〜 詩人の夢想 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<10>
18禁注意
 ジェネシス
 

 

 

 白磁の頬に、うっすらと赤みが差す。

 銀の髪が、四方に広がり、まるで生き物のように静かにさざめいた。

 

 ……そういえば、俺の知るこの世界の『セフィロス』を、こういったシチュエーションで見たことはなかった。

 だらしない格好で、横になっている様は見飽きたほどだが、彼がちゃんと目覚めていて、こんなふうに吐息の触れ合うような距離というのは初めてだ。

 

 ああ、そういえば、『セフィロス』はこんなにも美しい人だったんだなぁ……

 

 心の中で、正直につぶやく。

 そしてすぐに、曲がりなりにも文章を書いている者としては、あまりにも平凡な形容詞を使ったことを恥じた。

 

「……おい、貴様……何を呆けている……」

 荒い吐息をかみ殺し、セフィロスが恨みがましく睨み付けた。

 俺は空事を考えていたわけではない。まさしく目の前のセフィロスと、幼い頃から知っているこちらの『セフィロス』を想っていたのだが……ここは口答えなどしない。

 気位の高い彼に、へそを曲げられてはたまらない。しかもこの状況下で。

 

「呆けて……は、ひどいな。君があまりにも艶麗でね。ついつい見蕩けてしまった」

「ふ……ん。おまえにとっては、見慣れた顔だろう。言葉の……上手い輩だ…… ッ……」

 頬に掛かった幾ばくかの髪を、指先で掬い上げる。こめかみから瞼に口づけながら、指を徐々に滑らせる。

 宥めるように脚を撫で、大腿の間に手を滑り込ませた。

 さきほどまでより、ずっと奧の……尻の方に。

「…………ッ」

 セフィロスが息を飲んだ。

 俺の指が、最奧に達したからだろう。

 

 まだ濡れていないそこは、堅く窄まったままだ。

 彼の男性の部分は、十分過ぎるほどに主張しているが、やはりそこでの経験は少ないのだろう。

 指先でゆっくりと襞を辿るように愛撫したが、彼は困惑した様子で、眉根を寄せただけであった。

 

 

 

 

 

 

「痛い……?」

 脇腹を啄みながら、俺は小さく訊ねた。

「……わから……ない。痛くはない……」

 眉を寄せたまま、セフィロスがつぶやく。

「なにやら……もどかしいような……」

 ハァ……と止めていた息を大きく吐き出す。

「……変な気分……だ……」」

 やはりセフィロスは、恥じらう様子を見せない。

 為すがままに脚は軽く開いたままだし、立ち上がり掛けた欲望すら隠そうとはしないのだ。

 だが、自身でさえ見ることのない最奧を、他人に探られるのは不安なのだろう。素直に欲求を口にしていた先ほどとは、打って変わって大人しくなった。

 左手の中指で入り口付近をくすぐり、右手を熱く立ち上がったソレに添えた。

「あ……はッ……」 

 ビクンと長身が震え、滲み始めた先走りが垂れた。

「ただ触っただけだよ。……ずいぶん、いい反応だね」

「……おまえが焦らすからだ。ハァ…… 早く……いきたい」

「本当に君はストレートだね。でも、可愛い。幼い頃から知る、あの『セフィロス』とはまったく異なる意味で……だけどね」

「ハァッハァッ……あ奴のことなど、どうでもいい。……おまえだとて、そう長くは……保たぬのではないのか?」

 挑戦的な言われように、思わず苦笑した。

 十分、自分のものが高まっている自覚があったからだ。

 じりじりと熾火のように燻り続けた熱が、徐々に下肢に移動しつつあることに。そして熱を含んだソレが、時折セフィロスの脚に触れていることに。

 

「ああ……君ほどではないけど、俺も十分……硬くなってる。ある意味、こっちのほうが重傷だよね。まだほとんど触れられていないのに、こんな状態なんだから」

「ならば、早く私を悦ばせろ……! もっと強く……手を……」

 ゆるゆると扱き上げられるのが不満なのだろう。

 どれほど高ぶっていても、この程度の刺激では、絶頂に達することはできない。色に酔った艶めかしさと、極められない苛立ちが、氷色の瞳に同居して揺れる。

 

「……徒めいて……綺麗だね、セフィロス」

「世辞は良い…… 我らはそういった間柄ではなかろう。ただ……欲を満たしたい。早く……出させてくれ、ジェネシス……」

 生殺しの状態に、セフィロスの手が下肢に伸びた。高ぶりを緩く包んだ俺の右手を握りしめる。もっと激しく動かそうと、爪痕が残るほどに強く。

「ハァハァ……ッ! 私に従え……! もっと……もっと強く……! 強く……してくれ……!」

 セフィロスは自慰行為にも似た快楽に耽る。半ば唇を開けたままの恍惚とした表情に、俺の身の内がドクンと脈打った。

 ダメだ、この状態で先に逝くなんて許されようはずがない。

  俺は気づかれぬよう深呼吸をして、ほんの少し余裕を取りもどす。

 

「あ〜できれば一緒に逝きたいんだけど……ねェ、セフィロス」

 ねだるようにそう告げるが、彼はあくまでも今の快楽を追求したいらしかった。

「……そんなことは……どうでもいい」

 つれないセリフに、むくむくと意地悪心が甦ってくる。

 この人に、『恋をしている』わけではない。女神への愛とはまったく異なるのだ。

 だが、なぜか心惹かれる。名を呼ばれたい、この身体を欲しいと希わせたい……

 

 久方ぶりの激しい欲求に、思わず口角を持ち上げていた。

 ずっと昔……チョコボっ子に怖いと言われた笑みを口元に滲ませて。