〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<14>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

「ねぇ、誰か…… あなたたち……だれ?」

 りんとした声の、長身の少女がダイニングの入り口に立っていた。

 ティファちゃんだ!!

 すぐにわかった。

 なぜなら、クラウドから聞いていた特徴がぴったりと当てはまったから。

 長い黒髪に……そして、その巨乳!!

 クラウドと同い年と言っていたが、多分身長は彼女のほうが高いと思う。

 ウエスタン風のショートジャケットからでもわかる豊満な胸……そしてミニスカートから形のよい足がすらりと伸びていた。

 

 不意にキ……ンと、となり合った空気が緊張を孕み、凍り付く。

 そしてどこからともなく響いてくる、『片翼の天使』のテーマ……

 アホか、セフィロス!! 臨戦態勢に入るなッ!!

 

「あ、あの……ティ、ティファちゃん?」

 俺は岩山のごとく直立するセフィロスを押しのけ、彼女の前に歩み出た。

「え……そ、そうだけど…… あの……ここ、勝手に……?」

「あ、俺たち、社員なんだ」

 不審者と思われてはたまらない。まずは身分を明かすことから始めた。

「あ、そうなんだ。私、アルバイトで、ここの管理を頼まれているの。あの……」

「ああ、ごめん。俺はザックス。神羅の社員で、クラウドの同僚だ」

「クラウドのこと、知っているの!?」

 そういうと、まさしく彼女は花が開くように笑った。

 よくよく見る間でもなく、彼女は充分に美少女で通る容姿だった。つい胸ばかり気にしてしまって意識がそっちへいかなかったのだ。

「知っているどころじゃないよ。クラウドとは同室で、ティファちゃんのコトも話に聞いていた」

「ほ、本当? クラウドが私のことを……?」

 ポッと頬を赤らめる。

 なんだ……スゲー可愛い娘じゃん。これ……もう勝ち目ないってセフィロス……

 ってゆーか、めっちゃ睨み付けてるよ、あの人ッ!!

「そっか……ザックスさん、クラウドと仲良くしてくれてるんだね」

「ザックスでいいよ。ああ、いいヤツと同室になれてよかったって思ってる」

「あ、ありがとう! よかった……ザックスみたいな人が彼の側に居てくれて」

 黒い瞳がきらきらと輝く。

 あのクラウドが想っている幼なじみだけあって、彼女はとても魅力的な少女であった。

「な、なんか照れるな。俺にとっても、クラウドは大事な友だちだから」

「ねぇ、クラウドはどうしてるかな? ちゃんと元気でやってる? ご飯、きちんと食べてるのかな…… 好き嫌いとか多かったから……」

 セフィロスを置いてけぼりに話が進んでゆく。

 ティファちゃんは本当にクラウドのことが気になるようだった。それこそ、どんな生活を送っているのか、研修生としての勉強には着いて行けているのか、ついには毎日の食事についてさえも……

 

 クラウドもティファちゃんを大事に思っていたようだったが、どうもティファちゃんのクラウドへ対するそれとは、様相が異なるらしかった。

 きっと……俺の後ろにいる怒れる英雄も気付いているとは思うけど……

 そう、クラウドはティファちゃんのことを、故郷の大事な女の子として大切に思っている。『女性』に対する少年の憧憬と、幼なじみへの親愛の情に溢れているのだ。

 幼い頃のクラウドにとって、ティファちゃんは憧れの存在だったのだろう。だからこそ、神羅に入ってソルジャーになり、その幼なじみに認められたいと……純粋にそう考えて頑張っている。

 だがティファちゃんのクラウドへの思いは、それだけではなさそうだ。

 もちろん、昔なじみへの親愛の情はあるだろう。

 だが、ティファちゃんは女として、クラウドを想っているのだ。

 つまり、クラウドという男に対して、女として恋愛感情を抱いている。

「……安心するがいい。あの子はこのオレの側で、日夜勉学に勤しみ、任務に励んでいる。オレの手元で慈しんで育てているゆえ、『他者』の心配は無用だ」

 剣呑な物言いで、おもむろに会話に割って入ってきたのは、もちろん、セフィロスである。

 ティファちゃんが、声の主……セフィロスのほうに目線を送った。

 

 しかし、なんつー挑戦的な言い方してんだよ! 空気読めよな!!

 ……『オレの側』『オレの手元』……

 まるで、クラウドを自分の所有物であると訴えるような物言いではないか。

 セフィロスだって、今のティファちゃんの話を聞いていれば、彼女がクラウドに対して特別な気持ちを抱いているのはすぐにわかるだろう? だったら、もっと言い方っていうか、無難な表現が……

 

 いや……むしろ、これはティファちゃんへの挑戦状なのか!?

 これだけの巨乳美少女が相手でも、クラウドを諦める気はないというのだろうか?

「セフィロスね」

 ティファちゃんは、自分よりも遙かに長身で巨躯の男を真っ直ぐに見上げた。

「そうだ」

「神羅の英雄・セフィロス。よく知っているわ」

「それは光栄だな」

「クラウドがよく言っていたもの。あなたの活躍した新聞の記事や雑誌を切り抜いてスクラップにして……」

「フッ……」

「『セフィロスみたいに強くなりたいんだ』『神羅に入社してソルジャーを目指すんだ』って言ってたわ」

「ああ、とても素直でいい子だ」

「そうでしょう? そしてソルジャーになったら、私に何かあったときは真っ先に駆けつけてくれるって。私を守ってくれるって。そう言っていたわ」

 

 「真の強者」……敵を知る。

 恋する者の直感なのだろうか。ティファちゃんはまだ一言も言葉を交わす前から、セフィロスをライバルと見なしたようであった。

 カーンとどこかでゴングが鳴る音が聞こえたような気がした。

「うふふふふ……」

「クックックッ……」

 こ、怖エェェェェ!!

 セフィロス・ティファ……クラウドを挟んで、ふたりの屈強な戦士が、ファイティング・スピリットむんむんで向かい合う様が見えた。

 すごいと思うのはティファちゃんだ。

 セフィロス相手に、一歩引くどころか、女性としての優位があると考えているのだろうか。むしろ上から睥睨するかのような強気なのであった。