〜 めばえ 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<5>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

 翌日は久々のデスクワークオンリーで、ぶっちゃけヒマな一日を過ごした。

 ソルジャーは、ミッションが入っているときには、ガチガチのスケジュールで動き回ることが多いが、今日のようにデスクワーク(つまりミッションがない)の日は、言い換えれば、学生の『自習』みたいなモンで、真面目に書類を作っている連中よりも、カフェで一服しながらキーボードを叩いている奴らのほうが多いくらいなのだ。

 俺はシーウォーム掃討の一件が気になっていたので、敢えて呼び出しを掛けやすい執務室のデスクについていた。

 だが、期待していた声も掛からず、「まぁ、さすがに昨日の今日じゃな」などと納得しながら寮に戻ったのだ。

 だが、ラザードの仕事の速さに瞠目したのは、まさに翌日である、この日のことであった。

 

「ザックス、おかえり! ねぇねぇ聞いて!」

 部屋のドアを開けると、小柄な身体が飛びついてくるように、駆け寄ってきた。

「おう、なんだ。また宿題かァ? ふー、疲れた」

「違うの! あのね、今度の金曜日、初めて実戦に出ることになったの!!」

「……へ?」

「だから、実戦だよ、実戦。ちゃんとしたミッションだって、先生が言ってた! 今日なんて途中から授業返上で、応急処置の実習になったんだよ!!」

 咳き込むようにクラウドが言う。白い頬を真っ赤に染めて、必死に言い募る様子から、彼がひどく興奮しているのだと見て取れる。

「おい、それってまさか……」

「うん、この前、ザックスが話していたミッションのことだよ。ミッドガルの湾岸部で『しーうぉーむ』を退治するんだって!」

「……あ、ああ」

「そんでソルジャーの人たちの後方支援部隊として、おれたちが…… どうしたの、ザックス?」

「あ、い、いや、その話はラザードから聞いていたからな。そうか、クラウドのクラスが実習を受けるんだな……」

「うん!A〜Cクラスだって。一クラス30名だから、100人近い動員が掛けられたってわけだよね。あ〜、うずうずする〜、緊張する!!」

 胸元に両手を当て、ベッドの上でぴょんぴょんと跳ねるクラウド。初任務に興奮しているのだろう。

「あ、ああ、後方支援とは言っても実戦だからな。何があるかわからないし、気を引き締めて行けよ」

「はいッ! ザックス先輩! なんちゃって〜! あー、ドキドキする〜」

 クラウドはピッと敬礼してみせると、さらに頬を昂揚させるのであった。

 

 ……掃討作戦となれば湾岸封鎖をするわけだから、前線に出ない部隊であっても、100名程度の動員は当然だ。つまりAクラスからFクラスまである修習生のうち、半分が駆り出されるわけだ。となれば、たまたまクラウドのクラスが該当したとしてもおかしくはない。

 ……おかしくはないんだがな。

 いや……いずれにせよ、現場での指揮は2ndの俺が執ることになるだろう。充分修習生の安全に配慮して、目的を果たせばいい。

「さてと、ザックス、御飯食べに行く時間はある?」

 うきうきとした気分のまま、クラウドが訊ねてきた。

「ああ、そうだな。夜にその件で打ち合わせが入ると思うが……ああ、ちょっと早いがメシに行くか」

 時計は午後六時を指していたが、育ち盛り、男ざかりの俺たちは、しっかり腹が減っている。ラザードには「夜」とだけ言ってあるから、向こうもそのつもりだろう。

 俺は「早く早く!」とはしゃぐクラウドに腕を引っ張られながら、社員食堂へ行った。

 

 

 

 

 

 

 ……なに勢揃いしてんの……

 部屋の中にいるメンツを見て、思わずつぶやいていた。

 あの後、たまたま社食に居合わせた同期や、クラウドの同級生らを交えて、わいわいとメシを食ったのだ。やっぱりメシは大人数で食うほうが美味いと感じる。

 いつもは好き嫌いを言って残すクラウドも、今日は雰囲気のせいか全部食っていた。いいことだ!

 そんなわけで、俺がラザードの居る統括室へ足を運んだのは夜七時半近くになってからであった。

 

「遅いッ! 貴様、何をしてやがった!」

 いきり立つセフィロス。ってゆーか、なんでセフィロスが居るの? 

 今日、呼び出し掛かっているのは俺だけだろ? しかも連中は1stなんだから、関係ないと思うのだが……

「チッ……! ったく、このオレ様を待たせるとは……」

「あ、いや、悪ィ。クラウドたちとメシ食いに行って……」

「なんだと、貴様! それはオレへの当てつけかッ! いい度胸だ、この野郎! いっぺん、サシで勝負を……」

「あっはっはっはっ」

 と笑うのは紅コートの男……ジェネシスまで居やがる。

「ああ、ほら、おまえら、よさんか。ザックスはラザードと打ち合わせがあるそうだ。俺たちはそろそろ行くぞ、セフィロス、ジェネシス」

 仲裁に立ったアンジールが、咳払いをしつつ、場をとりなしてくれた。だが、微動だにしない英雄。ジェネシスも面白がっているのか、しっかりセフィロスのとなりに座ったままだ。

「ああ、じゃ、俺たちが場所変えようぜ、ラザード」

 さわらぬ変態に祟り無しだ。

 俺は渋面を作ったままのラザードを促した。

 ……だが、

「待たんか、貴様らッ!!」

 と、引き留めが入る。当然、英雄である。

「オレ様がいないところで、掃討計画を練るつもりだろうッ! そうはいかんぞ!!」

「あ、あの……この人、何言ってんの、ラザード」

 こそこそと耳打ちして訊ねると、彼は深い溜め息を吐き出しつつ、教えてくれた。

「いや……人事担当者としては困っていてね。1stもミッションに加えろというのだよ……」