〜 美女でも野獣 〜
〜 FF7 〜
<23>
第二部
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 ヴィンセント、ヴィンセント、ヴィンセント……!

 俺、バカだ……! 本当に大バカ野郎だ!

 

 どうして、セフィロスを信じたいなどと考えてしまったんだろう。

 この土壇場になって、後悔しても、もう遅いのに……!

 

 ふたりきりで話をすれば、わかりあえるかもしれない……

 

 そんな気持ちが最期まで打ち消せなかった。

 

 セフィロスとまともに話しができたのは、彼がおのれの秘密に気づく前……一緒にニブルヘイムの魔晄炉へ向かったときまで遡るのだ。

 いや……そのときでさえ、いつもより口数が少なかったように思う。

 

 ふたりでゆっくり話が出来れば……

 ミッドガルで共に過ごした時間を思い出してくれれば……

 

 甘かった。

 なんて甘ちゃんなんだ、俺は!

 

『セフィロスが、本物の悪魔になっていたら、今度こそ俺は殺されるかもしれない』

 そう、俺だけが、だ。

 ……ひとり犠牲になればいいと思っていた。

 

 それだけのリスクをはらっても、どうしてもセフィロスとふたりきりで話がしたかったのからだ。

 その代償に、おのれの命をかけることは、許されると思っていた。

 自身の命だけなのだから。

 

 

 

 

 

 

「ぐあぁぁぁぁーッ!」

 カオスに噛み付かれたセフィロスが、獣のような咆哮を上げた。

 『カオス』はヴィンセントのリミットブレイクだ。

 それも最終形態。

 

 彼がその姿になるのは、これまで一度も見ていなかった。

 そもそも、ゴールド・ソーサーでの一件以降、リミットブレイクせねばならない状況には陥らなかったし、地力のある彼に傷を負わせるようなモンスターもいなかった。

 

 ヴィンセント本人が、古代種の寝殿へ向かう前に教えてくれたのだ。

 万一のときはリミットブレイクする場合もあるだろう、と。

 ただ、この前のような無差別殺人鬼になるつもりはない、必ずおのれの力をコントロールするから……

 

 その結果が、今の状況を可能にしてしまった。

 俺一人の命で済ませるつもりだったのに。

 

 ヴィンセントは『カオス』という最終形態にリミットブレイクし、正気を保ったまま、セフィロスと互角に戦っている。

 体力の無い彼だが、リミットブレイク中は、本来の肉体以上の力を発揮できるのだ。

 

 だが、それは……