20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<24>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

 

「セフィロス……!」

 ずっと眠り続けていたルーファウスが、かばりとベッドから身を起こした。

 俺は乱暴にならない程度の力で、細身の身体を両手で押さえた。

「ルーファウス、以前の傷口が少し開いたんだ。無理に動くな」

「ク、クラウド? セフィロスは……セフィロスは……」

「今、必死に捜してる。大丈夫だ、きっと見つかるから!」

 力を込めてそう告げる。あれからルーファウスは丸二日ほど眠り続けたのだ。どれほどこの細い身体にダメージがあったのか、それだけでも理解できる。

 俺も皆と一緒に、セフィロスの探索にでかけたかったが、最後までルーファウスの守り役を頼むとレノたちに言われたからだ。

「セフィロス……!」

 ルーファウスは両手で顔を覆うと、苦鳴のような声を振り絞った。

「ルーファウス、早く良くなってくれ。セフィもきっとそう思ってる。大丈夫だ、セフィはこの程度のことじゃ死なない。絶対に生きている」

「だが……クラウド!あの爆破の瞬間を見たか……?海の上だったからよかったものの、屋内にいた私たちにもその衝撃が伝わってきたんだぞ。ただの爆弾じゃない。ものすごく威力の強い……」

「落ちつけって。セフィはこれまでも何度もこんな修羅場を抜けてきたんだ。アンタだって知っているだろう」

 噛んで含めるようにそういうが、ルーファウスは頭を振る。目覚めたばかりで興奮状態にあるのだろう。

「セフィロスを捜しにいかなければ……私も、彼を……」

「動くなって!おまえのほうこそ、ただじゃすまなくなるぞ」

 俺は部屋の隅に控えていた医師らに目配せをした。

「ルーファウス、頼む。アンタはゆっくり休んでいてくれ」

 そう告げて、ルーファウスを身動きとれないようベッドに押しつけた。その隙を見計らって、医師が鎮静剤を注射する。

 細い身体が寝台に沈むのを見届けて、俺は立ち上がった。

 

 やはり、俺一人で屋内に留まっているのは、我慢できなかったのだ。それに一応、ルーファウスが目覚めるまではきちんと付き添ったという大義名分もある。

 俺は控えていてくれる医師らに、くれぐれもと言い置き、瀟洒な部屋を後にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 フェンリルを運転し、海岸沿いまで歩くと、神羅の船が着岸したところであった。

 船から、ヤズー、ヴィンセント、そして神羅ではタークスのメンツが降りてきた。

「……ヤズー、どんな感じだ」

 俺は声を掛けられるよりも前に、彼らの側に駆け寄ると、もっとも理性的であろう家族に問いかけたのであった。

「うん、けっこう沖のほうまで出たんだけどね。方向違いなのなのかなぁ」

 この物言いで結果がはかばかしくないのがわかる。

「兄さんの方こそ、ルーファウスのほうは?大丈夫そうなの」

「ああ。……そうだ、レノたちも聞いてくれ。さっきルーファウスが目覚めた。今は落ち着いて寝ているはずだ。医師団も付き添っている」

 苦情を言われる前に、俺は早口でレノにそう告げたのであった。

「……セフィロスのことはどう言ったんだよ、と」

「なにも言えなかったよ。とにかくみんなで必死に捜しているとだけ……」

 俺は口ごもりつつもそう告げた。

 皆に続いて、ヴィンセントも降りてくるが、彼も真っ青だ。

「クラウド、もう一度爆発のことについて話してくれよ、と。なんせ、現場を見ていた連中のほうが少ないんだからな」

 レノはそういうと、探索メンバーを集めた。

 もっとも、捜す相手がセフィロスということなので、神羅でも事情をふまえたタークスの連中と、我が家の者どもが集合したという話なのではあるが。