20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<7>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

 

「おい、だって婚約者って……当然女役なんだぞ!あの……クラブでのときは、一瞬だったからごまかせたけど、年がら年中ドレス来て、ルーファウスの側にくっついてるなんて……」

「大丈夫、バレないよ、兄さん小さいし!」

「ま、まぁ……クラウドは容姿がいいから、少女に見えないことも……」

「よかったな、チビで」

 どれがだれのセリフかわかるだろうか。

 ヴィンセントはともかく、セフィロスとヤズーはもう俺が引き受けるものだと決めてかかっているようでむかつく。

 

 ……正直、俺だって、『婚約者』などという役柄でなければ、現在の神羅カンパニーに協力したいという気持ちもないわけではない。

 実際に、エッジの街に孤児のための施設が増えたのも、食べ物の供給施設や学校などの教育の場が設けられたのも、カンパニーの尽力が大きいことはよく知っているからだ。

 ミッドガルの廃墟から焼け出された人たちの、仮設住宅の建設も毎年増えており、過去数年のマイナスイメージを払拭してくれているのは、ほんの一時期とはいえ、社員という立場であった俺にとっても、すごく嬉しいことであったのだ。

 

 

 

 

 

 

「う〜……ねぇ、ヴィンセント。どうしよう……」

「ク、クラウド……」

「俺、ヴィンセントと離れるのはやっぱヤダ。でも……この前のCMじゃないけど、カンパニーが復興事業に力を入れてるのを知ってるから……」

 困ったときのヴィンセントだのみではないが、やはり俺は誰よりも大切な人の意見を聞くべきだと考えた。彼ならばお金に目がくらむこともないだろうし、客観的な意見が聞けるのではないかと考えたのだ。

「そうだな、クラウド。孤児たちの住める施設や、焼け出された人々の居住区など……ずっとおまえは気にしていたから……」

「うん、セブンヘブンズにいたときからね。自分だけコスタ・デル・ソルで、のうのうと生活しているのがなんだか申し訳なくて……」

「それは兄さんが悪いワケことしているわけじゃないでしょ」

 困惑したようにヤズーがいう。綺麗な顔が少しだけ悲しそうに見える。

「う〜……そう考えると、今、ルーファウスに倒れられるのは、俺としても困るというか……」

「ク、クラウド、その言い方は失礼にあたる」

 ヴィンセントが慌ててそう言うが、ルーファウスは鷹揚に笑った。

「いいんだ、ヴィンセント・ヴァレンタイン。彼がそう考えるのは当然だ。それだけの迷惑をさんざん掛けてきたのだから」

「そんな……君は十分努力しているではないか。確かに、過去、神羅は過ったことをしたのだろう。だが、それは君がしたことではなくて、先代の話だ」

「……いや、それでもやはり私は神羅の人間なのだから」

「次代の神羅の社長だ。そして今、そのときの過失を取り戻すべく動いている……」

「ありがとう、ヴィンセント・ヴァレンタイン」

 なんだかふたりのやり取りを聞いていると、ここで切って捨てるのは、まるで人非人になりそうな雰囲気なのだが……