはり、患部の腫れはなかなか引かず、しばらく動き回るのは控えてもらわなければならなそうだ。

 もっとも、あんな場所から落ちて、足首を挫いた程度で済んだのは、幸運と考えるべきだろう。

「足が痛まなければいいんだけどね」

「ああ、大丈夫、寝たみたいだよ。もともと半分眠っていたような状態だったからね。大分疲れも溜まっていたのだろうし」

「セフィロスの怪我は……大丈夫だろうか……? かなりつらそうに見えたのだが……」

「ええ、あの意地っ張りな人が、素直に負ぶわれていましたので……気になります」

 同じ顔をしたふたりが、キッチンのほうから顔を出してきた。

「心配ないよ。骨に異常はないようだし、発熱の原因は怪我と疲労からだろうから」

 ジェネシスは気軽にそう請け負った。

「ま、今回は名誉の負傷だから、みんな優しくしてやろうね。アハハハハ」

「もう……ヤズー……笑い事ではないではないか。もし、彼の身になにかあったなら……」

「だから、大丈夫だってば。それより、この異常気象がなんとかなってくれないとね」

 俺はため息混じりに窓の外を眺めた。 

 相変わらずさらさらと粉雪が舞っている。

「……まったくです」

 支配人さんも、思案深げに頷き返す。ノースエリアに店をもつ彼にとっては、切実な問題になるだろう。

「でもさ、あんまし深刻になってもどうしようもないからね。とりあえず、当分の間の食料は確保できてるし、薪も十分だ」

「ええ……それはとても心強いです」

「さてと。セフィロスも寝たことだし、俺たちもそろそろ休むことにしよう。風呂に入って暖まったから、皆元気になったが、身体は大分疲れているはずだ」

 ジェネシスが肩をほぐしながら、そう言った。

 彼は、あのセフィロスを背負って数時間の道のりを歩き続けたのだ。俺でも不可能ではないだろうが、想像しただけでも肩が凝りそうだった。

「あー、スープ美味しかった! ヴィンセント、ごちそうさま!」

「あ、ああ…… セフィロスに食事をしてもらえなかったな。一晩置き去りにされたのだから、ほとんどものを食べていなかったろうに……」

「今日は仕方がないさ、女神。彼も疲労困憊だったろうし、怪我のせいで熱も出ていたからね」

「そうだな…… 明日は彼の好物を作ろう……」

 ようやく納得した様子で、ヴィンセントはひとつ頷いた。

 

 

 

 

 

 

「さてと……セフィロスは眠り込んじゃってるから…… 支配人さん、よかったら今日は俺の部屋で一緒に休まない?」

 俺たちの使用している廊下続きの別棟は、広めの部屋ひとつを三人で使っている。

 もちろん、稼働間仕切りで仕切ってあるのでプライバシーは守られるが、日中はカダもロッズもほとんどここにはいない。

 今夜はすでにかなり遅い時間になっているので、カダとロッズは眠りについている。

 主に俺が使っている部屋には、セミダブルのベッドとソファベッドがあるのだ。

 たいていはカダージュとセミダブルで眠るのだが、今日はロッズと一緒の部屋で寝てしまっている。俺より先に寝るときはいつもそうだから。

「君の部屋で? よいのですか?」

「うん。カダたちはとっくにおねむだし。セフィロスも明日まで目覚めないだろうからさ」

「……迷惑にはなりませんか?」

「まっさか」

 そう答えると、彼はフッと笑って、

「ありがとう」

 と言ってくれた。

 

 おのおのがそれぞれの部屋に引き取る。

 ヴィンセントは最後まで、セフィロスに食事をさせられなかったのが心残りだったようだが、致し方がないとあきらめ、ようやく席を立ったのである。