~ 美女でも野獣 ~
~ FF7 ~
<28>
第二部
 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

 

「……何度、繰り返そうと結果は同じだ、クラウド」

「今度は迷わない! ヴィンセントを守るためなら、俺はなんでもする!」

「……大人しくついてくればよいものを……」

 セフィロスの長刀が、ひたりとこちらに向けられた。

 血に塗れた魔の刃。

 いったいあの長刀は、どれほどの血を吸ってきたのだろうか。

 

「行くぞ……!」

 タンと地を蹴る。

 次の瞬間、姿を確認したのは、すでに眼前に肉迫してからだ。

 いつも思っていた。……こんなに長身なのに、なぜここまで速いのだ、と。

 

 ガイン!

 

 大剣と長刀がぶつかり、火花が散る。

「ぐっ……!」

 ぎりぎりと鍔迫り合いになるが、押し負かされたのは俺の方だった。

 力任せに弾き飛ばされるが、背後の壁にぶつかる前に、なんとか体勢を立て直す。

 もちろん、肩に背負ったヴィンセントを、落とすようなことなどするはずがない。

 

 ……しかし、いかにセフィロスの得物とはいえ、細い刀身と俺の大剣。

 スピードこそ譲らざるをえないかもしれないが、パワー負けするはずがないのに。ましてや、相手は満身創痍の状態なのだ。

 

 強い……セフィロスは本当に強い男だ。

 人ならざる身となったゆえに特殊な力が使えるから、という話ではない。

 抜本的に、肉体の力、戦闘能力、また駆け引きのセンスが抜群なのだ。

 ソルジャー・クラス1stの力はこんなにも大きなものであったのだ……

 

 

 

 

 

 

「どうした。もう降参か?……フフフ」

 口元から胸までを血糊で染めたセフィロスが嘲笑った。

 凄絶な笑みだ。

 

「何ならその『荷物』を捨てたらどうだ……? 互角とまではいかぬまでも、毒に犯されたこの身にならば、一太刀くらい入れられるやもしれんぞ」

「……黙れッ、ヴィンセントを置き去りになんてできるかよ! 俺が……バカだったんだ。ひとりで勝手にアンタに逢いに来たりして……どうしてもふたりで話したくて……!」

 今さら後悔しても遅いのだ。

 そんなことはもうわかっているのに……!

「俺のせいだ…… ヴィンセントをこんな目に遭わせるなんて……!」

 ギッと歯を食いしばる。

 叫んだ後、力を抜いたら涙が出てきそうだからだ。

 

 俺を睥睨するセフィロスが、口元にいいようのないおかしな笑みを刻んだ。

 哀れと思うのか、滑稽でたまらぬというのか……そんな嗤い方であった。

 

「可哀想にな、クラウド。確かにおまえは私の特別だった。……せめて最期はその男と共に、私の刀で葬ってやろう」

「……ふざけんなよ。着地したのは、ヴィンセントを背負ってちゃ、アンタとまともにやり合えないと思ったからだ」

「ほぅ……」

 バカにしたようにセフィロスが声を上げた。

 

「『荷物』がなければ、私よりも上だと言いたげだな」

「そこまで自惚れちゃいないよ。ただ、アンタを消滅させるなら、またとない機会だとは思ってる」

「確かにそうかもな。そろそろ視界も効かなくなってきた」

「……そのまま消えてくれるとありがたいんだけどね」

 自らが口にした冷ややかな言葉に、どこかで安堵する。

 ちゃんとわかっている。

 俺はもう一度、セフィロスを殺さねばならない。

 ……ちゃんと……ちゃんとわかっているんだ。

 

「さぁ、来い、クラウド……!」

 どこか楽しげに刃を突きつけてくるセフィロスに、こちらも剣を構えて相対する。。

 ヴィンセントの状態は、もはや一刻の猶予もならない。

 そのためにも、今ここでセフィロスを倒さねばならない。幼い物想いはもう終わりなのだ……!