Snow White
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
 
 ヴィンセント・ヴァレンタイン
 

 

 

「うちの者が失礼な態度をとって、誠に申し訳ない。これも私の身を案じるが故と見なし、お許しいただきたい」

「あぁ、いや、別に」

 王子はむしろ私に謝罪されたのが意外だったという様子で、あいまいな返事をした。

「……ええと……君たちは彼の関係者……だったな」

「なんスか!? その関係者って!? 超他人行儀な表現しないでよ! ヴィンセントは俺の恋人で、一緒に住んでいる人なんだから!!」

「クラウド!」

「こーゆーコトは事前にはっきり言っておいたほうがいいんだよ!」

 気の短い彼は、まるで小型犬がシャーと牙を剥くように、大声で怒鳴った。

「ふむ…… つまり君たちはこの人の護衛と……そのつもりで城まで付いてきたのか?」

 あくまでも静かな物言いで訊ねる王子。その冷静な物腰も、クラウドには気に入らないらしかった。

「たりめーだろッ! いくら事情が事情とはいえ、ヴィンセントをひとりで、アンタのところになんか行かせられるかよ!」

「ちょっと兄さん、言い過ぎ。別に王子様には何の非もないでしょう?」

「なんだよッ、ヤズーまで!」

「ああ、ええと、ゴメンなさいねェ。おそらくこんな真似をした事情は、彼から聞いていると思うんだけど……」

 聡明で機転の働くヤズーが、上手い具合に話を引き受けてくれる。

 私はクラウドに気づかれぬよう、ホッと胸をなで下ろした。

「……ああ、まこと摩訶不思議な話ではあるが、信じられる。この人は嘘を吐くような人物ではないだろうから」

「え、あ……、ありがとう……!」

「あなたは人を見る目がある人のようだね。そう、ヴィンセントの言ったことはすべて事実なんだよ。だから俺たちも困惑している。なんとしても元の世界に戻らねばならないからね」

「…………」

 王子はヤズーの言葉に、無言で頷き返した。

「で、まぁ、俺たちが強引にここに同行したのは、もちろんヴィンセントの身柄が心配だということもあったわけだけど、あなたと話をしたくてね」

「……? 私と?」

「そう。やはり為人を知っておきたかったから。同じコトを説明するのでも、タイプ別で言い方を考えないとね」

 ヤズーはまるでケーススタディを説明するようにそう言った。

「でも、ヴィンセントの話をすぐに信じてくれたなら本当に助かる。あなたの言うとおり、彼は真実のみを誠実に話しているんだよ。だから、俺たちに協力してもらえないかな」

「……具体的には?」

 王子が先を促した。

 

 

 

 

 

 

「敵国の居城の見取り図くらいはあんだろ? それから兵力がわかるのなら参考に聞いておきたい」

 ずっと黙っていたセフィロスが、実戦の話になった段階で加わってきた。

「……それはそうだが…… さすがにおいそれと重要機密を開示するわけには……」

「オイオイオイ、話聞いただろ? 将来的にはテメーの嫁になる女を助け出すためなんだぞ? わかってんのか?」

「……その話だが……」

 王子はため息混じりに、言葉を挟んだ。

「……その女性が私の妃になるのは、確定事項なのだろうか?」

「……は?」

 と、私たち三人の声が揃ってしまった。

 まさしく虚を突かれた形だった。だって、白雪姫が王子と結ばれるのは、必然的というか……もはや暗黙の了解であって……

 ああ、いや、確かに、童話を読んでいる我々には、ごく当然のことかもしれないが、当事者にとってはまだ未知の女性だ。悪気はなかったが、頭から断定的な発言をしてしまったのは、無神経だったかも知れない。

「あ、あの……無遠慮な言い方をしてすまない。だが……彼女は心清らかな乙女だ。やさしく思いやり深い女性なので、きっと君も心引かれると思う」

 私はなるべく押しつけがましくならないよう、言葉を選んで話してみた。

 背後でセフィロスとクラウドが、

『オレらも逢ったことねーけど』

 などとよけいなことをつぶやいているが……

「今の段階で、そういったことについては、あまり深く考えないほうがよいと思う。ただ囚われの身の少女を救うのに、ほんの少し手助けをしてはもらえまいか?」

「……私とて騎士道精神は持ち合わせている。あわれな乙女を救い出すのに異論はないが……」

 王子はそこまでいうと、やはり口を濁してしまうのだった。

「なんだよ、はっきりしねーな。なんか文句あんのかよ。ウザイんだけど?」

 クラウドが口を尖らせて抗議する。どうして、この子はこんなにケンカっ早いのだろうか。

「……その娘が救われれば、貴方の代わりにその者が私の元に参るのだろう?」

 ジェネシスによく似た面立ちを、困惑した風にゆがめた。

 王子の真っ直ぐな視線に晒されて、私はひどく困惑した。