20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<20>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

 

「ごめん、うかつだった……俺のせいだ」

 開口一番に俺は皆にそう告げた。ちなみに動きにくい女装はもう解いている。

「……おまえだけのせいじゃないぞ、と。俺も社長に言われてそのまま請け合っちまった。油断していたワケじゃないんだが、今日のパーティの主催は以前から付き合いがあったし……これまで、カンパニーに友好的だったからな。まさか……あんなことになるとは」

 レノがぞくりと身震いした。俺も思い起こすだけで寒気がする。

 つい先ほどまで賑わしいパーティが開かれていた洋館だ。愛想良くお土産まで手渡してくれた老夫婦が、まさかあのような事態を引き起こすとは……

 いや、やはり見た目で判断した俺の失態だ。

 俺はあくまでもルーファウスの護衛であることを忘れてはならなかったのだ。

 

「明日の明け方までのタイムリミットか……こいつは相当厳しいぞ」

 さすがのセフィロスも、真剣な面持ちでミッドガルとエッジ全域の地図を眺めている。

「施設を道連れに、ルーファウスを殺すというのならば、クソッ、この全域にいくつの寺院や教会があるんだ」

 セフィロスがレノに、地図に印を付けるように促した。

「セ、セフィロス……孤児院を道連れにということは……おそらくウータイの反神羅勢力は、施設をどうしようと……」

 おろおろとヴィンセントが訊ねる。今にも泣き出しそうなありさまなのは、俺だって同じだ。

「……『処刑』方法は爆破だろうな。ルーファウスのすぐ側に爆弾を仕掛けておけば、施設もろとも吹っ飛ばせるだろう」

「……爆破か。俺もそう思う」

 セフィロスの言葉に、ヤズーが青白い顔で賛同した。

「レノ、これらの施設の中で規模が大きいのはどれだ。それと……クラウド、ウータイの反神羅勢力の連中がヒントを残していたな」

「ヒントっていうか……ただ、連中は、『孤児院にはウータイの子どもはひとりとしていない』と言ってた。調べたのかどうかはわからないけど、少数民族の収容がほとんどない教会か寺院……の可能性は高いのかな」

「全部調べている時間はない……!レノ、どうだろうか?何か心当たりは……」

 ヴィンセントに泣きつかんばかりに詰め寄られて、レノは必死に考え込む。もちろん、レノだけじゃない、この場にいる他のタークス、ルードとイリーナも真剣そのものだった。

 

 

 

 

 

 

「みせしめのためなら、小規模な寺院というのは考えにくいね」

 とヤズーが言った。

「規模が大きいのは聖カタリナ……が中心地で一番デカイぞ、と。それから聖ヘレナ、ちょっと離れてるけど、聖アグネスもこの前、かなり多くの子どもたちを引き受けた」

「レノ先輩、聖ヨハネは?西側では一番大きいですよ」

 そう付け足したのはイリーナだった。

「だったら、聖マリアと聖セバスティアヌスも……規模としては同等だ」

 ルードもいう。

「よし、時間がない。すぐに動くぞ。聖ヨハネ、マリア、セバスティアヌス、それから地理的に離れている聖アグネスはおまえらタークスと神羅の連中に任せる。総動員してルーファウスを捜させろ。それと爆弾の処理を確実にさせるんだ」

 セフィロスがするどくそう言った。

「じゃあ、アンタたちは……」

 レノが何か言う前に、セフィロスが続ける。

「ヴィンセント、おまえはこの場所で待機だ。重要な連絡事項はここに入れさせろ」

 そういうと、ヴィンセントも素直に頷いた。

「俺たちは一番可能性の高そうな中心地へ行く。おい、銀髪三兄弟、テメーらは聖ヘレナだ。クラウド、おまえは俺と一緒に聖カタリナ寺院に行くぞ!可能性がありそうな場所はすべてチェックしろ。これだけ場数を踏んできたんだ。怪しいと思える箇所には勘が働くだろう。定時連絡は一時間ごとだ、カタリナから01番……」

 テキパキと指示をするセフィロスに、俺たちはひたすら頷き返して、タークスの連中は部屋を飛び出していった。これから招集をかけて四つの教会を回らなければならないのだ。人数では圧倒的に俺たちに勝っているとはいえ、タイムリミットが短すぎる。

 

「情報は必ず共有させろ、ヴィンセント、頼んだぞ」

「わ、わかった」

「イロケムシ、時間がねぇ。聖ヘレナはかなりでかい寺院だ。……大丈夫だろうな」

 含むようにセフィロスが、ヤズーに声を掛けた。

「もちろん、がんばるよ。それより、そっちふたりで平気?」

「問題ない。爆弾の処理はいざとなったら、とにかく街から可能な限り離れた場所で爆破させるんだ。いいな?」

「オッケー。ルーファウス神羅の命もかかってるからね。さっそく出よう。カダ、ロッズ行くぞ」

 三人は上着を手に取ると、跳ぶようなスピードで別荘を後にした。