〜 あの懐かしき日々 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
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 クラウド・ストライフ
 

 

 

 

  

 

 常夏の島、コスタ・デル・ソル。

 俺の住むイーストエリアは、島を分ける四つの区域の中で、もっとも別荘の多い土地柄だ。

 港町として発展しており、歓楽街もあるノースエリアと比べると、片田舎の印象は拭えないが、むしろこの場所に家を買って良かったと思っている。

 なんせ、一緒に住む最愛の人は、お世辞にも社交的といえるタイプではないし、人疲れしてしまう性格だから、のんびりとしたイーストは彼の生活圏として最適である。

 バカンスのシーズンは少々騒がしくなるのは否めないが、オフシーズンの今などは、本当に静かでのどかな田舎町といった風情なのである。

 

 ……とはいうものの、俺の家に限っては、のどかでもマッタリでもない。

 招かざる同居人が居つき、すでに六人の男がここで生活している。部屋数はそこそこある家だが、なんせ平均以上の体格の男ばかりだ。

 いいかげん、鬱陶しいし、連中がやってきてから、我が家は様々なトラブル&ハプニングに巻き込まれている。

 つい先日は、俺のヴィンセントと、飼い猫のヴィンの人格が入れ替わるという、マンガみたいな出来事があった。

「ああ、もぉ、何事も起こらないでくれよ〜……」

 と、日曜日の昼下がり、俺はヴィンセント手製のおやつを食べながらつぶやてみた。

「……クラウド……洗濯物だが、部屋に持って入ってもいいだろうか?」

 静かな声で語りかけて来る人。

 そう、この人こそ、ヴィンセント・ヴァレンタイン。俺の生涯の恋人である。

 綺麗で大人しくておっとりしていて……非の打ち所のないというのは、こういう人物を指すのだろうと思う。

 敢えて難をいうならば、あまりにも思慮深く、思いやりに溢れすぎて、自分の意志をはっきりと口にしないことが多い……かな?

 彼は俺のパジャマとシーツのセットを抱えて、腰を浮かしかけていた。

「あ、ありがとー、ヴィンセント! いいよ、自分でやるし」

「……おまえは空いている場所に放置するだけだから、任せられない……」

 ボソボソと低くつぶやいて、ヴィンセントは俺の洗濯物を抱え、居間を出ていった。

「あー、もぉ、ヴィンセントは甘いなァ〜」

「甘い甘い。アホチョコボは甘やかすと、どんどんつけ上がるのにな」

 むかつく台詞は、ヤズー、そしてセフィロスの順番だ。居候の分際で、エッラソーに!

「うっさいな! いつもは自分で片づけてるもん」

「片づけてるって、空いてる場所に放置するだけなんでしょ? 兄さん、忙しいのはわかるけど、自分の部屋の掃除くらいちゃんとしなよね」

「わかってるってば」

「ヴィンセント、掃除機もかけられないって困ってたよ」

 ヤズーが苦情を述べる。彼はヴィンセントと一緒に家事一般を担当してくれているのだ。

 わかってんだよ……わかってるんだけどさ〜……

「あー、言っても無駄だ、イロケムシ。こいつはガキの頃からだらしなくてな。脱いだ下着とか、そこらに放りっぱなしだったんだ」

「ちょっ……セフィ! ヤなこと言わないでよ! 神羅のころは寮だったから、収納が少なくて仕方なかったんだもん」

「パンツも仕舞えないくらい狭かったのか?」

「うっさいなッ! セフィのVIPルームと一緒にしないでよ! もういい!俺、ヴィンセント手伝ってくるッ!」

 セフィロスのからかいの魔手から逃れるために、ヴィンセントの後を追いかけようとした。

 と、ちょうどその時だったのである。

 

 

 

 

 

 

 ズダダダダダダ……! 

 

 階段から落ちるような、雪崩の音。

 だが、南国仕様の平屋づくりの家だから、二階などありはしないのだ。しかし、ほとんど地響きといえそうなほどの騒音は、本当に二階から巨躯の男が滑り落ちたような衝撃だったのである。

「ちょっ……ちょっと、なに、今の……」

「ガキどもじゃねーのか?」

 と、どうでもよさそうなセフィロスのセリフ。

「違うよ、カダとロッズは昼間から出掛けてるでしょ? 夕飯要らないって言ってるくらいなんだから」

「……あッ!! し、しまった!」

 床で転がっていた俺は、弾けるように飛び起きた。

「なに? 兄さんの部屋?」

「たぶん! ヴィンセント! ヴィンセントッ!?」

「何、どうしたっていうのよ」

 ダカダカと自分の部屋に向かって走り出した俺の後を、ヤズーがくっついてきた。

 出来れば、来て欲しくなかったけど、そうも言えない。

 なぜなら……おそらく……この地響きを起こすような雪崩の音は……