〜 ディシディア ファイナルファンタジー 〜
 
<21>
 
 スコール・レオンハート
 

 

 

「あ〜、もう日が暮れるなァ。今日も空振りか〜」

 緊張感のないジタンの声。

「そうッスねぇ〜。そろそろ戻るッスか?」

 ティーダの声にも疲れが混じる。

 こうも探しているのに、手がかりすら掴めないとは……上手くいかないものだ。

 ティーダが我々のもとに戻ってきてから、すでに一週間以上経つ。

 当初、ふたたびクラウドを狙って急襲してくると考えられていたセフィロスだったが、あれ以来姿を見せない。

 もっとも、この世界の広ささえわからぬ現状、こちらの思い通りに遭遇するのは非常に難しいのかもしれないが……

「余り遅くなると、カオスの力が増す。……そろそろ戻るか」

「そうだね。……クラウド、大丈夫? 疲れてない?」

 セシルが傍らを歩く金髪の青年に声を掛ける。彼らしい気遣いにクラウドも大分うち解けたようで、素直に答えている。

 クラウドの話によると、セシルは彼の恋人に似ているというのだ。姿形というよりも為人が。

「スコール、お腹空いた」

 クラウド本人の言葉に、俺はやれやれと頷き返し、皆にも声を掛けようとしたとき……

 まさに、口を開けた瞬間だった。

 

 漆黒の影が、空を斬った。

 我々一行をとりまく『気』が変わる。

 冷たくて重い…… カオス側の闇の気だ。

「おい!」

 俺が声を掛けるまでも無かった。

 歴戦の勇者らはすでに抜刀し、うごめく黒い気に向かい合っていた。

 それは徐々に形を為し、長い銀の髪をした、冷たい美貌の男に変わった。

 

 

 

 

 

 

「……セ、セフィ……」

 クラウドの息を呑む気配が伝わってきた。

「……ティーダ!」

「うっす」

 俺とティーダで、彼を隠すように前に立つ。

「久しぶりだな、クラウド……」

 低くささやくような声音…… だがどこか毒々しい蜜を含むセフィロスの声に、俺たちは身を引き締めた。

「セ、セフィ…… あ、あの……俺……」

 まだ説得を試みようというのか、クラウドが言葉を掛けようとする。

「下がっていろ、クラウド」

 俺はすばやくそう言い聞かせた。

「フン、またまたナイト登場か。おまえも酔狂な輩だな。スコール・レオンハート」

「……この前はティーダが世話をかけたようだな」

「おい、ちょっ…… スコール! なんスか、それ〜ッ!」

 一歩一歩間合いを狭めてくる、長身の男に俺はそう言った。横でティーダがわめくが無視を決め込む。

「ああ、まったくだ。父親以上に騒々しい輩で辟易とした」

「ちょっとォ! アンタも何なんスか、セフィロスさん! 一方的に攫っていったクセにシツレーなっ!」

「今日は相手を間違えるつもりはない」

 フッとセフィロスが微笑った。

「さぁ、私と来い……クラウド」

 黒手袋で覆われた、形の良い手がクラウドに差し伸べられる。

「セ、セフィ……」

「どうした、クラウド。早くしろ」

「セ、セフィ……頼むから話を……」

「素直に私の側に戻ればそれでよし…… でなくば、この場で闘え」

 身の丈を越える細身の長刀を構えるセフィロス。

 セフィロスの目にはクラウドにしか映っていない。

 

 今こそチャンスだ……!!

 

 俺はその瞬間、

「今だ、行くぞッ!!」

 と叫んだ。

 

『俺は利き手の左腕。

 ティーダは右腕。

 ジタンが左足。

 セシルは右足』

 

 クラウドを残して、俺たち四人は一斉にセフィロスに飛びついたのであった。