Radiant Garden
〜コスタ・デル・ソル in ストライフ一家〜
<11>
 
 ジェネシス
 

 

 

 

 

「……やっぱり、その刀を持っているとおまえらしく見えるな、セフィロス」

 きちんと手入れをした正宗を背にすると、その長身と体格のすばらしさで、いかにも『英雄』という雰囲気になる。

「フン、当然だ。前にも言ったがな、ジェネシス。ホロウバスティオンには13機関だの、ハートレスだのという化け物が巣くっているらしい。まぁ、オレの相手じゃなかろーが、テメーは注意しろよ。怪我なんざさせたら、イロケムシあたりに何を言われるかわかったもんじゃねェ」

「ハイハイ、もちろんわかっているよ。女神とも約束したしね」

「よし、ご託は終めーだ! 行くぞ!」

 待ちきれないといったように、セフィロスは『空間のよじれ』に身を投じた。すぐに俺もその後に続く。

 いくらよじれが感じ取れるとはいえ、中でバラバラにならないとも限らない。話に聞くだけで、俺もセフィロスもチョコボっ子のように行き来したわけではないのだから。

 足下から、すうっと飲み込まれるようなおかしな感覚……

 気圧が急激に変化しているのか、少々気分が悪い。

 だが、そんなことを感じたのも束の間であった。眠りにつく瞬間など、誰もが意識していなかろうが、俺はいつの間にか意識を手放してしまった。

 きっとセフィロスも同じような有様だったのだろう。

 

 ……次に目を覚ました場所は、なんとも肌寒い場所で、大きなくしゃみをしたところで、気がついた。

 

「……ここはいったい…… きちんとホロウバスティオンに着けたのかな……」

 辺りを見回すと、水晶がびっしりと壁を作っていた。ひんやりと冷たかったのは、なんと地面まで水晶が張り出していているかららしかった。

「ここは……チョコボっ子の話で出てきた水晶の谷……かな?」

 ふと、傍らに目を落とすと、なんとセフィロスが幸せそうに、ごうごうといびきを立てていた。ノースリーブのくせにくしゃみひとつしやしない。

 

 

 

 

 

 

「おい、セフィロス! セフィロス、起きろよ!」

 上から声を掛けても、いっこうに目覚める気配はない。戦闘モードの時は、風に消されそうな足音だって聞き付けるくせに。

「セフィロスってば!」

 しかたないのでかがみ込んで肩を揺すった。

「む…… ゲッ!」

 俺を顔を見てすばやく身を翻すセフィロス。まったくどこまで失敬な男なのだろうか。

「至近距離に寄るな、気色悪ィ!」

「ごあいさつだね。わざわざ起こしてやったのに。ほら、お望み通り、ここはホロウバスティオンの水晶の谷だろ? チョコボっ子の言っていた……」

「そうか……! 確かにあのガキの話と特徴が一致しているな!よし、探索だ!」

「……待てよ、セフィロス」

 ため息が混じらないよう、俺は飛んでいきそうな彼に声を掛けた。

「なんだ、くずくずするな、このノロマが!」

「あのなぁ、俺たちはついさっきここに着いたばかりなんだぞ。まずは、街に出て、宿を探そう。通貨だって使えるのかどうかわからないし、ある程度、この土地のことを知っておかないと」

「ったく、もどかしいな! まぁ、いいか。とりあえず街に行くことには賛成だ。知った顔に出会えれば、金の心配もなくなるしな」

 どこまでも図々しくセフィロスが言った。

 やはりこの男は、『神羅の英雄』でいなければ、迷惑なオッサン(ザックス談)でしかないらしかった。

 

 とりあえず、ふたりで連れ合って、街へと続く道を歩き始めたのであった。