20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 クラウド・ストライフ
 

  

 そんな話をしていたせいだとは思わないが……

 ……神羅カンパニーから協力要請が来たのは、その週の終わりのことであった。

 それも何やら個人的な頼み事ということで、電話連絡の上、わざわざこのコスタ・デル・ソルにまで、ルーファウスとタークス二名がヘリで乗り付けてきたのだ。ちなみにタークスの二名とは、ご存じレノとルードである。

 確かに休日の……それも午後の昼下がりという、もっともゆったりとした時間であったから、出迎えるにやぶさかではなかったが、朝方の電話一本とその午後の来所ということで、少々慌ただしいこととなった。

 俺の貴重な休日なのに……まったく苦情のひとつでもがつんと入れてやりたいところである。

「まぁまぁ、クラウド……丁重な連絡もあったことだし、この前、皆で話していたばかりではないか」

 と、ヴィンセントがやわらかく微笑んで俺をとりなす。

「神羅カンパニーが率先して復興事業に力を貸しているのは明白なのだ。我々に出来ることがあるなら、協力しようと」

「まぁ、そりゃそーなんだけどさ!なんかこう家がわさわさすんの、俺たちはたいして気にならないけどヴィンセントは嫌でしょ。それに疲れちゃうだろうし」

「ふふ、大丈夫だ、そんなに気を使ってくれなくても。それに少々楽しみでもあるのだ」

 と、ヴィンセントは意外なことを口にした。

「楽しみ?」

 つい、そう復唱してしまう。

「だって……我々がミッドガルに行ったときに、彼らはとてもよくしてくれたではないか。ヤズーの目の一件のときも、かなりの便宜を図ってくれた。すでに我々と彼らは良好な関係にあると思うのだが」

「まぁ……敵対しているわけではないよね」

「不思議だとは思わないか、クラウド」

 そういうと、ヴィンセントがふと表情をやわらげた。

「私もおまえももと神羅の社員で……一時はカンパニーを仇敵のように憎んだ。それはセフィロスも同様であっただろう。しかし、今はこのような付き合い方ができているのだ。世代の交代というのは、本当に不思議なものだな……」

「まぁね、DGの件にせよ、ジェネシスやセフィロスの人体実験も、主導していたのは前プレジデントのときだからね。ルーファウスはほとんど何も知らされていなかったらしい」

 正直、ルーファウスという人間を好いてはいなかったが、悪魔の実験の中身を知っていたら、黙っては居なかったのではなかろうか。特にそれが自分の関心の対象……そうセフィロスなどに施されていると知ったら、そのままにはしておかなかったろう。DGソルジャーの件にしても同様だ。

 

 

 

 

 

 

「だが、ルーファウス神羅は、その先代の『ツケ』を自ら身をもって支払おうとしている。見上げたものではないか」

 ヴィンセントはそういうと、また「ふふ」と小さく笑った。彼がこんな風に神羅の人間の話をして笑みを浮かべるなどめずらしいことだ。

「なんかさー。ヴィンセントって意外と神羅びいきだよね〜」

「そ、そうだろうか」

「いつの間にかツォンやレノとも親しくなってるし〜」

「そ、それは私の世話をしてくれたのが彼らだったから……」

「ちょっとぉ兄さん、何ヴィンセントにつっかかってんの」

 間から割って入ったのは、もちろんヤズーである。こいつもどうやら、レノが気に入りのようで、ちょっかいを出しては遊んでいるといった様子だ。

 今回もルーファウスの護衛として、レノが同行していると聞いて喜んでいる。

「みんなさー、神羅は敵とはいわないけど、別に仲良くする必要はないんだからね。復興への協力も俺たちにできるレベルでやれば十分なんだから、今回のルーファウスの申し入れが無茶だったらしっかり断るからね、戸主として!」

 最後の『戸主として』という部分を目一杯強調して、俺はそう言った。

 

  ……夕刻……

 バラバラと民間用の小型ヘリが下降してくる。

 特にヘリポートなどが有る場所ではないが、家の裏の平原に一時着陸させるらしい。

 もっともこの時期のイーストエリアは閑散としたものだから、咎められる心配はないし、このあたりの別荘所有者はヘリやボートを持っているブルジョアも多いのだ。

 まぁ、逆に言うなら、それだけ敷地が余っている場所であるとも言えるのだが。

 

 お迎えということで、俺とヤズーそしてヴィンセントが外に出る。カダとロッズは海に行ってお留守、セフィロスはわざわざ自分から出迎えをするようなキャラではなかった。

 モバリングを終えたヘリからまず見えたのは、見慣れた赤毛である。

 レノに手を取られて若社長が、優雅な仕草で出てきた。

 

 ……ヴィンセントがなんと言おうと、やっぱりルーファウスは気に入らない。

 面倒な頼み事だったら即刻却下しようと、俺は心に決めた。