20数年前から愛してる
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<25>
 
 クラウド・ストライフ
 

  

 

「『聖カタリナ』寺院の位置がここだろう。その屋根裏部屋から飛び立って、海に向かったんだ」

 俺は目の前の地図を見ながら指を滑らせた。

「方向はあやまっていないようだが……」

「ただ、あのときはルーファウスを引き留めるのと、時限爆弾のことで頭がいっぱいで……セフィは全力で海に向かったとだけしか……」

「ここから、海岸へ向けての最短ルートは、この方向なんだぞ、と」

 レノが赤ペンでラインを引く。

「ああ、わかる。俺にもそう見えたし、セフィロスもそっちの方向へ飛んだとしか……」

「ク、クラウド……よく思い出してくれ。その方面は船を出したが、爆弾の残滓もみつからなかったんだ。セフィロスはどのあたりまで飛べたと思う?」

 そう訊ねてきたのはヴィンセントだ。この数日を心安らかに送れていないせいなのだろう。白い顔にはまったく色味がなく、目の下にはクマが張っている。

「そんな沖の方までは飛べなかったと思うんだけど……考えたくないけど、爆弾が海に落ちる前に、爆発したとしたら?その衝撃で吹き飛ばされた可能性はあるよね」

「そいつはオレも考えたぞ、と」

 と、口を挟んだのはレノであった。

「アンタらの話からして、飛び立った時点での時限爆弾の残り時間が少なすぎる。セフィロスが最速で海に出たとしても、上空からそいつを投下して、着水する前に爆発した可能性もある。となると、セフィロスがあさっての方向に吹き飛ばされていてもおかしくはないぞ、と」

「ああ、セフィロス……!」

 ヴィンセントが両手で顔を覆う。

「ね、ヴィンセント、ちょっと休んだ方がいいよ。顔真っ青だよ。大丈夫、相手はセフィなんだから。必ず生きてるよ」

 俺はうなだれたヴィンセントに、そう話した。

「そうだぞ、と。ヴィンセントさん、あれからほとんど出ずっぱりだ。体調を崩すようなことがあっちゃ元も子もないぞ、と」

 レノが毛布をヴィンセントの肩に掛ける。

「そうだね、兄さんたちの言うとおりだ。ほら、行こう、ヴィンセント」

 俺たちの後ろから、ヤズーがひょいとヴィンセントをさらっていく。彼もずっと気になっていたのだろう。

 ヴィンセントがおとなしく屋敷に引き取ってくれたせいか、現場の緊張がやや解けた。

 

 

 

 

 

 

「それにしても……正直意外だぞ、と」

 レノが独り言のようにそう切り出した。

「あのセフィロスが、教会の孤児を守るために、あんな無茶をするなんてよ」

「……セフィもいろいろあって変わったんだよ。それに孤児だけじゃない。ルーファウスを守るってのもあったんじゃないかな」

 俺はレノにそう応えた。

「こんな危険をおかしてまでかよ。どうもオレの知っているセフィロスとは、違うイキモンになっているような気までするぞ、と」

 頭を横に振って、レノが言った。

「茶化すなよ。……まぁ、ヴィンセントの力が大きいとは思うけど、もともとセフィは弱いモンを庇うようなトコあったじゃん。今度のもそんなところなんじゃないのか」

「なるほどな。だが自滅しちゃおしまいだろうがよ、と」

「……生きてるよ。もしなんかあれば、セフィの思念体が感づくだろ。たぶん、今はちょっと動けないとかそんなところなんじゃないかな。場所さえわかれば迎えにいけるんだけどね」

「……迎えに……か。…………そうかッ!」

 レノが唐突に声を上げた。

「なんだよ」

「島だッ! 沖の方に無人島がいくつかあるだろ。まだあっちのほうまでは調べていない」

「その案、もらいだッ」

 俺とレノはすぐさま船に乗り込むと、皆を率いて沖に向かった。