〜 詩人の夢想 〜
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<12>
18禁注意
 ジェネシス
 

 

 

 

「うッ……」

 形の良い眉を寄せ、セフィロスが低く呻いた。

「痛い?」

「……痛くはない……が……」

 はぁっ、と詰めていた息を吐き出す。甘く色づいた吐息を口移しで味わってみたいが、彼の方はそれどころではないのだろう。

 痛みはないといっていたが、慣れない感覚をもてあましているといった様子だ。

 一度、吐精はさせたものの、経験がないといっていた、彼の後ろは固く窄まっていて、まずはそこを綻ばせなければならない。

「無理にはしたくないから、力を入れないで楽にしていて」

「わ、わかっている」

 と、かろうじて返事をしたが、後ろを探られる違和感はどうにもし難い様子であった。

 

 軽くため息を吐き、俺はベッドの横のチェストに手を伸ばした。

 禁じ手と言われれば、そのとおりと謝るしかないが、麝香を混ぜ合せた香油を使うことにした。

 

 一晩のラブ・アフェアの相手の中には、男は初めてだという者もいる。

 そういうときに使ってやると、大分楽に交わることができる優れものだ。まさか、もうひとりの『セフィロス』相手に使用することになるとは思わなかったが、これでつらい目にあわせずにすむ。

 おまけに、「痛かったら消す」とまで宣告されているのだ。

 双方のためにも、この媚薬を役立てるのは良いことだと思われた。

 

「ん……くっ……」

 声を漏らすことが恥ずかしいと考えるような人には見えないが、さきほど俺が奉仕したときとは異なり、今度はかたくなに歯を食いしばって堪えている。

 受け身側で感じさせられるのは、彼にとっての屈辱になるのだろうか。

「ふ……あ……」

 眉を寄せて、苦しげに息を吐く様は、ぞくぞくするほどの色香を感じる。コスタ・デル・ソルの、俺のよく知る悪友と同じ顔をした人物とは思えない。

 それとも、こっちのセフィロスも、こんなふうに愛してやれば、快楽に身を戦慄かせるのであろうか。

 

「すぐ良くなるから…… 力を抜いて、腰を引かないで」

「クッ…… んぅ……」

 小瓶の口をそっと開き、右手の指先に塗り込める。さらに手のひらに滴を垂らした。

 ふわりと薔薇と麝香の薫りが鼻孔をくすぐった。

「セフィロス……後ろを向いて」

 耳元でささやく。今の彼にはそんな言葉でさえ刺激になるのか、びくりと身震いした。

 

「このままだと、苦しそうだから……もっと、気持ちよくしてあげる」

「な……に……」

「いいから後ろを向いて、腰を上げて」

 この気位の高い人には、やや無理な注文だとは思う。ようはその場に這って、脚を開けと要求しているのだから。

「なんだと……きさま……」

 案の定、氷のようなまなざしで、ギロリと睨み付けられる。

「このままだと、セフィロスも苦しいだろ。ほら……前も、もうこんなに固くなってるし」

 見かけによらず貪欲な身体を、香油をまぶした方の手で撫でさする。

 固く尖った胸の突起を滑り下り、引き締まった脇腹、そして熱をもったその部分にも、たっぷりと塗り込めた。