Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<26>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「水晶の谷までもうすぐだな」

 水晶と石英の混じった螺旋状にうねる道……この辺りになると、街よりも気温が低いのだろう。寒くは感じないが、ひんやりと涼しげな空気が肌にまとわりつく。

「セフィロス、寒くないかい?」

「オメーはいちいち小姑みたいに……」

「昔から、おまえは外気の温度に頓着がなさすぎるんだよ。それでよく鼻風邪を引いていたじゃないか」

「ガキの頃のことをいうな」

「おとなになってからも変わらないだろう?」

 ああいえば、こういう。

 ジェネシスの無駄口にうんざりしていたところに、ちょうどいい相手があらわれた。

 オレたちの行く手を阻む巨体……

 

 造形は……そう、アルケノダイオスのような巨大型だ。

 だが、妙にカラフルな色合いで、失笑してしまう。ハートレスとやらは、真っ黒なのに、なぜかノーバディは、様々な色合いのモノが多いのだ。

 

 グオォォォォォ……ッ!

 

「クソッ……! もう、再生しているのか!」

 レオンがチッと舌打ちした。

「セフィロス、そいつは、一月前に、街の自警団と俺たちで倒したんだ。巨大型ほど再生が遅いんだ。だが……もう……」

 リクが低くつぶやいた。

「今はソラが……いないのに。まだ、目覚められないのに……!」

 くやしそうに奥歯を噛む。

「まぁ、待て。そういきり立つな」

 オレはリクに声を掛けた。

「そうそう。ザコ相手に気を立てては身が持たないよ。そのソラくん……だったね。彼が鍵を掛けに戻ってくるまでは気長に頑張らないといけないのだから。……さ、いこうか、セフィロス」

 ジェネシスのお終いの言葉はオレに向けられたものだった。

「ふたりもいらねーと思うがな。まぁ、いいか」

 

 

 

 

 

 

恐竜型のモンスターは、ふたたび、

『グオォォォォォ』

 と、雄叫びを上げると、ズシンと向きを直した。

 跳びかかってきたオレとジェネシスに気付いたのだろう。

 金具で出来たようなギザギザの牙が、オレたちを迎え撃つように大きく開かれる。

 

 ……なるほど、ノーバディというのは、多くの個体が金属並の硬度を持つらしい。この恐竜もどきも例外ではなく、おのおのの関節が、バラバラになる作りになっている。

 レオンに教えられた急所……そう、歪んだハートのマークだ。そいつはこの巨体の脳天にある。

 なるほど、この化け物を一般人がしとめるのは至難の業だろう。

「ジェネシス、尾に気をつけろ!」

 太くて長い尾っぽは、退化した両手の代わりに、自由に動く。さすがのオレでも、こいつでもろに直撃されれば、ひとたまりもなかろう。

「了解。俺がおとりになるから、一撃でしとめてくれよ、セフィロス」

「言われるまでもねェ!」

 ジェネシスが、ヤツの胴回りを足場に跳躍する。そのまま肩に乗り、黒剣を突き刺した。

「グゥオォォォォォ!」

 大きくのけぞったその瞬間。

 長刀正宗を、脳天から垂直にその巨体に食い込ませた。

 

「オォォォォォ」

 自重と慣性にまかせた力で、頭から真っ二つに化け物を割ってやる。

 

 頽れる巨体から刀を抜き、両側にそそり立った水晶に向かって跳ぶ。ジェネシスのヤツもとっくに足場を確保していた。

 

 レオンとリクが駆け寄ってくる。

 リクの白い肌が昂揚している様が、なんとなく昔のクラウドを思わせた。

「……セフィロス、すごい。それなのに息も弾んでない……」

 彼がつぶやいた。

「たりめーだ。そこらのザコを片付けて、さっさと城へ入るぞ」

 オレがそう返事をしたときだった。

 

 アーチ型に張り出した水晶のてっぺんから、ギュウゥゥゥンという楽器の音と、パチパチと気の抜けた拍手が聞こえた。