20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<15>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

「『聖カタリナ寺院』を……」

 ヴィンセントが少し驚いたようにそう言った。

「ああ、すでに孤児たちが住んでいる。日中は炊き出しをしたり、ひとつの大きな救済拠点にしたいと考えている」

 ルーファウスがそう言った。

 ミッドガルとエッジの周辺は、まだまだ廃墟が多いのは知ってのとおりだ。特に問題になっているのが、家を焼け出された住民たちと、子どもたちの問題である。

 俺自身、エッジのセブンヘブンズにいたとき、浮浪孤児の多さに驚いたものだ。また小さな子どもたちがいるから、大人たちが働き口を見つけにくいという悪循環であった。

 今のルーファウスの話は、エッジとミッドガルのちょうど境にある、巨大な教会を、いわゆる孤児院として運営して行くと言う話であった。

「尼僧らの協力も得られ、徐々に人手も集まってきている。知ってのとおり、あの大規模教会だからな、寺院との折衝もなかなかに大変だが、事情を察してもらえている状態だ」

「それはよいことだな。あそこならば多くの人々を収容できよう。確か聖ヘレナ修道院も、今は孤児たちの教育に使用していると……」

「くわしいな、ヴィンセント」

 と、ひたすら夕食を食べていたセフィロスが、少し驚いたようにそう言った。

「あ、ああ、WROのリーヴ局長に……やはり、神羅カンパニーの協力あってのことだと言っていた。あそこからも人員を派遣しているのだろう」

「WROのリーヴね。あの酒に弱いオッサンか」

「セ、セフィロス。ま、まぁ……いずれにせよ、ルーファウス神羅の取り組みが形になってきたのは喜ばしいことだ」

「ようやく……といったところだ。まだまだ人手も足りないし、施設も不足している。積極的に寺院や修道院の跡地を利用しているが、それだけでは足りない。新しい教育施設も作る必要があるし……」

 ふぅとルーファウスがため息を吐いたのが気になった。なんだか疲れているように見える。

 色白の肌がくすみがちであったし、目の下にはなかなかとれないクマが張っていて、唇に色味がないせいか、いっそうそのように感じられる。

 しかし、よくよく考えれば、疲労して当然なのだ。

 出資者を集めるためのパーティに、神羅本社の経営、彼の細い肩には重すぎる荷物が幾重にも背負わされている。

「それだけいろいろと復興事業に尽力しているのに護衛が必要だなんて……なんだか釈然としないよね」

 そういったのはヤズーだった。俺も同じように頷いた。

 ルーファウスらのしていることは、客観的に見ても、『よいことだ』と感じる。それにも関わらず、邪魔をしようという勢力があるのか。やはり過去の神羅カンパニーを憎んでいる者たちのしわざなのだろうか……?

 

 

 

 

 

 

「いろいろあるのさ」

 と、敢えてルーファウスは軽い口調でそう言った。

「過去の神羅を知る者も当然多い。慈善事業をうさんくさく感じる人々もいるだろう。アバランチやウータイ出身者にとっては、まだまだ憎むべき対象であるには違いない」

「でも、それは……!」

 つい、俺は食事中だというのにもかかわらず声を上げてしまった。レノやルードもこちらを見る。

「で、でも、それは……ルーファウスのしたことじゃないだろ。過去のカンパニーがそういうことをしたこともあるのかもしれないけど……代替わりをしたのだって知られてるはずだし……」

「元ソルジャー・クラウド、それでもやはり『神羅カンパニー』は過去から現在につながっているし、社長は私なのだ。狙われてもいたしかたがない。それがわかった上で、今の立場にあるのだからな」

「なんか理不尽……ルーファウスはいいことをしてんのに」

「ったくおまえの頭は単純でうらやましいぞ、と」

 と、レノが笑った。

「だってそうだろ。孤児のための施設作ったりとかさァ。パーティにまめに顔出してんのも、出資してくれる人や協力者をさがしてるようなモンじゃん」

「ま、そこが難しいところだぞ、と。いずれにせよ、社長のことはオレらタークスがしっかり守ってんだから、おまえも協力してくれよ」

「もちろん、そのためにこうして側についてるんだろ」

「護衛って意味だけじゃないぞ、と。おまえはクラウディアちゃんなんだからな。社長の婚約者としての役目もしっかり果たしてくれよ」

 ふふんと嫌みっぽく言うレノがむかついたので、イキオイでおかわりをしてしまった。

 俺だって毎日しっかりダンスの稽古や、マナーのレッスンを受けているんだっつーの!