〜 Amusement park recreation 〜
〜神羅カンパニー・シリーズ〜
<10>
 
 セフィロス
 

 

 

 

20:30

 

「じゃ、セフィロス。おれたち行くね。大変だけど、明日も頑張ってね」

 わざと暗鬱な表情を作って溜め息を吐いてみせると、クラウドは案の定、困った様子で小首を傾げた。

 まだまだ少年の姿態のままのクラウドには、そんな仕草が興奮するほどよく似合う。

「セフィ…… セフィの好きなお菓子買って帰るから。会議の後、あんまりお酒飲まないでいてね」

「……ああ」

「そ、それから……そ、その……来週のおやすみは、ずっと一緒に居ようね?」

「……ああ」

「ねぇ、セフィ、そんな顔しないで。何だか、おれ……」

「クラウド……私は……」

 オレを覗き込む、クラウドの頬に手を伸ばそうとしたとき、無遠慮な文句が間に割って入った。

「いやいや、気にすんな、クラウド。この人はただ駄々捏ねて、おまえの気を引きたいだけ。明日の合同会議が嫌でふてくされてるだけだ」

 この野郎……!!なんてムカツク、ザックス……!!

「だいたいさァ、セフィロス。副社長臨席の合同会議なんざ、参加したくたってさせてもらえない、部門長も多いらしいぞ」

「だから何だ! オレ……私は一度だって……」

「だから! 確かに親睦会的な要素は強いかもしれないけど、軍人としてだけじゃなく、社内での重要人物として認定されてるってことじゃねーか。それってすごいことなんじゃないか?」

 コクコクと隣のクラウドが、オレの気を取りなすようにせわしなく頷く。

 

 

 

20:40

 

 ふぅとため息を吐き出し、私は言葉を続けた。

 会話を途切れさせると、すぐに、クラウドが部屋に帰ってしまうだろうから。

「私は別に、上層部の連中に好かれようとは思わない。今はこの場所の居心地がそう悪くもないから、神羅に居るだけだ」

「セフィ……そんな言い方……」

「もちろん、おまえがここの社員だからだ、クラウド」

 額に掛かる、金色の前髪を指先で梳き、ザックスのときとは声のトーンも艶も変えて、可愛い恋人にそう告げる。

「そして、その大切なクラウドが、私と同じソルジャーを目指している……嬉しいことだ」

「セ、セフィ……」

「ここに居なければ、おまえに逢えることもなかった。そういう意味合いでは、この会社に感謝しているとも言えるな」

「やれやれ、全部、クラウドがらみかよ」

「当然だ」

 あっさりとオレは認めた。事実なのだから。

「ハイハイッと。じゃあ、俺たち行くから。明日、ご苦労だけど、よろしく頼むな。アンジールを困らせることだけはしないでくれよ」

「ケッ……エラソーに何様だ、貴様」

 ザックス相手に口が悪くなってしまう。っといけない、今はクラウドも一緒に居るんだ。

「ザックスさんだよ。じゃな、セフィロス」

「じゃ、おやすみなさい、セフィ。……来週は一緒に居ようね、約束だよ?」

 はにかんだ笑みを浮かべつつ、私のために、食堂で口に出来る、精一杯のセリフを言ってくれるクラウド。

 いつまでもふくれているのは大人げないので、微笑み返し、手を振ってやった。

 まぁ、ぶっちゃけ、俺の予定では、今週も明日も一緒に過ごすつもりだから、「来週も」、であるのだが。

 

 

 

 

 

8:30

 

  そして会議当日。

 

 起床。

 会議は午前10時近くに始まるので、この時間で充分なのだ。

 食欲もないし、どうせ、クラウドと一緒になってから、何か食うだろうから、朝飯は適当にルームサービスを頼む。

 いやらしいが、こちらの特別棟に住まう社員には、ルームサービスがあるのだ。

 もっとも、オレは利用することはほとんど無く、普段はクラウドと一緒に社食で食う。

 見てくれだけは綺麗に整えられた、味気ない朝食を済ませ、いざ出陣だ。

 

 部門別合同会議……いや、オレにとってのミッションは、そこから巧みに脱出し、テーマパークのクラウドと、人知れず合流すること……!

 これなのだ! なんと血沸き肉踊るミッションであろうか。

 

 

 

9:30

 

 会議が始まる前に、レノのヤツを掴まえる。

「おい、レノ」

「よぅ、セフィロス。……アンタ、楽しそうだな」

「バカをいうな。楽しみはまだ始まっていない。クラウドと合流して初めてだ」

「へいへい」

 赤毛タークスはたよりないが、今日一日は大切な協力者だ。

 もちろん、その見返りはきっちりする約束をしたし、野郎もオレを裏切る勇気なんざないだろう。

「……なぁ、アンタさ、ホント、マジでやる気? っつーか、ぶっちゃけ本気?」

「当然だろ。今さらつまらんことを聞き返すな」

 素っ気なく返事をした。オレの頭の中は、もはやクラウドをつかまえた後の計画で埋め尽くされていたからだ。

「……まぁ、その……確かに、退席してもおかしくはない理由付けだとは思うけどよ…… ただ、アンタってキャラがな〜 一番そういうこととは縁遠そうだぞ、と……」

「ブツブツ言ってるな! 貴様との間にはすでに取引が成立したはずだ!」

 一言の元に却下するオレ。レノも、

「まぁ……なァ…… ただ、あんまし元気そうにしてんなよ。アンタって、もう頑健っつーか、精力的つーか……」

 と、しぶしぶながらも頷き、口の中でもごもごと何やら文句を言っていた。

 レノには、前々から行きたかったそうな、一見お断りの置屋……ああ、まぁ、いわゆる花柳界の……いや、別に遠回しに言う必要もなかろう。

 ヤツには『高級娼館』的な場所を紹介してやったのだ。シモジモの者が容易に入り込めるような場所ではなく、逆に客を選ぶのがこの手の店だ。

 昔取った杵柄……ではないが、若かかりし頃、適当に遊んでいたオレである。そこそこ、知った場所もあるのだ。まぁ、男なら誰だとてそういう時期はあるだろう。

 後腐れが無く、上玉の揃った高級店は、オレのような人間には、それなりに馴染みがよかった。

 だが、クラウドを側に置くようになってからは、足を向けることもなくなった。……たまにしか。

 ああ、いや、いかん。あの子には一切内密だ。オレ……私は常に紳士でなくてはならない。