20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 クラウド・ストライフ
 

  

 

「ヴィンセント! こちら聖カタリナ寺院、ルーファウスを確保した」

「ク、クラウド? よかった……それで爆弾は……? 爆破は阻止できたんだな!」

「い、いま、セフィロスが爆弾処理してる。なんとか……してくれると思う」

 俺はそんな風に願望を述べることしかできなかった。

「あ、後、三分……」

 刻々と減りゆくタイマーをのぞき込み、俺はそうつぶやいた。

「三分!?」

 ヴィンセントが頓狂な声を上げた。

「外れた!」

 それにセフィロスの声が重なる。

「クラウド、ルーファウスを頼むぞ!」

「セフィ!?」

 ヴィンセントとの通話を切るのも忘れ、俺は大声を上げた。

 たとえ爆弾を外せたとしても、時限装置を切ったわけではない。あと三分……いや、二分後には大爆発するのだ。

 セフィロスが、時限爆弾を手にすると、彼の背中に黒い翼があらわれた。

「セ、セフィ……」

「海の上で爆破させる」

 セフィロスがするどくそう言った。

 

「セ、セフィロス……」

 ルーファウスが掠れた声で彼の名をつぶやく。

「クラウド、すぐにルーファウスを医者に診せろ。後のことは頼んだぞ」

 念を押すようにそういうと、黒い翼がザワリとはためいた。

 

 

 

 

 

 

 聖カタリナから、片翼の天使が飛び立った。

 彼は海の方角に向かって、空を斬って行く。

 

「セフィロス……セフィロス……ッ!」

 ルーファウスが手を伸ばす。

「ルーファウス、ダメだ、無理すんな!」

 身体を起こし、傷口の開いた場所に、彼のジャケットを押しつける。その上からセフィロスの黒コートを羽織らせ、迎えがくるのを待つしかない。

 そう、今、俺たちに出来ることは何もないのだ。

 

 そして、約二分後、グワッと地を揺るがす爆音とともに、真っ赤な花が空に咲いた。

 

「セフィロス、セフィロスーッ!」

「落ち着け、ルーファウス。大丈夫だ、大丈夫だよ。セフィなんだから!」

 満身創痍でありながら、窓から身を乗り出すルーファウスを、俺は必死に止めた。

 ……そうだ、大丈夫なはずだ。

 あの程度のことで、セフィが死ぬはずないじゃないか。

 

 俺は必死にそう考える。

 だが、空を揺るがし大地を走る衝撃は、とんでもない爆発の威力を示しているということで……

 いくらセフィでも……セフィでも無事ではいられないのじゃないかと考えてしまうのだ。

 通話中になったままの携帯電話を、無意識に拾い上げる。

 ヴィンセントの声が、何かを叫んでいるが、俺は通話を継続する余裕がなかった。