〜 告 白 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<31>
 ジェネシス
 

 

 

 

 

 時計を眺めると、すでに午後五時過ぎ。

 俺たちソルジャークラス1stに、定時もなにも関係ないが、全社的には『終業時間』と呼ばれる時刻だ。

「アンジール。まだ残っているのか。だったら一緒にセフィロスの顔を見に行かないか?」

 書類の束をクリップでまとめている彼に声を掛ける。ちなみに、俺のデスクはすでにクリーンだ。

「あー、さっき見舞ったばかりだろう。表向きは面会謝絶だしな」

「そうか。じゃ、俺だけちょっと寄ってくるよ。案外あいつは寂しがりやだからな」

 俺はそう言って席を立つ。

 のんびりしていたら、また招かざる珍客……ラザードあたりがつまらぬことを言いにやってきそうだったから。

 

 直通エレベータを使い、そのまままっすぐ一階に下りる。

 婚活とやらに一生懸命な女性社員たちが、たいそう愛想良くしてくれるが、今日は相手をしている時間はない。

 メディカルセンターでは、きっとセフィロスが退屈しきっていることだろう。

 チョコボっ子来訪から、四時間近く経過しているし、寝ていろと言われても、おとなしく横になっているタイプの男ではないのだ。

 

 微かに消毒薬の匂いのするメディカルセンターに行き着き、入院病棟へ移動する。

 セフィロスの部屋は、いわゆるVIPルームなので、そのフロアにほとんど人影はなかった。

 しんと静まりかえった様子からも、面会謝絶のプレートが十分に役目を果たしてくれたのだろうと推察される。

 

  俺は、病室の扉を軽くノックした。

「セフィロス? ……セフィロス、俺だ。入るぞ」

 いらえはないが、そのままドアを開く。彼は自室の鍵さえ締めない男なのだ。

「……セフィロス?」

 部屋の中には薄墨色の夜の帷が降りていた。

 彼はルームライトもつけずに、ぼんやりとベッドの上に半身を起こしていた。

「おい、何をしている。灯りを点けるぞ」

「…………」

「セフィロス?」

 呼びかけにも答えず、微動だにせぬ彼をそのままに、俺はさっさと電気を点けた。

 

 

 

 

 

 

 VIPルーム特有の、深いオレンジ色の灯火が室内を照らし出す。

 本来ならばまぶしく感じるほどではなかったろうが、セフィロスはひどく驚いたように、ビクリと身を震わせた。

「セフィロス、どうしたんだ。ぼんやりして」

「……あ、ああ」

「まさか、その格好のまま、ずっと座り込んでいたんじゃないだろうな。医者に身体を冷やすなと言われているだろう」

 世話焼きタイプの俺ではないが、ついつい彼相手だと口うるさくなってしまう。

「……ジェネシス…… おまえ、いつ来たんだ。前から居たのか?」

「? 何を言っている。たった今来て、電気を点けたんだよ」

「……ああ、そうか。そうだな」

 心ここにあらずといった様子で、こくりと頷く。

 俺だとて、察しの悪い男ではない。セフィロスがこんなふうに呆けているのに、チョコボっ子が関係していないわけがないのだ。

「ほら、セフィロス。起き上がっているのなら、上になにか羽織れ」

 無造作にサイドチェアに放り出されたままの、ネルのガウンを手渡す。だが、彼はやはりぼんやりと前を見つめたままでそれを受け取ろうともしなかった。

 ため息を押し殺し、包帯の巻き付けられた上半身を覆う。ふと触れた裸体の肌が、思った通り、ひんやりと冷えていた。

 

 ……セフィロスのこのありさまは想定外だ。

 天然のチョコボっ子が、すんなりと彼を受け入れるとは思っていなかったが……

 

「セフィロス。……チョコボっ子に告白したんだろう?」

「…………」

 彼は無言のまま、軽く頷き返す。

「で、どうだった?」

 こういうときは持って回った物言いをすべきではない。あえて直球で俺は訊ねた。