〜 修習生・研修旅行 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<5>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

「お菓子よーし!ジュースよーし!UNOよーし!」

 ただでさえ大きな兵士用リュックをパンパンに膨らませて、クラウドが声を上げる。

 いよいよ旅行当日だ。集合時間よりも一時間も前に準備を終え、クラウドは

「おいおい、クラウド。別に持っていくなとは言わねーけど、菓子なんかはそんなにいらなくね?」

「えー、どうしてよ!研修旅行だよ? 旅行なんだよ? それに甘いものは疲れたとき、頭動かすのに役立つし!」

 もっともらしいセリフをエヘンと胸を張って宣うクラウド。本当にまぁ、お子さまだ。

「いや、だから分量を考えろっていってんだよ。あーあ、チョコレート・ボンボンなんて、荷物の中でつぶれちまうぞ」

「あー、そっか。じゃあ、仕方がない、ボンボンたけ食べよ。はい、ザックス、あーん」

「はいはい。あーん」

 丁寧に銀紙を剥いたそれを、俺の口に入れてくれる。

 うおっ!これ、洋酒が入っててマジで美味い。

「ザックス、おいしい?」

「ああ、あんまりこういうのは食ったことがないけど、わりと美味いもんなんだな」

「あ、やっぱ?そうでしょ?」

 にこにこと笑いながら、クラウドもひとつ、ポイっと口に放り込んだ。

「これ、セフィロスさんがくれたんだよ。『おまえの口に合えばいい』って言って」

「ブッフォォォォ!」

 思わず俺は噴いていた。

「きゃっ! なに、ザックス!どうしたの? あーあ、口の周りチョコだらけ」

「いや……毒が入ってるんじゃねーかと思って……」

「何言ってるの。セフィロスさんに失礼だよ!」

 ぷんと唇を尖らせて抗議するクラウド。

「きっとこのチョコボンボンも、一個がすご〜く高いんだろうなぁ。包み紙だってただの銀紙じゃなくて、ろうけつ染めのデコレーション・ペーパーだもんね〜。セフィロスさんの選んでくるものって綺麗で美味しいものばっかりだし……」

 クラウドはいかにも感心した面もちで頷く。そして少しだけ困ったような顔をして、俺の服を引っ張った。

「ねぇねぇ、ザックス」

「あん? あー、そろそろ時間だぞ。便所はいいのか?」

 腕時計を確認してクラウドに声を掛ける。

「さっき行ったもん。ねぇってばザックス……」

「なんだよ?」

「……あのさ。セフィロスさんって何をあげれば喜ぶのかな……? 食堂で話していたときも思ったけど……欲しいものなんてほとんど何でも手に入れられちゃうよね、ソルジャークラス1stの英雄ならさ」

「まぁ、そりゃそうかもな」

 いや、コレね。

 セフィロスが欲しいのはおまえだから。そう、おまえ自身だから、コレ。

 クラウドにリボン掛けて、『はい、どうぞ』って渡してやりゃ、泣いて喜ぶことだろう。

 ……もちろん、当の本人にはそんなこたァ言えないが。

「ねぇ、ザックスってば…… セフィロスさんのおみやげ、何にすればいい? 研修旅行で行くんだから、そんな気の利いたものの売っているような場所じゃないだろうし……」

「ああ、そりゃそうだよ。カリキュラムに薬草摘みとか野外でのメシ作りがあったろ。いわば僻地に行くわけだからな」

 俺が修習生のころとは行き場所も異なるが、今回のプログラムでも僻地行きには代わりがなかった。

「そうだよね〜。あ〜あ、おみやげ買ってくるとか適当なコト言わなきゃよかった〜」

「別に気にする必要もないだろ。セフィロスだって、研修をどういう場所でやるのかくらいは知っているだろうしな」

「うん……そうだよね」

「それより、いくら研修旅行ったって、見習い兵士としてのスキルを磨きに行くんだぞ。いわば訓練合宿みたいなもんだ。危険な土地ではないかもしれないが、気を抜くのはよくない」

「うん、わかったよ、ザックス。でも、ザックスも一緒だもんね!おれ、がんばる!」

 説教じみた物言いが効いているのかいないのか、クラウドは薄桃色の頬をさらに上気させてそういうのであった。

 

 

 

 

 

 

 訓練庭に出て、整列・点呼。

 俺は指導員の定位置につくから、修習生のクラウドとはバラバラだ。

 なんとなく気を付けて彼を見ていたが、同じ班の連中と気が合うらしく、整列の時間まで皆と一緒に荷物のチェックなどをしていた。

 やれやれ、同じチームのヤツと上手くやれるのなら一安心だ。いくらクラウドと同室で親友だとはいえ、仕事で同行するのだから、彼にばかりかまっているわけにはいかない。

 幸い出発日の今日、幸先良く天候も良好だし、恐れていた英雄の急襲もなかった。

 なんとか無事に終えられそうだ……なんて、出発前から考えている俺であった。

 順番に列をなして訓練用旅客機に乗り込む。

 クラウドは飛行機に乗るのが初めてらしく、同僚の子供たちと声高に盛り上がっている。俺と目が合うと、一生懸命手を振ってきたが、気の毒に近くにいた教官に見つかってゲンコツを喰らっていた。

 苦笑しつつ、俺も修習生に続いてクラウドと同じ訓練機に乗る。クラスごとに分散して搭乗するので、飛行機は三機だ。

 どうも、ゴンガガの片田舎出身の俺的には、地に足がつかない飛行機というのは苦手だ。フワフワして妙に落ち着かない気分になるのだが…… 同じ田舎出身とはいえ、クラウドは飛行機での旅を楽しもうという様子であった。

 

 離陸するとき、さきほどクラウドにゲンコツを喰らわせていた教官が、なぜか血を流し、地に伏していた。いったいどうしたんだろう……?