20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<22>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

 

 

「う……ぐっ……」

「ルーファウス、しっかりしろ!」

「あ……セフィ……ロ……」

 掠れた声が痛々しい。唇の端にも血が滲んでいる。

 脇腹を庇うようにしているのは、以前の傷口が開いたせいかもしれない。

「うっ……」

 と、低くルーファウスが呻いた。

「クラウド、爆弾を捜せ! ルーファウスのことはオレに任せろ」

 セフィロスの言葉に、俺は慌てて立ち上がった。

 いくらルーファウスを見つけても、ここで大爆発が起これば全員終わりだ。ルーファウスがここにいたということは、爆弾も間違いなくこの屋根裏部屋に設置されているに違いない。

「ルーファウス、しっかりしろ。よく頑張ったな。ああ、いい。無理をするな」

 セフィロスが丁寧にルーファウスの面倒を見ている。

 彼の負傷は俺のせいだ。……取り返しのつかない怪我をしていなかったのが、不幸中の幸いというべきだろう。

 

「ルーファウス、大人しく寝ていろ。大丈夫だ、必ず爆弾を処理する」

 セフィロスは黒いコートを脱ぐと、冷え切ったルーファウスを包み込んだ。

「クラウド、急げ、もう三十分もないぞ!」

「わかってるよ!」

 セフィロスと手分けをして捜す。

 屋根裏の梁、古くなった書棚、窓の縁……

 

 ない……どこにもない……!

 間違いなくここにあるはずなのに!

 

 ルーファウス確保の連絡はおこなえたが、爆弾処理ができなければどうしようもないのだ。どこだ……どこにあるんだ……!

 

 そのときだった。

 傷だらけのルーファウスが、ずるずると床を這ってこちらに呼びかけてくる。

「どうした、ルーファウス!無理に動くな」

「セ、セフィ……ロス……!ば、爆弾は……」

「ルーファウス? どうした」

「ばくだ……ん……」

 はぁはぁと荒い呼吸の中、ルーファウスは衣服の前を震える指先で必死にはだけた。

「ま、まさか……」

 ぎゅっと息が詰まる。

 

 あろうことか……

 あろうことか、ルーファウスの身体に爆弾が巻き付けられていたのだ。白い包帯の下に、時限爆弾はうっそりとその顔をのぞかしていた。

 滲み出した血が、無骨な爆弾を汚しているその様は、胸が悪くなるような残虐性を感じさせるものだった。

 

 チッチッチッという、時を刻む機械音が耳に響く。

 

「クラウド、ルーファウスを確保!ヴィンセントに連絡を入れろ!」

「わ、わかった」

「医者を待機させるのも忘れるな。俺はこの爆弾を何とかする」

「う、うん、でも、セフィ……時間が、時間がもう……」

「大丈夫だ、落ち着け」

 セフィロスがするどく応える。

 もう、陽が昇り始める。ルーファウスの身体から爆弾を取り外したとしても、それは時限爆弾なのだ。そのときがきたら爆発する。

 想像したものより、小ぶりで平たいチタンでかたどられたそれは、もしかしたら水素爆弾かもしれない。この寺院を木っ端みじんに吹き飛ばす目的ならば、強力なものを使うはずだ。

 

「クラウド、さっさとしろ!」

 セフィロスに怒鳴りつけられ、俺は慌てて携帯を手にした。