20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 クラウド・ストライフ
 

  

『あなたの特別な日に……神羅カンパニー』

 最近買い換えた70インチの液晶テレビがCMを流す。

『くしゃんとくしゃみが出たら、喉のイガイガを感じたら……神羅製薬の風邪薬をどうぞ。お子様には飲みやすい液状タイプもこざいます』

 夕食後のフリータイムだ。

 ディッシュウォッシャーに、食器を入れ込んでしまえば、ヤズーとヴィンセントの仕事ももう終わり。最初はここまで住人の人数が増えるとは思わなかったが、キッチン関係は十分に充実させて良かった。

 俺だって手伝うことはあるけど、どうしても性格上ヴィンセントが一番その場所を使うことになるから、なるべく広くスペースを取って、便利機器も充実させてやりたかったんだ。

 さて、この時間帯、カダやロッズは風呂で、テレビは俺とセフィロスのものなわけだが、セフィはニュース以外にはあまり興味を示さない。

 今も何となく報道番組を皆で眺めていたのだが、立て続けに神羅カンパニーのCMが流れてきて目を引いたのであった。

 

「ふぅん、この前の精力剤もそうだけどさ、最近の神羅はすごいね。ずいぶんと復興事業も進んでいるようだし、それ以外にもこうして順調に多角経営しているなんて、ルーファウス神羅はかなりの敏腕経営者といえるだろうね」

 と、ヤズーが感心したようにそう言った。

「ああ、怪我も回復したのだろうな。よかった、本当に」

 お人好しなセリフはもちろん、ヴィンセントである。

「リーヴが言ってたけど、WROにもずいぶん献金してるみたいだよ。この前、荷物預かりに行ったとき、そう言ってた」

 俺も言葉を添える。実際そういうことなのだから、やはりここのところ、神羅カンパニーの経済復興はめざましいといえるだろう。

 すでにミッドガルの大半は大破して、もとの神羅カンパニーはなくなっている。そのビルの近くに復興業務を中心におこなう会社を作り、ルーファウス本人はヒーリンやエッジ付近の別荘にこもっているらしい。

 もちろん、こもっているといっても、ただひきこもりをしているわけではなく、そこからPCを使ってさまざまな指示を出したり、人脈を広げ復興への足がかりを常に模索しているというのが正しいところなのだろう。

 そう考えればなかなか見上げた男である。

 だが、素直に誉める気にはならない。ヴィンセントがルーファウスを賞賛するのは気に入らないし、俺には神羅時代にいじめられた記憶がある!

 ルーファウスはセフィロスのことをとても気に入っていて、俺のことを目の仇にしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

「俺もこの前の一件でちょっと見直したかな、あの社長のこと」

 とヤズーが言った。

「ヴィンセントのことを身を挺して守ってくれたことには感謝しちゃうよね」

「本当に……そのせいでひどい怪我を負わせてしまった。可哀想なことをした」

「ルーファウスとしては本望だっただろうよ。今はまだ古傷に注意して立ち回っているようだが、ほぼ全快したとヴィンセントに連絡があったそうだ」

 と言ったのはセフィロスだった。ヤズーだけでなく、セフィロスも例のDGソルジャーの一件で、ルーファウスへの評価が変わったらしい。

 以前は高慢ちきで鼻持ちならない小僧とでも思っていたのだろうが(実際、口に出してそう言っていた)、全力でヴィンセントを守ろうと、ネロに立ち向かっていったことは、これまでの彼という人物からは考えられない行動に見えたのだろう。

 セフィロスの評価はいつでも誰に対してでも平等であり、それゆえ正しいともいえるのであった。

「エッジの街はまだまだ発展途上といった感じだしね。ミッドガルの西側も撤去されていない廃墟が多くあったよ」

 ヤズーの言葉に、

「でも、それなりに収益が上がっているんなら、徐々に改善されるだろ。俺としてはエッジにいた孤児たちのことが心配なんだ。セブンヘヴンズや、タークスの連中がいろいろ面倒を見ているみたいだけど……」

「確かに胸の痛むことだな。……我々に出来ることは少ないかも知れないが、なるべく、WROや神羅カンパニーには協力するようにしたいものだ」

「っていうかさー、ヴィンセントはもう十分協力してんじゃん!特にリーヴにはさんざんメーワクかけられているんだし!」

 オレは口を尖らせてそう言ってやった。

「そ、そんな……迷惑などと。でも、WROの活動資金も神羅からの援助の部分が大きいとなれば、やはり神羅カンパニーに協力できることがあればよいのだがな。子どもたちの施設や療養所を作る資金など……ああ、だが金銭面では、ほとんどなにもしようが……」

「まぁまぁヴィンセント。お金の問題はともかくとして、何か重要な要件があれば、この前みたいに相談してくるでしょ。あの手のことは俺たちじゃなきゃ片付けられないし、そういうときに出来るだけ協力するってスタンスでいいんじゃない?」

 お代わりのお茶を、それぞれのティーカップに振る舞って、ヤズーが言った。

 そうだな、それがまだ妥当なところだと思う。