〜 詩人の夢想 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
18禁注意
 ジェネシス
 

 

 

 

「おい……ジェネシス……ッ」

 彼の指が、下肢で蠢く俺の髪に差し込まれる。

 焦れた所作に頬が緩むが、そうも言っていられない。

 なんせこの『セフィロス』相手だ。

 愛撫を促して、髪に指をからめてくるのは、甘え仕草のひとつであるが、彼の行動はそのレベルでない。

 

「痛ッ…… セフィロス、痛いよ」

 遠慮会釈ない力で引っ張られ、髪の付け根がギシギシと音を立てた。

 ちょっと……本気で痛いのだが。

「セフィロスってば。俺は年をとっても、髪は大事にしたい派なんだけど」

「自業自得だ……! 早くしろと言っているのにッ!」

 言葉を飾ることなく、掠れた声で低く唸った。

 またもや、グンと髪を引き寄せられる。

「イタタタ…… あぁ、もう仕方がないなァ」

 一度だけで済ませることもあるまい。

 何よりこの人は快楽に貪欲だ。未知の場所への刺激にさえ、不安を見せつつも、動じることはなかった。

「……蜜がどんどん溢れてくるね。君の味はどんなだろう?」

 硬く立ち上がったものの先端に舌を絡めた。

「あぁ……ッ!」

 嬌声が上がる。

「……これがお望みだったんだろう? まだ出さないでくれよ。顔にかかってしまう」

「…………ッ」

 からかわれていると理解したセフィロスは、ギリリと歯音を鳴らせた。

 

 さすがに、もうそろそろ限界だろう。一度目はもう許してあげよう。

 震えるソレを、俺は口腔に含んだ。

 今にも弾けそうなモノの質量は篤く、さすがに長く咥えているのは難儀そうだ。

「あ……あぁ……ッ いい……心地良い」

 蕩けた声が耳に伝わる。

 あの冷たく整った容貌が、悦楽に酔うのを上から眺めてやりたかったが、残念ながらそれは成し得なかった。

 俺とセフィロスではほとんど身長が変わらない。ふたりしてズバ抜けた長身なのだ。

 

 

 

 

 

 

 喉奧まで呑み込んで、ズルリと引き出し、射精を促すために、舌をリズミカルに使ってやる。

 軽く甘噛みし、張った先端の裏を舌でつつくと、ぶるりと胴が震えた。

「あぁッ……もう……ッ」

『出る』と、俺に告げたかったのだろう。

 だが、何よりも張り詰めたモノ自身が、前兆を知らせてくれた。

 

「ああぁッ!」

 ひときわ高い声を上げ、彼は俺の口腔内で弾けた。熱の塊が喉奧に叩き付けられる。

 迷わず嚥下し、未だビクビクと快楽の滴を零すそれを、舌先で舐め清めてやった。

 

「あ……はぁ……はぁぁ……」

 だが、当の本人は、そんなかいがいしい俺の奉仕にも気づかず、満足げな溜め息を吐き出すばかりだ。

「セフィロス……?」

「ああ……良い。ここち……よい」

 せわしない呼吸の中で、彼はそうつぶやいた。

「とても……上手いものだな、ジェネシス……」

 お褒めの言葉まで授かり、脱力してしまう。

 この人は自分の快楽しか追うつもりがないのだろうか。俺がまだ一度も達していないことすら気がついていないのではないか?

 

「フゥ…… 心地……良い」

「いや、あのね、セフィロス。俺、まだ全然……」

 抗議の声を上げたところ、面倒くさそうに舌打ちをした。

「ああ、わかっている。だが、私はおまえのように器用ではない。どこぞに擦りつけて、出してしまえばいい。私の身体を使うことを許す」

 この上なく偉そうに宣うと、気怠げに言葉を続けた。

「……ただし、口はダメだ。気持ちが悪い」

 彼の吐き出したものを、たった今嚥下した俺に向かって、なんの躊躇もなく言ってのけるのだ。

 これはこれで、もういっそ清々しい。

 焦れていたときの顔は、可愛らしくさえもあったのに。

 

「じゃあ、セフィロス。もう一度、気持ちよくしてあげるよ。そして今度は、一緒に……ね?」

「……どうでもよい」

「さっきの続きをしよう。まだ、こっちの味は知らないだろうしね」

 弛緩したまま寝そべった肉体は、淡く色づき艶めいていた。

 月光のように青白い肌が、ほんのりと薄桜色に染まっているのだ。下肢がてらてらと濡れているのが、その身の美しさと相まって、むしろ淫猥に見える。

 放り出された両の足の間を割開くように、俺は身体を覆い被せた。

 これで、彼は動けない。

 もとより、逃げるつもりもないのだろう。

 ギリギリまで焦らされた彼は、解放時の強烈な快感に未だ、息も整わぬありさまだ。指一本すら、動かすのは煩わしいといった風情であった。

「……先に君だけ逝かせてあげたんだ。さっきよりも大分和らいだろう?」

 俺の唾液と彼の吐き出したもので、脚の付け根から奧まで濡れそぼっている。慣れぬ相手とはいえ、潤滑剤は十分だ。

 それを中指で掬い上げ、奥まった部分に滑り込ませた。

 

「おい……貴様、どうしても、そこを使うと?」

 剣呑な声音で、セフィロスがつぶやいた。

「なるべく痛くないようにするから、ちょっと念入りにね」

 淵のあたりを指の腹で、丸く撫でる。先ほどよりもずっと指の滑りがいい。

「私は……そちらの経験は……」

「じゃあ、いい部分を探してあげるさ」

 問答するのも鬱陶しいというのだろう。

「痛かったら、貴様を消す」

 独り言のようにつぶやくと、彼は『とりあえず』、大人しくなってくれた。