〜 午 睡 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<98>
  
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

「ウオォォォッ! グオォォォーッ!」

 巨大な武器を振り上げ、ふたたびヴァイスが咆吼した。

 そして次の瞬間、ガガガガガッという機関銃の音が鳴り響く。

 そこら中の壁面に、弾丸の虫食いを残し、流れ弾に当たったのか、ハイデッカーが膝をついている。

「お、おのれぇぇ! このバケモノどもが! このわしを……このわしまでも……!」

「戦闘の邪魔ですよ。どきなさい」

 この上なく冷ややかな声が、彼の脳天から降り注ぐ。

 そのままネロは、ハイデッカーの肥満した身体を鬱陶しげに蹴り飛ばした。

 動作は軽く足を掛けた程度だが、DGソルジャー……しかも、ツヴィエートの膂力は並ではないのだ。

 ハイデッカーの肥満体は、まさしくボールのように吹き飛ばされ、壁にぶちあたるとだらしなく伸びてしまった。

「……やれやれ、やっと邪魔ものがいなくなりましたね、兄さん」

 まるで子供のようにネロは微笑み、ヴァイスの側へ歩み寄った。とうてい正常とは言い難いヴァイスも、ネロのことは同類と認識しているのか、手を出すような真似はしなかった。

「まだ、本調子ではないのですね。可哀想に…… でも、僕のことはわかりますね?」

「……あぁ……うぅ……ネ、ネ、ロ……」

「ええ、そうです。そうですよ。貴方の弟のネロです」

 ひどく嬉しそうに、ネロはヴァイスの手を取った。

 ……まるで奇妙な舞台劇を観させられているようだ。

 さきほどまで、ハイデッカー、ホランダーとDGソルジャーを相手に、死闘を繰り広げていたのに、ヴァイスが甦ってからは番狂わせばかりだ。

 首謀者のハイデッカーは、もはや自ら身を起こすことさえできぬ有様だし、ホランダーは死んだ。もはや我らが闘う理由などなくなったのに……

「ネ、ネロ…… あぁ〜……うぅ……」

「兄さん、これからは明るい場所で、幸せに生きていきましょう。もう、あの暗いディープグラウンドに戻る必要はありません」

「うぅ…… あ……ぁ……」

「きっと明るい世界のほうが、兄さんの身体にもよいはずです。我々はすでに完全な肉体を有している。あの混沌とした地下世界へ戻る必要などありませんよ」

 声を励ましてネロが言った。

 

 

 

 

 

 

「おい、ちょっと待て、テメェら!」

 割って入ったのはセフィロスであった。この展開に相当苛立っているのが見て取れる。

「勝手なこと言ってんじゃねェ! なにが明るい世界だ! どんな理由があれ、おまえらがそこのヒゲオヤジに協力して、人質を取ったり、オレ様に剣を向けた段階で敵確定なんだよ!」

「セ、セフィロス……」

「……セフィロスのいうとおりだ」

 そういったのはツォンであった。

「君らがどういった存在かは知らないが、好き勝手をさせるわけにはいかん。ホランダーにせよ、ハイデッカーにせよ、それぞれにふさわしい処分を考えるのは神羅カンパニーだ。勝手に手を下して殺して良いという法はない」

「……言いたいのはそれだけですか?」

 冷ややかに応じたのは、やはりネロであった。

「けっこう。僕らも最初から、あなた方に従おうとは思っていません。我々にとってはただの障害物なのですから」

「ハッ、それなら話は早い。正々堂々と殺し合いといこうぜ。……なぁ、変態野郎ッ!」

 言うが早いか、セフィロスが跳躍した。

 ネロとヴァイス。同じ位置に立っているふたりに向かって斬りつける。

 それが合図となり、我々はふたたび武器を手にしたのだ。