20数年前から愛してる 〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜 <11> クラウド・ストライフ
「ごめん……」
もう一度俺はルーファウスにあやまった。
「……クラウド?」
「ごめん、アンタの大事な気持ち……不用意にたずねるような真似をして」
「……かまわない。私が勝手に想っているだけなのだから」
ふぅと吐息すると、いっそ楽しそうにルーファウスはそう言った。
「でも……苦しいだろ。俺もそういう経験あるのに、不躾に聞き出すようなことじゃなかったよな」
「いや、むしろ誰かに話せたのは……不思議とここちよかった。おまえはもう彼のことは……?」
「うん、そういう意味での『好き』じゃなくなってる。……いろいろあったからね」
「そうか」
「訊かないの?」
「……今のおまえは紅い瞳の麗人に夢中……というのは、訊かずとも見ていればよくわかるからな」
くすくすと笑ったルーファウスは、なんだかひどく無邪気に見えた。いつものような……どこかものごとを斜めに眺めるような、神羅の社長の顔ではなかった。
「ヴィンセントへの告白は苦労したよ〜。最初なんてきっぱり断られちゃってさ。もうどうしていいのかわかんないありさまで」
「ほう」
「コスタ・デル・ソルにだって、半ばひっさらうような感じで連れて来ちゃったからね。いつも一緒に居てくれないと、俺が不安でたまんないんだ」
なぜか俺はそんなことまで、ルーファウスに向かって話していた。一時は憎まれていたに違いない相手にだ。
「だが……愛されているのだろう?」
「うん……たぶん、かな」
「まだ不安が……?」
「好きすぎて……もっともっと好きになっちゃって、そうすると色んなことが怖くなる。もっともっと欲しくなるんだ」
「情熱的なことだな」
「あー、はずかし!俺、アンタに何話してんだろ。今のオフレコね!ヴィンセントに言わないでよ」
「むしろ、これだけ想われているようだと教えてあげたい話だがな」
そういうとルーファウスは、終わったレコードを仕舞いに席を立った。骨董品のような聴音機を手慣れた様子で操作するしぐさは、やはり上品でそつがなかった。