LOVELESS
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<16>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

 

 

 

 

「いっただきま〜す! わー、今夜もごちそう!」

「ね? ヴィンセントのお料理スゴイでしょ? 僕の言ったとおりでしょ!?」

 無邪気に料理を誉めてくれる、ロッズにカダージュだ。ふたりはいつでも私の作ったものをよく食べてくれる。

「ああ、本当だ。参ったなァ」

 白い頬を上気させ、ほぅと大きく吐息するジェネシス。

「どうしよう、ますます君を好きになってしまいそうだよ、女神」

「ピッピー! イエローカード! カード三枚で退場だから! レッドカードなら即退場だからね!」

「クラウド、よしなさい」

 立ち上がって叫ぶクラウドを戒めるが、気の強い彼はプンと不満げに頬を膨らませる。

「アッハッハッ、ごめんごめん、チョコボ。彼の腕前に感嘆してしまってね。食事前に退場なんて悲しいよ」

「さ……どうぞ、ジェネシス。君の口に合うとよいのだが……」

「ああ、すごく美味しそうだ。いただきます」

 そういうと、きちんと両手を合わせて挨拶をした。いわゆる洒落た伊達男風の彼が、そんな動作をするのが意外だった。似つかわしくない……ということではなくて、むしろ好ましく感じた。

「へぇ……これはすごいや」

 彼は湯気の出るスープを口に含むと、深く吐息した。今度は「溜め息」ではないと最初から私にもわかった。

 得意のコンソメスープにしてよかった……

「これだけ澄んだ、味わい深いスープ、初めてだよ。コンソメスープは基本中の基本だけど、シンプルなものほど難しいからね」

「ジェネシス、料理評論家みたいな誉め方!」

 ヤズーがケラケラと笑った。

「俺、けっこう食い道楽なんだ。コスタ・デル・ソルでも美味い店はチェック済みだしね。ああ、でも、それらのどこよりもずっとおいしいよ」

「そ、そんな……それはたまたまスープだから…… わりとよく作るものだし……」

「言っただろう? シンプルなものほどむずかしいんだよ」

 そういって微笑むと、彼は次から次へと料理に手を伸ばしてくれた。まさしく「おしゃべりの時間は終わり」というような勢いで。

 

 

 

 

 

 

 我が家は食事前と半ば過ぎはにぎやかだが、食べ初めはひどく静かになる。皆目の前の食事に集中してしまうのだ。

 やはり男性六人だから、食べ方に勢いもある。

 ヤズーなどは優雅に食べているが、クラウドやセフィロスに至っては、ひたすら「喰う」ことに熱中する。カダージュやロッズは元からそういうタイプなのであろうが。

 ナイフやフォーク、スプーンの触れ合う音。

「おかわり!」という掛け声。

 お茶の香り……

 一陣の嵐に似た夕食が一段落すると、誰からともなく口を開く。やはりそれはカダージュやロッズ、そしてクラウドなどが多い。

 ヤズーは食卓の世話や、子供たちの話に相づちを打つ程度だ。セフィロスはもともとあまりしゃべる人ではない。だが、今日はいつもよりさらに寡黙で…… その様子がひどく気になっていたのだが、直接声を掛ける勇気はなかった。

 と、そんなことを考えていたときのことだ。

 不意に思いを馳せていた当人が口を開いた。セフィロスがジェネシスに、だ。

「……おい、ジェネシス」

「ん? なに?」

 食後のお茶を啜りながら機嫌良く応えるジェネシス。セフィロスの物言いは相変わらず無愛想なのだが。

「……おまえ、今、コスタ・デル・ソルに居ると言っていたよな」

「ああ、そうだよ」

「ねぐらはどこだ?」

「ノースエリアに仕事場兼のマンションを借りてる。いつでも遊びに来てくれよ」

 詰問するような物言いなのに、眉を顰めることもなく、ごく普通にジェネシスは答えてくれた。

「お独身様でございますか?」

 とクラウド。当てつけがましい敬語。まったくどうしてこんな口の聞き方をするのだろうか。

「ああ、残念ながら」

 ひょいと格好よく両手を開いて見せる。気障な仕草だが、彼がすると全く嫌みを感じない。

「やれやれ、エロ詩人がひとり暮らしか?」

 セフィロスがナプキンで口元を拭いながら嗤った。

「ひどいなぁ、その言い方はないだろう、セフィロス」

「コスタ・デル・ソルねェ。おまえのような遊び好きな男には似合う土地柄ではないと思うが」

「その言葉はそっくりそのままお返しするよ、セフィロス」

「ケッ」

「俺にとってはこの土地にやってきたことが運命だと思っているよ。ずっと憧れていた女神に逢えたのだからね」

「え……い、いや……その……私は……」

「ピッピー! イエローカード二枚目!」

 会話の流れを遮り、クラウドが警告を発する。

「ねぇ、兄さん。イエローカードとレッドカードってどう違うの?」

「イエローカードは不穏な発言。レッドカードはお触り有り」

「嫌だァ、オヤジじゃないんだからさァ〜、よっぽど兄さんのほうがヤラシー感じだよ」

 的を射たヤズーの発言に、思わす同意の頷きを返してしまった。

「アッハッハッ、本当に信用がないんだなぁ。神羅にいた頃は、チョコボとは仲良くさせてもらったはずだけど?」

「クラウドだってば! 過去は過去。今は現在。ヴィンセントに手ェ出そうとするヤツは誰が相手でも許さないの!」

「クラウド……!」

 ズケズケと言ってのける彼の腕に触れ、発言を止めようとするが、それはまったく無駄らしかった。

 クラウドは何の誤りもない!と言わんばかりの表情で傲慢に面を上げているのだから……