〜 障害物競走 〜
〜 神羅カンパニー・シリーズ 〜
<23>
 ザックス・フェア
 

 

 

 

 

 

「私のほうこそ、彼と一緒に生活……あ、いや、任務に赴ける日を楽しみにしています」

 セフィロスが微笑んだ。

 ……この男の笑顔なんて、対クラウド以外で初めて見た気がする。

「あの子は……そちらでの生活に慣れましたでしょうか? いえ、あまり社交的な子ではないし、少し心配でしたものですから」

「あ、大丈夫ッスよ。クラウドは修習生だから、今んトコ、毎日座学中心ですけど一生懸命頑張ってます。友だちもたくさんいるし、メシもちゃんと食ってます!」

 俺がそういうと、彼女はとても嬉しそうに微笑んだ。そしてフゥと吐息したのであった。きっと彼女にとって、心配の種は尽きないのだろう。

 ちゃんと授業に着いて行けてるのか、回りの者たちと上手くやっていけてるのか、食事をきちんと取っているのか……母親ならば、当然の気持ちだ。

「ザックスさん、でしたわね。貴方のような方が同室であの子の側に居てくれて心強く思います。今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

「あ、い、いえ、自分は……そんなたいしたモンじゃ…… ぐぉッ!」

 俺の最後の呻きに、クラウドのお母さんが不思議そうにお辞儀していた顔を上げた。

 セフィロスの野郎……思いっきりツネりやがって……仕方ねーだろうがよ、クラウドと同室なのはホントのことなんだし、実際、面倒見てるの俺だし……

「皆様のお話を聞いてホッといたしましたわ。あの子なりに頑張っているとわかって……」

「ええ、それはもう。とても可愛……いえ、性格のよい少年で先が楽しみです」

 とセフィロス。言い直すくらいなら言い間違えんなっつーの。

 

「そう……クラウドはもともと内気な子でしてね…… うふふ、都会で恋人を作るのなら、少し年上で、おまえをしっかり引っ張っていってくれる方がいいと話したくらいなんですよ」

 悪戯っぽく笑う彼女。笑顔がとってもチャーミングだ。

 ……と見惚れていると、背後から強い声が飛んできた。

「然りッ! さすがお義母さまッ! よくわかって居られるッ!」

 と、大げさなほどの勢いで頷くのは言わずと知れたセフィロスだ。っていうか、別に彼女はアンタのことを言ってるわけじゃないからね。

「お、おい、ちょっ……」

「そう、あの子にふさわしいのは、しっかりとした年長の恋人……!! まさしく私もさようにすべきと……」

「セ、セフィロスッ!」

 と、背中を裏拳でどつく。

 ……それから『お義母さま』はやめろっつーんだよッ!!

「あっはっはっ。クラウド、可愛いからなぁ。多分、同級生にモテモテなんじゃないかなァ、なぁ、ザックス?」

「お、おう。やさしいし、人当たりもいいもんな。勉強も任務も一生懸命だしよ」

 よぉし、ジェネシス! ナイスフォロー! グッジョブ!

「この前のミッションでは、修習生も後方支援で参加したんですけど、彼、しっかり努めてましたよ。な、セフィロス?」

「然りッ!」

 ……おまえは戦国武将かっつーの。せっかくのジェネシスのフォローを無駄にしないよう、俺も慌てて参加した。

「そうそう! ちょうど俺たち三人とも一緒だったんですよ、怪我人の手当も的確で迅速だったし、前線部隊が戦いやすいように色々と気配りをしてくれました。指揮官もいい印象を持っていましたよ」

 『指揮官』は俺なんだから、ウソは言っていない。実際、あの日、クラウドはよく頑張ったと思う。

 俺たちの話を、いちいちきちんと頷きながら、ストライフ夫人は熱心に聞き入っていた。

「ああ、皆さん、ありがとうございます。偶然にも神羅の方にお会いできるなんて…… それもクラウドのことをよく知って居られる方に……あの子が元気で頑張っているとわかって、本当に安心いたしました」

「お義母さま、年上の恋人の件なのですが……」

「あ、は、はい?」

「セフィロスッ! い、いいかげん、立ち話で呼び止めちゃご迷惑だろッ!」

 尚も食い下がるセフィロスを食い止め、俺はさも列車の時間があるという素振りを見せた。

「ああ、そうだよな。失礼しました。クラウドくんに故郷の話を聞いていまして。よく似たご婦人が居られたので、もしかしてと思い、不躾にも声を掛けてしまいました」

「まぁ、いえ、とんでもない! 本当に皆様に会えて良かったです。お忙しいのに、お引き留めしてこちらこそ申し訳ありませんでした。今度はぜひ息子と一緒に遊びに来てくださいな」

「ええ、是非ッ!!」

 と、誰よりも早く、間髪入れずに返答するセフィロスを引きずり、俺たちはクラウドのお母さんに別れを告げたのであった。