Radiant Garden
~コスタ・デル・ソル in ストライフ一家~
<66>
 
 セフィロス
 

 

「ぐあぁぁぁぁッ!」

 サイクスが断末魔の雄叫びを上げる。

 そしてグワシャンという、なにかが割れる音……

 同時に巨大な剣……奴の背後にあったクレイモアは霧散して消えた。

 終わったのだ。

 

 すぐに背後を振り返ると、みごとジェネシスたちが『セフィロス』を捉えていたガラスケースを破壊したところであった。

 さきほどの破壊音は、サイクスの剣が砕けるのと、ガラスケースが割れた音が重なったものであったのだ。

「セフィロス!」

 ジェネシスが、オレのほうに向かって声を掛ける。

 力の解放を元に戻し、オレはいつもと変わらぬ姿で、彼らの方へ駆け寄った。

「セフィロス、久々に見たよ、君の美しい姿を」

 ジェネシスの野郎が、気色の悪いセリフを吐いた。

「ケッ、13人もいる機関員相手に、本気を出さなきゃ勝てないなんざ、恥だ、恥」

「あの男は別格だろう」

 どうやらジェネシスも気付いていたらしい。静かなる狂気……サイクスの纏う、異様な『気』に。

「まぁいい。そこのボケナスが無事なら、後はゼムナスをぶっ飛ばして、兵器を破壊するだけだな」

 オレがそう言い終える間に、レオンがガラスの破片などものともせずに、『セフィロス』の側へ駆け寄っていった。

 

「『セフィロス』!『セフィロス』!大丈夫か」

「レオン、ガラスの破片に気をつけてくれ」

 リクの声も聞こえる。

「『セフィロス』!」

「くっ……」

 苦しげなうめきは『セフィロス』のものか。

「『セフィロス』……ダメだ、動くな」

 そういうとレオンは、強引に『セフィロス』を抱き上げた。遠目に見ているオレだが、さすがに心臓に悪い。

 まるで自身が、レオンの腕の中にいるような気分になるからだ。

「気持ち悪ィ……」

 ジェネシスに怪訝な顔されながらも、思わずひとりつぶやく。

「『セフィロス』、怪我は……」

「……くっ……はな……せ」

 『セフィロス』が低く、だがするどくそう言った。

「何を言っているんだ。ここはガラスの破片だらけだ。足を切ってしまう」

 長い貫筒衣の下は身一つなのだろう。『セフィロス』は裸足のままであった。

 

 

 

 

 

 

「いいから……放せ……!」

 そう言って身じろぎするがやはり弱っているのに違いはないようだ。いくらレオンが渾身の力で抱きしめたとしても、オレと同じ体格の『セフィロス』が本気で抵抗したならば、たやすくその戒めをほどくことができようはずだから。

「『セフィロス』、おとなしくしてくれ。気を落ち着けて……やつらに何をされたんだ。苦しいのか?どこか怪我を……」

 『セフィロス』の長衣の裾が、大きく引き裂かれているのが気になるのだろう。レオンは彼が無傷であるのかひどく心配しているのだ。

「……私を見るな……!」

 震えを押し殺した声で、レオンに告げる。

「触れるな……見るな……ッ」

「『セフィロス』、もう大丈夫だ、とにかく落ち着いてくれ」

 必死に言い聞かせるレオンだ。       

 オレから見ると、ひどく気分の悪い構図だ。そもそもあいつがレオンに抱き上げられている姿を眺め続けるのがいたたまれない。

 

「おい、レオン、代われ」

 コートを脱ぎながらオレは、必死の形相のレオンにそう告げた。

「な、なに……」

「だから代われっつーんだよ」

 レオンの腕の中の『セフィロス』に、そのコートを引っかけると、やや乱暴に奴を奪い去った。

「あ、セフィロス」

「いいから、こいつのことはオレに任せろ。貴様も働いてこい」

 くいと顎を上げて、スクリーンの向こうで怒声を上げているキチガイ科学者を指した。

「だ、だが……」

「同じツラのやつが、男に抱かれてんのを見るのは気色が悪ィんだよ」

 吐き出すようにそういうと、レオンはひどくわかりやすく頬を上気させ、

「お、俺はそんなよこしまな気持ちで……」

 などと言い訳してくる。

「とにかく当初の目的を忘れるな。オレもこいつを置いたら、すぐに後を追う」

 そう言い置いて、ガラスの破片のないほうへ足を向けた。