Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<43>
 
 セフィロス
 

 

 

 

「ただいま! セフィロスもジェネシスも早かったんだな」

 オレのよく知るクラウドとそっくり同じ顔をした、ホロウバスティオンにいる『クラウド』が帰ってきた。

 『存在しなかった世界』にいくためには、この最大の難関を突破しなければならない。

「やぁ、おかえり、クラウド。目的のものは入手できたらしいからね。リクがマーリンハウス?とやらに持っていってくれたよ」

「なんだ、リクはいないの? いろいろお菓子買ってきたのに」

「夕食のしたくは済んでいるからね。きっとそのお菓子の出番は、食後のデザートだな」

 ジェネシスの野郎がついぞ変わらぬ態度で応対している。

 

(……言っておくがな、レオン。まずはこの難題をクリアしなきゃ、何もできんのだからな)

(わ、わかっている! 時は一刻を争うんだ)

(ま、いずれにせよ、腹ごしらえが先だ)

(……アンタはもう少し、もうひとりの『セフィロス』を思いやってくれ。クラウドには俺から言うが、アンタも上手く話を合わせてくれよ)

(わかったわかった、ほら、早くメシしようぜ)

 

「レオン? どうかしたの?」

 不思議そうに顔を突っ込んできたクラウドに、レオンは危うくサラダボウルを落としそうになる。

「いや……その……いろいろあってな。とにかく夕食にしよう。クラウド、シルバーを出しておいてくれ」

「うん……わかった」

 不思議そうな面持ちになるが、素直に言われた作業をおこないに、ダイニングに戻って行った。

 レオンもたいそうな口下手で、ウソの下手くそな男だが、昔のオレ自身もあまり口が上手かったとはいえない。

 玄人相手や遊び相手には、いくらでも歯の浮くようなセリフを言ってやれるのが、幼いクラウド相手に、告白ひとつまともに出来なかったことは、苦いような甘いようなおかしな味付けで、今も腹の奥底に潜んでいる。

 ジェネシスの野郎が、ときたま当時のことを持ち出して笑い話にするのが、ひどく腹立たしく感じるのはオレ自身に自覚があるからだろう。

 

「ったく……テメェはとことん言葉の下手くそな男だな」

 と、オレはレオンに言ってやった。かつての自身にいうような心持ちでだ。

 

 

 

 

 

 

「えぇッ!? なんで……そんな急に……」

 案の定、クラウドが眉を跳ね上げて驚いた声を出した。

「いや、急に……というわけではない。だが、もう決めたことだ」

 もごもごとレオンが独り言のように応える。

「だって、レオン、今朝までそんなこと一言も……」

「まぁまぁ、チョコボっ子……いや、クラウドくん、落ち着いて」

 オレが黙っていても仲裁役はジェネシスに任せておけばよさそうだ。

 

「城の状態に鑑みるとね、どうもその『存在しなかった世界』とやらに行かざるを得ない状況らしいんだ。アクセル以外にもうひとり、13機関に出逢ったけど、体よく逃げられてしまったしね」

「13機関に……?」

「そう、デミックスとかいったっけ、レオン?」

「え……あ、ああ」

「まぁ、初日のアクセルにせよ、デミックスにせよ、結局は彼らの本拠地に身を潜めてしまう。いくら、ホロウバスティオンで雑魚連中を倒しても、意味がないんだよ」

「…………」

 『クラウド』が、神妙な面持ちになる。

 

「そうこうしている間にも、連中の差し向けたハートレスやノーバディはどんどん増殖していくだけなんだろう。大元を絶たなければ、この街にももっと多くの被害が及ぶだろう」

「ジェネシスの……いうことはわかるけど……でも……」

 『クラウド』は単純な子だ。

 おそらく現段階では、こちらの世界の『セフィロス』が、今回の一件関わっているとはまったく考えていないだろう。だが、自分を置いて、レオンが危地に乗り込むということが不安でたまらないのだ。『セフィロス』のこと云々は置いておいても、いずれは敵の本拠地を叩くしか方法はなかったとしても、いきなり言い出されて途惑っている。おまけに、泣けてくるほどレオンの状況説明の仕方が下手くそなのである。

 

「クラウド、おまえだって、今の状況を良しとはしていないんだろう?街の連中が襲われる心配を、し続けなければならない日々を送るのは不本意なはずだ」

 オレは横から口を挟んだ。

 レオンは腕組みしたまま聞いている。……ったく貴様はどこぞの頑固親父か!

「セ、セフィロス……うん、それはもちろんだよ。みんな、日中は影が出来るのを怖れて外に出ることさえ、ままならないんだから……」

「おまえもうすうす気付いているだろう。あの城は連中にとっての『中継地点』でしかない。人間の心を奪うためのな」

「…………」

「13機関の頭領は、『存在しなかった世界』とやらで、キングダムハーツの研究を続けているのだろう。そしてそれが完成するまで、この世界の人間が心を奪われ続けていく」

「セフィロス…… うん……でも……『存在しなかった世界』のことは、ほとんど情報がなくて……」

「そいつも了承済だ。レオンにはオレとジェネシスが着いている。それに案内役としてリクも一緒だ。おまえも剣士ならば、全力でこの街を守り抜け。それが男ってもんだろ」

「うーん、さすがに『男の中の男』のセフィロスのセリフには説得力があるねぇ。いやもう、『漢』ってカンジ? というわけで、クラウド。明朝の出発を笑って送り出してくれ。大丈夫、きっと俺とセフィロスは、このためにホロウバスティオンにやってきたのだから」

 という、ジェネシスの説得に、ようやくクラウドは頷き返してくれたのであった。